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小さくて可愛い文芸部の知的な先輩を、膝の上に乗せたら毎日座ってくるようになった  作者: ゆめいげつ
第一章 椅子から恋人

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第31話 先輩の、ベストショット

 柚子先輩は、可愛い。

 だけどその可愛さを記憶するには限界がある。

 いくら俺の柚子先輩に対する想いが強くても、柚子先輩の可愛さは毎日のようにアップデートされていく。

 需要を上回った供給。可愛いの供給過多。

 パンクする脳内、可愛い負荷でオーバーヒート。


 そこで文明の利器、そう写真だ。

 令和になって何を今さらと言われるかもしれないが、俺は写真を発明した過去の人を尊敬し続けるだろう誰なのか知らないけど。


 だって柚子先輩の可愛さを永久に保存できるんだ。


 文芸部に入ってずっと写真を撮りたかった。

 けど写真撮って良いですかとか聞けないだろ怖くて。

 読書してる時の柚子先輩をめっちゃ撮りたかった夢がついに叶うんだ。


「先輩、もうちょっとこっちに寄ってください」

「こ、これ以上!?」


 念願叶う今、俺は最高の一枚を取るべく模索中。

 膝の上に乗った柚子先輩が映える最高の角度を探してポケットから取り出したスマホカメラを振り回していた。


「大丈夫です。こう……くっつく感じでお願いします」

「え……い、いいのっ!?」


 もちろんです。

 大前提として俺と柚子先輩の二人が映ること。

 できることなら柚子先輩だけを撮りたいけど今はまだ我慢だ。


「はい。やっぱり俺たち文芸部らしい写真の方が良いと思うんですよ」

「ぶ、文芸部らしさ……?」


 夕陽を背景にしたいけど逆光になりそうなのと文芸部らしくないのでこのままで。

 うーん、右手でスマホを持って俺と先輩を横から撮る感じが一番良いかな。


「はい。最近の文芸部らしさといえば、この状況だと思うんです」

「そ、そうだけどさぁ……!」


 冴えてる、今の俺は凄く冴えていた。

 これも全て先輩がプレゼントしてくれた赤縁の伊達眼鏡のおかげだ。

 凄いな眼鏡。

 かけるだけで頭が良くなるなんて。


「ちょ、ちょっと恥ずかしいんだけど……」

「大丈夫ですよ! 座ってきたの先輩からですし!」

「そ、それは……うぅ……」

「安心してください! 先輩の最高に可愛い写真を撮りますから!」

「ほ、本当に君はさぁ……!」


 ポカポカ。

 至近距離で柚子先輩が俺の胸を優しく叩いてくる。

 スマホを右手に持っている俺は当然のようにノーガード。

 威力は子供の肩たたきぐらい。

 とても可愛い。


 柚子先輩は未だに俺の両足を挟んで俺に跨っている。

 柚子先輩が少しでも動く度に意識が俺の両足に移動してしまうのを必死に押さえ込んでいるのは内緒だ。


「ほら先輩撮りますよ」

「え、ちょ、ちょっと待ってまだ心の準備が!」


 そうは言うがしっかりとカメラ目線の柚子先輩。


「先輩、笑顔ですよ笑顔」

「え、え、笑顔ってなに!?」


 感情を知らない人みたいな答えだった。


 ガッチガチに緊張してしまっている柚子先輩。

 どうにか解さないと最高に可愛い一枚は……あっ。


「先輩先輩」

「にへぇ」


 ヴっ!?

 精一杯の作り笑い可愛すぎ問題。

 いや違う違うそうじゃない。

 

「……失礼します」

「……にへ、えっ?」


 なでなで。

 なでなで、なでなで。

 空いている左手で柚子先輩の頭をなでなで。


「えへへぇ……」


 とろけた。

 一瞬で柚子先輩がとろけた。

 すみません柚子先輩、そろそろ俺も限界なんです。

 好きな人と椅子に座ったまま対面でほぼ抱き合うような形で密着するのは思春期男子にとって天国であり地獄なんですよこの状況は。


 柔らかいし温かいし良い匂いするし目の前に可愛い柚子先輩の顔があるし赤縁眼鏡がとても似合っているしもう我慢がやばいんですだから撫でました他意はありません柚子先輩最高ですありがとうございました。


「じゃあ先輩、撮りますね」


 スマホの画面に俺と柚子先輩が映っている。

 二人してお揃いの赤縁眼鏡をかけて並ぶ姿がそこにあった。

 

 日に日に更新されていく、柚子先輩の新しい一面。

 その一瞬を切り取って、かけがえのない思い出へ。

 でもその中で変わっても変わらないものが、一つだけあったんだ。

 

 ……うん、やっぱり。


「えへへ……」


 カシャッ。


 笑ってる柚子先輩が、一番可愛い。

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