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【コミカライズ2026/1/10発売決定!!】乙女ゲームヒロインの『引き立て役の妹』に転生したので立場を奪ってやることにした。【書籍1巻2巻発売中!】  作者: 陸路りん
第三章

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11.夢

 整えられた黒い髪が風に揺れる。彼はうなだれるようにしてベランダの手すりにもたれかかっていた。

「……はぁ」

 赤い夕焼けの光がそのため息をつく横顔を映し出す。

 ジーンは足元に広がる景色、誰もいない庭園を見下ろしていた。

 結局彼は正解には辿り着けなかった。手がかりを探り、なんとか彼女を見つけようと努力したが、そうこうしているうちに日数だけが過ぎ去っていった。

 そして1週間ほどが経過した、つい先日。答えを出せないジーンに彼女の兄であるレイルが告げたのだ。

『妹のレイラは病死した』と。

 二の句のつげないジーンに、彼は静かに首を横に振った。

「な、なんで……」

「生まれつき病を患っていたのです。寛解して調子の良い日が続いていたのですが、ここ最近急に悪化してしまいまして……。あなたと出会ったのは、悪化した後でした」

「そんな……っ!」

「妹はあなたに病のことを知られたくはないと……。やつれた顔も見られたくないと言って泣くものですから……。俺には問題を出してあなたを遠ざけることしかできませんでした」

 レイルは瞳を伏せた。その表情は普段とあまり変わらない無表情のままではあるものの、瞳だけは明確に悲しみを宿していた。

「…………っ」

「妹はあなたに弔われることも望みはしないでしょう。もう我々のことはお忘れください」

「……っ!! 忘れられるわけがないでしょう!!」

 怒鳴るジーンに、彼はほんの少しだけ唇を緩めて笑みを浮かべた。しかしすぐにその顔は無表情へと戻る。

「そのお気持ちだけで十分です。妹も報われたことでしょう」

「レイルさん……っ!!」

「では、俺はこれで」

 それだけ告げると、レイルは本当にその場を立ち去ってしまった。


(顔を見ることすら叶わないなんて……)

 おそらく彼の口ぶりからすると、レイラの希望なのだろう。

 亡くなった顔を見せたくないと。

「……っ! くそ……っ!!」

 どうして気がつかなかったのか。その後悔がジーンのことを襲う。

 気がつくことができたなら、亡くなるまでのわずかな間だとしても、彼女のことを労わり、有意義な時間を過ごさせてあげられたかもしれないのに。

 ジーンは気がつかないどころか、自分自身のことに夢中だった。

「……なんて馬鹿なんだ」

 じわり、と熱いものが瞳ににじんだ。それをこぼすまいとジーンは目を見開く。

「ジーンくん?」

 その時、急にかけられた声に驚いて彼は弾かれたように背後を振り返った。

「……ステラさん」

 美しいハニーブロンドの髪にサファイアの瞳。そこに立つのは紛れもなく、ジーンが一週間前に問題を解くための協力を要請した友人、ステラだった。

 彼女は聖騎士を拝命後、姿をくらませてはいたが、その地位が無くなったわけではない。この街での再会当初は王国騎士団へ報告するかしないかで一悶着はあったものの、彼女の事情を聞いてジーンも目をつぶることにしていた。

 彼女は自身の妹の遺体を探しているのだ。

(そういえば、彼女も大切な妹さんを亡くしてしまっていたんだったな)

 そのことを思い出し、ジーンは再び顔を悲しみに歪めた。

「どうしたの? ジーンくん!」

 その表情に焦ったようにステラは駆け寄ってくる。それにジーンは首を横に振った。

「どうしたの? レイラさんのこと? 大丈夫よ! 今、わたしも頑張って考えてるから……」

「いいんです」

「そんな! 遠慮しなくていいのよ! そうだ、五人のうちの誰かがきっと変装してるんだと思うの! 例えばとっても濃い化粧をしてるとか! だからね、間近で顔を見ればわかるかもしれないわ! 今度わたしが庭園にひそんで……」

「いいんです、ステラさん……」

「そんなこと言わないで! わたしなら大丈夫なんだから! そうだ! レイルさんにバレないようにわたしも変装をして五人の令嬢たちに近づ……」

「いいんです……っ!!」

 耐えきれずに彼は声を張り上げた。その怒声にも似た声音にステラはびくりと肩を震わす。

 その様子にジーンははっ、と我に返る。

「す、すみません、僕はーー」

「大丈夫? ジーンくん」

 慌てて弁明しようとするジーンに、彼女はそう声をかけた。

 ジーンはそこでやっと彼女の顔を見た。そのサファイアの瞳に浮かぶ感情はーー、懸念だ。

 彼女は突然怒鳴られたにも関わらず、怖がることも怒ることもなく、ただ純粋にジーンのことを心配していた。

「……っ、すみません、本当にっ」

「無理しなくていいのよ」

 堪えていた涙が溢れ出る。思わずうつむいて嗚咽するジーンに、彼女は駆け寄ると優しくその背中を撫でた。

「大丈夫よ、大丈夫……。落ち着いたら話してくれればいいの」

「……っ」

 ジーンはうつむいたままその優しさを享受した。

 涙はぼたぼたと流れ落ち、テラスの地面を濡らしていった。

いつも読んでいただきありがとうございます。


コミカライズの発売(1月10日)まであと2日になったので、それを記念して少しの間、毎日投稿をしようかと思います。

よければ配信自体はすでに開始しているのでコミカライズの方も読んでいただけると嬉しいです!

予約も開始してます!


よろしくお願いします!

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