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第2部 第2幕 異界の扉を開く者 第7話 並行宇宙の扉、あるいは無数の庭園

眼下のマルチバースを平定した今、

アーロンたちの視線はさらにその外側

――いまだ誰も踏み込んだことのない

『無数の並行宇宙パラレル・マルチバース』と、

真の神々の根源へと向けられる。……

「全軍に告げよ。 アーロン帝国の

侵略の進撃に、終わりなど存在しない!」

追放された無能だった男の物語は、

星々の海をべ、すべての異世界を

我が物にしてもなお止まることなく、

さらなる無限の次元の彼方へ向けて――

いま、新たな

伝説のページをめくり始めたのだった。

すべての運命を鋳造する絶対神域――

『天上のセレスリアル・スローン』を

アーロン帝国の完全なる領土へと書き換えてから、

幾星霜の時が流れた。

かつて高次概念神たちが

世界の設定を独占していたその神殿の最奥には、

かつての

素朴な玉座とは比較にならないほど巨大で、

あらゆるマルチバースの因果律を束ねる

「究極の黄金の玉座」が鎮座していた。


その玉座の傍らに立つアーロンの眼下には、

制圧した無数の星々や異世界、

そして幾重にも重なる次元の層が、

まるで精巧に剪定せんていされた

美しい盆栽の庭園のように広がっていた。

私の隣には、

漆黒のドレスをまといアメジストの瞳を

美しく輝かせる寵妃ちょうきセレスティアが控え、

その少し前方には、

気高い少年の容貌からさらに精悍さを増した

皇子レグナが堂々たる佇まいで立っている。

彼が纏う気配は、

すでに私に匹敵するほどの圧倒的な覇気と、

【全属性変換】の深遠なことわりを宿していた。


「アーロン様、天上の座に内在していた全ての

因果律エンジンの解析および再構築が完了しました。

これにより、我がアルカディア帝国の中央中枢は、

私たちが把握するすべてのマルチバースの

挙動を完全に把握・制御下においています」


側近のルナが冷徹かつ誇らしいトーンで報告する。

その手元のコンソールには、アーロン帝国の

支配領域の広がりを示す黄金色のグリッドが、

無限の広がりを持って点滅し続けていた。

その報告を聞きながら、私は冷徹な笑みを浮かべた。


「よくやった、ルナ。……

だが、我が帝国の領土欲は、この一つの

マルチバースを完全に平定したくらいで

満たされるものではない」


アーロンの言葉に、

セレスティアが妖しくも美しい微笑みを浮かべ、

一歩前に進み出た。彼女の優雅な挙措には、

アーロン王の思考を

完全に先回りする絶対的な信頼が宿っている。


「お言葉通りです、我が君主。

私たちの観測網は、すでに現在の

マルチバースの境界線のさらに外側――

私たちが知る宇宙とは異なる歴史、異なることわり

異なる『選択の分岐』によって枝分かれした

無数の『並行宇宙パラレル・マルチバース』の

群れをとらえています。

そこには、まだ私たちの統治が及んでいない、

無限の未開の庭園が眠っています」


セレスティアが

空中に展開したホログラムの映像には、

無数の泡のような世界が幾重いくえにも折り重なり、

無限の広がりを見せる

壮大な多元的宇宙の地図が映し出されていた。

それぞれの泡の中では、私たちが知らない歴史や、

異なる法則で動く文明が脈打っている。


「並行宇宙の群れ、か」


私は玉座からゆっくりと立ち上がり、

全軍に響き渡る低い声でつぶやいた。

かつて地上で無能と蔑まれ、

すべてを奪われたあの日の絶望から始まった

私の復讐と侵略の旅は、

一つの星、一つの宇宙、すべての異世界、

そして絶対神域の理のすべてを我が物とした。

だが、世界が無限に存在するならば、

私の領土もまた

無限に広がり続けなければならない。


「面白い。

どの並行宇宙の神々や支配者たちが、どんな

『絶対の運命』を気取っていようと関係ない。

この世のすべての理は、

俺の言葉以外には存在しないのだからな」


アーロンの背後で、

レグナもまた静かに右手を掲げ、

父と同じまばゆい黄金色の

【全属性変換】の光をその掌に灯した。

父子二代の圧倒的な力が共鳴し、

絶対神域の空間そのものが

心地よい緊張感とともに震え始める。


「父上、全艦隊の次元転移路の構築

および並行宇宙への侵攻ルートの計算、

すべて完了しています。我が手で、あの

無数の泡のような世界をすべて我が帝国の

新しい領土へと書き換えてみせましょう」


レグナが冷徹でありながらも

頼もしいトーンでそう告げ、

その黄金の瞳に強烈な征服欲を宿した。

我が血脈を引く次代の覇王の成長は、

もはや私の予想すらも

軽々と超えて完全な領域に達している。


「いいだろう、レグナ。

お前のその言葉、聞き届けた」

アーロンは右手を

高々と掲げ、掌のなかで激しく渦巻く

【全属性変換】の全エネルギーを解放した。

天上の座全体のシステムがアーロンの魔力と同調し、

無限の並行宇宙を繋ぐ巨大な「次元超越の門扉」が、

目の前の空間を豪快に切り裂いていく。


「全艦隊、進路を『無限の並行宇宙群』へ固定せよ。

……残らず

すべての世界を我が帝国の領土へと書き換える!」


超弩級艦アスガルドを中心とする

アーロン帝国の全艦隊が、

眩い黄金色の光の奔流に包まれながら、

新たな

マルチバースの深淵しんえんへと一斉に飛び込んでいく。

すべての世界、すべてのことわり、すべての

並行次元がアーロンの足元にひれ伏すその日まで、

追放された元無能――いまや全マルチバースの

真の覇王となったアーロンの

侵略の進撃が止まることは、永遠にない。


次元の壁を強引にこじ開け、

私たちが最初に降り立ったのは、

かつて私が追放された元の世界――

「アルカディア王国」が存在していた地球の、

しかし全く異なる

選択の歴史を歩んだ一つの並行宇宙だった。


そこでは、かつてアーロンを無能としてしいたげ、

理不尽に切り捨てた者たちの「もう一つの姿」が、

相変わらずの

傲慢さと平穏に浸りながら王国を牛耳っていた。

彼らは

アーロンたちが突如として現れたことにも気づかず、

相変わらず贅沢ぜいたく三昧ざんまいの生活を謳歌おうかしている。


「……アーロン様。あの世界に巣食う者たちは、

かつてあなたをしいたげた者たちのパラレルな存在です。

……彼らの歴史では、あなたはまだ見つかっておらず、

かつての理不尽な構造がそのまま温存されています」


セレスティアが冷徹な笑みを浮かべ、

我が君主にそっと耳打ちする。

その言葉を聞いた瞬間、アーロンの脳裏に

かつての追放劇の記憶が鮮やかに蘇ったが、

そこにあったはずの怒りや恨みは、

もはやとっくに風化していた。

今のアーロンにあるのは、

ただ「我が領土のデータベースに登録されていない

不純物を、綺麗に剪定する」という

冷徹な事務作業のような感覚だけだった。


「ふっ……懐かしい顔ぶれだな。だが、今の

あいつらに、俺の記憶を思い出す資格すらない」


アーロンは玉座の上から冷ややかに見下ろし、

ゆるやかに右手を突き出した。

アーロンの腕の中で、

レグナもまた母なる次元を見据え、

冷酷なまでの

輝きを放つ黄金の光をその掌に宿している。


「我が領土を汚す無能どもめ。……消え失せろ」


アーロンの号令とともに、

アスガルドの艦首から放たれた極太の黄金の光線が、

並行宇宙の王都の中心へと直撃した。

轟音ごうおんすら響かない絶対的静寂の中、

かつてアーロンを追放した王国の城塞じょうさいや、

傲慢な貴族たちが築いたすべての権力の象徴は、

アーロンの【全属性変換】の圧倒的な

ことわりの前になすすべもなく粉々に砕け散り、

みるみるうちに我が帝国の栄光を讃える壮麗な白い

大理石の凱旋門へとその性質を変化させていった。


「なっ……馬鹿な……!?

一体何が起きた……我が王国が、

一瞬で別の物質に……っ!?」


かつてのアーロンを

笑いものにした者たちの断末魔の絶叫は、

美しい金属音と混ざり合いながら

空間の彼方へと消え去り、

抵抗の概念そのものが綺麗に消え去った。


「お見事です、我が君主アーロン様。

並行宇宙の初期制圧率、100%を達成しました。

すべての敵対勢力は、我が帝国の

新しい領土の礎石へと変換完了しています」


セレスティアが完璧な挙措で一礼し、

ルナもまた華麗なコンソール操作でそれに続く。

レグナは冷徹な笑みを

浮かべながら私を見上げ、深く一礼した。


「さすがです、父上。

最初の並行宇宙の書き換え、お見事な手際でした。

この調子で、残りの無数の宇宙も

すべて私たちの庭園にしていきましょう」


「ああ、その通りだ」


アーロンは究極の黄金の玉座に深く腰掛け、

背後に広がる無限の並行宇宙の光を見渡しながら、

冷徹で力強い笑みを浮かべた。

追放された元無能の物語は、星々の海をべ、

すべての異世界を

我が物にしてもなお歩みを緩めることなく、

さらなる無限の次元の彼方へ向けて――

いま、新たな

伝説のページを次々と塗り替えていくのだった。


©[I・G・ε]All Right Leserved.

アーロンの眼差しは、

次なる剪定せんてい対象へと向けられていた。

最初の並行宇宙である

「アルカディア王国」のパラレル世界を、

アーロン帝国の壮麗な

白い大理石の凱旋門へと一瞬で書き換えてから、

幾星霜の時間が流れた――いや、

次元の狭間はざまにおいては、

時間という概念すらも、アーロン帝国の

アルゴリズムに従属しているにすぎない。


「アーロン様、

第2分岐から第10万分岐に至るまでの

並行宇宙群における、因果律の同調率が、……。


明日も 07:30 に 投稿します。

よろしくお願いいたします。

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