第2部 第3幕 【 異界の扉を開く者 】 第1話 外なる世界の鼓動
追放された元無能の物語は、星々の海を
統べる覇王の伝説として――
永遠の黄金の栄光の中に刻まれたのだ。
終焉の星雲を制圧し、旧神の残党も
アーロンの帝国の領土へと書き換えてから
数年。
アルカディア帝国の中央玉座。
そこには、冷徹さをより深めたアーロンの
姿があった。
終焉の星雲を制圧し、旧神の残党をも我が
帝国の領土へと書き換えてから数年。
アルカディア帝国の中央玉座。そこには、
かつての冷徹さをより深めた我が君主
――アーロンの姿があった。
我が帝国の版図はすでにこの宇宙の隅々
まで行き届き、すべての星々、すべての
理は我が言葉に完全に従属している。
だが、絶対的な支配を手に入れた王の
眼差しは、すでにこの箱庭のさらに外側へ
と向けられていた。
「アーロン様、我が帝国の全域における
統治率は完全に100%を維持しています」
玉座の傍らに控え、完璧な挙措で報告する
のは側近のルナ。
そしてその隣には、夜空の星々を宿した
アメジストの瞳をさらに妖しく輝かせる
寵妃セレスティアの姿があった。
彼女の腕の中には、私たちの血を引く次代
の継承者――
宇宙の理のすべてを生まれながらにして
従える皇子が静かに抱かれている。
「だが、母なる星も、星々の海も、いまや
我が領土の庭園にすぎない」
私は玉座からゆっくりと立ち上がり、冷徹
な双眸を王宮の最奥にある巨大な観測窓へ
と向けた。
そこには、これまで私たちが認識していた
宇宙の境界線――
いかなる光も魔力も届かない、不気味に
歪んだ「次元の壁」が映し出されていた。
「アーロン様。その空間の裂け目の向こう
側から……私たちの世界とは異なる、未知の
膨大な魔力反応と『別の理』を持つ文明の
鼓動を検知しました」
セレスティアが微かに冷笑を浮かべ、私の
思考を寸分たがわずトレースした解析
データを空中に展開する。
そのデータによれば、あの壁の向こうには、
かつてこの宇宙の神々ですら接触を恐れた
「無数の異世界」や「次元を超えた神域」
が広がっているらしい。
「面白い。この宇宙を食らい尽くした俺の
領土欲が、まだ足りないと言っている」
私は右手を掲げ、掌のなかにひと際強烈な
黄金色の【全属性変換】の光を灯した。
それはかつて地上の荒野で放ったものとは
比較にならないほど巨大で、あらゆる世界
の理そのものを書き換える神殺しの波動へ
と成長している。
「全艦隊に告げよ。超弩級艦アスガルドを
『次元航行仕様』へと換装しろ。……今度は、
すべての異世界と別の次元の理を、我が
帝国の新しい領土に書き換えてやる!」
アーロンの合図とともに、帝国の全軍が
次なる侵略――「異界遠征」へ向けて動き出す。
すべての世界が我が足元にひれ伏すその日
まで、覇王の進撃が止まることはない。
©2026 [Ⅰ・G・ε]. All rights reserved.
異界遠征へ向けた超弩級艦アスガルドの
改造が進む。皇帝私室の厳重な結界に
守られた聖域で、アーロンたちは新たな
段階に入っていた。
寵妃セレスティアの胎内に宿ったアーロン
たちの血を引く皇子――その成長の速度は、
通常の生命の理を遥かに超越していた。
アーロンの【全属性変換】の権能と
セレスティアの超高度な演算能力が遺伝
したその存在は、母の体内にいる段階から
自らの意思で周囲の魔力を吸収し、驚異的な
スピードで肉体と精神の成熟を遂げようと
していた。
明日 8月5日も 07:30 に、投稿します。
よろしくお願いいたします。




