第二幕 第七章 【 感知された「理(ことわり)」】
第二幕 第七章 【 感知された「理」】
エレーナを地下水路の掃除に追いやってから数日。アルカディアは平穏を取り戻していたが、俺の第六感――いや、神級スキル【全属性変換】が捉えた「違和感」は、日に日にその輪郭を濃くしていた。
む。……。魔物の気配ではない。もっと、世界そのものの「システム」に干渉するような、冷たく機械的な波動だ。
「……。またか。今度は北の森からか」
パチン。俺が指先を鳴らすと、森の奥で巨大な影が歪んだ。
現れたのは、浮遊する銀色の立方体――『世界管理局』の雑兵だった。
この魔界には、特定のスキルや強大な魔力を持つ者が一定の境界を越えると、それを『世界のバグ』として消去・修正する防衛機能が存在していたのだ。
「なるほどな。追放された俺が、辺境で国を築き、魔力供給の循環を掌握したことで、『世界の歪み』だと判定されたわけか」
中空に浮かぶ銀色の立方体から、無機質な合成音声が響く。
「警告だ。未登録スキル保持者、アーロン。貴殿の存在は、世界の魔力バランスを著しく欠落させている。直ちに能力を凍結し、再初期化(削除)を行う』
旧帝国が、俺を追放した理由も合点がいった。奴らは『システム』の使者から、俺の危険性を囁かれていたのだ。
「おう! 面白い。王国が滅んだ原因を俺のせいにするなら、それもいいだろう。だが、俺の建国を『バグ』と呼ぶなら――そのシステムごと変換してやるよ」
きっ。と、俺は空を見上げ、右手を虚空へ突き出す。
この戦闘は、もはや人間同士の争いではない。世界そのものを書き換える、最初の神殺し(システム破壊)の幕開けだ。




