神谷忠耀編①
呉綾人の依頼から数日後、俺こと葉山旬は、生徒会長 神谷忠耀と話していた。神谷さんは教科書とノートを広げていた。
「急に呼び出して、悪いね。今日はhandyclubの方は大丈夫なのかい?」
「気遣いありがとうございます。今日は特に用もなく帰るだけだったので。
神谷さんこそ、生徒会の方は大丈夫なんですか?」
俺は生徒会長神谷さんと話すときにはつい畏まってしまうのであった。
「もう次期生徒会長とかも決めたからね…。あとはうまいこと引き続くだけだよ。」
「そうなんですか…。で、今日はなんのご用件ですか?まさか依頼とかじゃないですよね?」
正直、俺には神谷さんから呼び出される理由が特に思いつかなかった。教科書とノートを広げていることに何か関係があるのだろうか?
神谷さんは非常に言いにくそうに俺に言ってきた。
「実はその、依頼の件なんだ…。依頼というよりも、君個人への頼みという形になるのだけれど…。」
「え、そうなんですか…⁉︎失礼しました。だけど、俺なんかより紅に頼んだほうがいいと思いますけど…。」
俺はおもわず驚いてしまった。神谷さんからまさか依頼が来るとは思っていなかったからだ。
「彼女に頼むことができないんだ…。正直転校したての君に頼むのも申し訳ないが、おそらく一番適任かと思われるんだ…。」
「はあ、俺でよければなんでも聞きますけど…。」
神谷さんは非常に言いにくそうにしながら続けた。
「紅月火彼女の真実を明らかにしてほしい。」
「え、どういうことですか?真実って…。」
そこまでいったところで、俺は言葉を止めるしかなかった。いや、止められたというべきだろうか。そのタイミングで教室の扉が開かれたからである。
「神谷ぁ!葉山と何を話してる!」
そこにいたのは見たこともないほど焦った紅だった。
神谷さんは紅に驚くことなく、笑いながら答えた。
「やあ、紅くん。なーに、彼の元いた学校の授業進度を教えてもらっていただけだよ。
じゃあ、葉山くん。今日はありがとう。それじゃあ。」
「ああ…、こちらこそありがとうございます…。また今度頼みます…。」
俺は驚きながらも、教科書とノートをそそくさと片付けて、出て行く神谷さんを見送るしかなかった(そのために置いてあったのか)。
その間も、紅は神谷さんを睨みつけていた。神谷さんが出て行くと、すぐにこっちに近寄ってきた。
「葉山、正直に答えたまえ。神谷と何を話していた?あいつからぼくのことを何か言われたんじゃないのか?」
紅は神谷さんのことを必要以上に敵視していた。
しかし、俺は紅に対して嘘をつくしかなかった。一応、おれもhandyclubのメンバーなのである。依頼人を売るわけにはいかなかった。
「何にも話してねぇよ。被害妄想がでかすぎじゃねぇか?
ああ、そういえば、柿谷にオススメされた喫茶店があるんだ。この後、寄ってかないか?」
そうやって、俺は紅をごまかすしかなかった。
あの後、紅と喫茶店に寄った俺は驚愕していた。
柿谷から勧められたのは、カップルばかりの喫茶店だったからだ。
あいつめ…、紅と行ってみたらどうだとは言われたが、こんな場所とは聞いてないぞ…。どうしようか、やめようかと俺が考えてると、
「葉山、君からまさかこんな場所に誘われるとは思ってなかったよ…。だけど、ぼくはせっかくの人からの誘いを無下にするような人間じゃないからね。一緒に入ってあげるよ。」
言うが早いが、俺は紅に腕を引っ張られ、店の中に入っていた。
結果から言うと、紅の機嫌は嘘のように直っていた。
しかしながら、そのことは俺に紅月火の真実を明らかにするという依頼の難しさを示しているようだった。
「葉山、ありがとう。今日はご馳走になったよ。それじゃあ、また学校で会おう。」
そう言って、紅は俺と別れたのだった。
紅と別れた後、すぐに俺は柿谷に連絡した。文句を言うためではない。今回の依頼の件を話すためである。正直、吹屋纏の協力は必要不可欠だったからである。
「柿谷、悪い。今大丈夫か?悪いんだけど、吹屋さんに頼み事があるだが…。」
しかしながら、柿谷は困った様子で返事をしてきた。
「悪いんだが、今纏の奴、他の調べごとしているみたいでな。多分、しばらく協力できないみたいなんだ。」
「どういうことだ?なんかあったのか?」
紅に先手を打たれたのかと思った俺は、すぐに考えを改めさせられることになった。
「数日前に連絡したら、気になることが出てきたと言っててな。おそらく、その件について調べてるんじゃないかと思うんだが。」
「そうなのか。いや、急な用件じゃないんだ。悪いな、また明日学校でな。」
そう言って、俺は柿谷との電話を終えた。
困ったな、となると、後1人しか思いつかないぞ。
そう思いながら、俺は家に帰ることにしたのだった。
翌日の放課後、俺はある場所に来ていた。
それは、保健室だった。




