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神谷忠耀編③

俺の言葉を聞いてから、東城先生はため息をついた。


「はあ。こんな短期間でよくわかるものね。正解よ、間違いないわ。」


俺は自分の考えがあっていたことに安堵しながらも、聞きたいことがあった。


「それじゃあ、もしかして、先生がhandyclubの仮顧問をやっているのって、全部 紅のためですか?というよりも、handyclubとは紅のための組織ですか?」


「その質問に答えるとしたら、NOね。handyclubは生徒会長 神谷忠耀かみやただてる君が私に依頼してきたものであるから。生徒の悩みを解決する組織をそれとなく紅を誘って作って欲しいと。彼ね、私の従兄弟なの。それに、私も紅さんのことは気にかけていたし…。」


つまり、紅を助けるために神谷さんが作った組織が、handyclubであり、その組織は生徒の悩みを解決するという表の顔がありながら、実は紅を助けていたということか。


先生は続けた。


「handyclubを作る前の紅さんは、正直見てて可哀想だったわ。クラスに行こうともせず、保健室に来て、勉強する毎日。それだけだったらまだマシだったんだけど、人とね、うまく話すことができないの。家族とか気の許せる相手だったら別なんだけど…。」


今の紅からは想像もつかないほどである。


「だけどね、handyclubという組織を作ってから、徐々に変わっていったの。明るく軽快に話すようになった。だけどね、それはもう一つの人格が作られたことでしかなかったの。」

「私は本来の人格、月火と呼んでるけど、彼女は作られた人格である、紅によって守られてるって考えてるわ。」


「その二つの人格はお互いのことを認識してるんですか?」


思わず、俺は聞いてみたくなった。


「それが、私にもよくわからないの。紅の人格は、頭の回転が速くてとてもじゃないけど、私に出し抜くことはできないわ。」


確かに、普段の紅の思考速度には驚くべきものがある。一緒に過ごしてみてそれは十分すぎるほどわかっていた。


「紅がそのような風になってしまった原因とかはあるんですか?」


その原因がわかれば、何とかすることができるかもしれないと、俺は淡い期待を抱いていた。


「それがね、原因はお父さんの自殺みたいなの。何でも他校の教師をしていたらしいんだけど、汚職の濡れ衣を着せられたとかで、ショックで自殺したらしいわ。今となっては真相はよくわからないみたいだけれど…。」

「………。」


今度は俺が言葉を詰まらせる番だった。


「まあ、そこはどうしようもないのだけれど…。私から話せることは以上ね。あと、どうするかは、あなた自身が決めなさい、葉山君。」


この話はそれでおしまいとばかりに、先生は立ち上がって扉の鍵を開けた。

立ち去ろうとする俺に、先生は声をかけた。


「ああ、そういえば、ご褒美の件を忘れてたわね。これを差し上げるわ。無くさないようにね。」


そう言って、先生から一枚の紙をもらった。そこにはとある住所が書かれていた。


「先生これって。もしかして…。」

「そうあなたが考えてる通りのものよ。今頃、家にいるはずだわ。あなたが来る前にここを訪ねてきて、あなたが来ても話さないようにお願いされたのだけれど…。」


紅が来ていたことよりも、先生の言葉に驚いていた。


「いいんですか?俺に話しちゃって?紅との約束を破ることになっちゃいましたけど…。」


先生は満足顔でこう答えたのだった。


「彼女を出し抜きたかったからかもね。まあ、というのは冗談で。生徒の本心ぐらいちゃんとわかりますよ、私は。」



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