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~Paradigm Shift~  作者: 時速200kmの餅
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【第1章】夢現実[1-1]

第1章突入でーす。



―――お主が、世界を変えろ。




「(いつも夢で見ていた事が現実に起こり、予想外の結末を迎える羽目になった)」



「(世界を変えろ、と命令しておいて、手にした大鎌で躊躇いもなく僕を殺した)」



「(突拍子もないことが連続的に起こるものだから、殺されたって実感がない…ていうかどこだ、ここ…)」




微睡みに近い意識を無理やり起こし、深呼吸を繰り返す。



際限なく広がるの闇で目覚めた焔は、いつの日か体験した出来事を思い出し、背中も胸もじんわりと冷や汗で湿っていた。



耳をすますと、心臓の鼓動が、絶えはしないが間遠になっている。



「……心臓が動いてるってことは…僕はまだ死んでないのかな」



「……あんなガッツリ袈裟斬りにされたのに!?」




焔は慌てて自身の躯をベタベタと触れた。



しかし、パーカーの上からとなると、その実感は確認できず、思わず衣服を脱ぎ捨ててしまう。



インナーに手を掛けようとしたところで、焔の動きはピタリと止まる。



右手の甲に、見慣れぬ痣があるのが解った。




「…痣?こんなのあったっけ?」




インナーを離して手を顔の位置まで上げる、見慣れた自分の手だから異変なんて直ぐに解る。



色んな角度から手の甲にできた痣を、怪訝そうな表情で眺めていた。




「…いつできたんだろう…それにしても、色が禍々しいな…」




手の甲にできた痣は、濃い青というより濃い紫に近い色だった。



痣というには何とも言えない、タトゥー、もしくは入れ墨というべきか、独特の模様が刷り込まれているようにも見える。



それを見た途端、焦燥に駆られた焔を謎の悪寒が襲った。




「……気持ち悪いな…何なんだよ……これは、悪夢…?」



「…だとしたら早く覚めてほしいな…」




痣と格闘していく内に、再び意識が薄くなり、深い眠りに誘われた感じがした。



どこまでも落ちて行くような不思議な感覚。



焔は暗闇の中で、完全に眠りに落ちた。





――――――――――――――


【天草家;自室】



鳥たちの囀りが、自分の睡眠を阻害してくる、起きろ起きろと言わんばかりに。



とか思っているうちに、焔の意識は徐々にハッキリしてきていた。



「………生きてる…?」




目が覚めてから最初に視界に入ったのはクリーム色の天井だった。


天井と見つめあう事に飽きると、見慣れたはずの部屋の中を見渡す、机の位置、本棚の位置、窓やクローゼットの位置、それを一つ一つ丹念に。



「…部屋、ここ…僕の部屋か…」



「……そういえば、昨日何があったかあんまり覚えてないな…どうしたんだろう…」




寝癖で乱れ放題の髪を掻きながら焔はゆっくりとベッドを降りる。


床に足をついた途端、目眩に襲われるが、直ぐに態勢を立て直した。




「……下行くか…」




――――――――――――――


【天草家;リビング】



「あー…クラクラする…おはよう輝y」



「兄さん!!身体は!だ、大丈夫なんですか?どこか具合が悪いところとかありませんか!?」



「え、あー…別に身体は平k」



「輝夜よ、別に外傷はないぞ、安心せい」



「そ、そうですかぁ…良かったぁ」



「最後まで喋らせてよ、ていうかちょーっと待とうよ」




おかしいと思った。



自分の記憶が正しければ、自分は輝夜と二人暮らしだった気がする、と改めて認識せざるを得なかった。



なのに、何故かちゃっかり、聞き覚えのある凜とした声の女の子がちゃっかり朝食を頂いていた、ちゃっかり。




「…もしかしなくても、昨日の…あの娘だよね…?」



「邪魔してるぞ」



「邪魔してるぞ…って…一体何の用で――グぁ!!」



「兄さん!?」



「………」




悲鳴を上げ、右手を押さえてうずくまる。誰かに刃物で思い切り切りつけられたような痛みが、右手の神経を駆け巡った。



輝夜は慌てて駆け寄り、小さな手で焔の肩を擦る。最低限の労りというか、介抱というか。



それを見た銀髪の少女は、やれやれといった表情で腕を組んだ。




「まぁ、無理もないの、お主の躯には【神痣】が出たんじゃからの」



「かみ…あざ?」



「早いうちに依代を身に着けぬと、死ぬぞ?」



「え……?」




少女は顔色一つ変えずに物騒なことをサラリと言う。



対する焔は顔面蒼白になりつつある。ショックで口が利けなくなった焔の代わりに輝夜が応じた。



「あの…ハクさん…」



「んー?」



「…し、死ぬって…どういう事なんですか…?」




即興的に応じたものの、状況がイマイチ解らない輝夜、ただ解るのは、その場の雰囲気が鉛のように重たいことだけだった。




「んー、まぁ例外もおるが…一般的な【神痣】が躯に発症してから数時間経てば、痣が肉体をどんどん蝕んでゆく、最終的には脳をやられて、御陀仏ちゃんちゃん、というわけ」




口調は多少軽くなっても相変わらず物騒だった。




「……そんな…」



「安心しろ、打開策はちゃんとあるのだよ」



「教えてください!!兄さんが苦しいままだなんて見てられません!!」



「そうだな…のぅ焔、お主は幼年期の頃か、よく手袋のようなものを嵌めておらんかったか?」



「…なんで知ってるのさ…」



「さぁな、ただ真面目な話、痣の侵食を食い止めるには、自分に一番しっくりくる依代があれば万事良いのだがのぅ」



「それを探せばいいんですか?ハクさん…」



「当然、私としても、こやつに死なれると困るからのぅ」




ふぅ、と小さく溜め息をつく。




「か…輝夜…」



「な、何ですか?兄さん…」



「よく、解らないけど、本当に探した方がいいみたいだね…」



「に、兄さ…この腕…酷い…!」



手の甲に出来ていた小さなドス黒い痣は、たったの数分で一気に10cmほど拡がり、焔の腕を蝕んでいた。



そこの部位だけ腐食したような、蛆虫が腕を這い回るような感触。


焔は苦痛に顔を歪ませながら、輝夜に訴えた。




「…輝夜、頼む…その、依代とかいうの…昔僕が稽古の時に使ってたグローブ…探してきて…!」



「…あっ、はい!待ってて下さい!今すぐ持ってきますから!!」




――――――――――――――

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