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【変神(ヘンシン)】で俺の考えた最強ヒロインをプロデュース!…したはずが、彼女たちの熾烈な争奪戦のターゲットになってました!?  作者: のびろう。
第9章 黒き刃は星影を断つ! 恋する忍者の猪突猛進アプローチ!?

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勝利の宴と、新たな火種? 主殿の唇は、誰のもの!?

僕たちプリズム・ナイツが、三体の絶対的な捕食者プレデターを打ち破ってから、数日後。

王都へと凱旋した僕たちを待っていたのは、割れんばかりの歓声と、嵐のような紙吹雪だった。


「プリズム・ナイツ万歳!」

「ありがとう!俺たちの村を救ってくれて!」

「シャドウ・ストライダー様ー!こっち向いてー!」


王都のメインストリートは、僕たちの名を呼ぶ民衆で埋め尽くされている。その熱狂は、偽りの英雄カミヤを打ち破った『王都解放戦』の時以上かもしれない。四人の少女たちは、少し照れくさそうに、しかし、誇らしげに、その声援に応えて手を振っていた。

ヒーローが、悪を打ち破り、人々の笑顔を取り戻す。

僕が、ずっと夢見ていた光景が、今、目の前に広がっていた。


王城での報告は、簡潔に終わった。

国王陛下は、僕たちの功績を最大級の賛辞で称え、『星喰らいの一族』という宇宙規模の脅威については、王国が総力を挙げて調査を開始することを約束してくれた。ひとまず、僕たちの肩の荷は、少しだけ軽くなったのだ。

こうして、プリズム・ナイツには、しばしの平穏が訪れた。

そう、あくまで、『戦い』に関する平穏が、だ。



王都騎士団養成学院、僕の工房。

平和が戻ったことで、鎮火しかけていた一つの戦いが、再び、いや、以前にも増して激しく燃え上がっていた。

それは、世界の命運などとは全く関係のない、しかし、彼女たちにとってはそれ以上に重要で、熾烈な戦い。

――すなわち、『アルト(僕)を巡る、仁義なき恋のバトル』である。


そして、その戦乱に、新たな風…いや、猪突猛進の台風を巻き起こしていたのが、我がプリズム・ナイツ四人目の仲間、犬神菖蒲だった。


「主殿、お疲れでござる。指南書によれば、疲れた男の心を癒やすのは、女のさりげないスキンシップとのこと…ささ、これが『顎クイ』でござるな!」


僕が今回の戦闘データをまとめていると、背後から忍び寄った菖蒲が、僕の顎を、くいっと持ち上げてきた。その黒い瞳は、真剣そのものだ。おそらく、彼女の読んでいる指南書は、どこか致命的に間違っている。


僕が、「顔に何かついているのかい?」と純粋な疑問を口にする前に、工房の扉が、弾丸のような勢いで開かれた。


「抜け駆けは許さないんだからーっ!」


手にお盆を乗せたリゼットが、仁王立ちしている。その上には、僕の好物である、焼きたてのアップルパイが鎮座していた。

「アルトには、私の愛情たっぷりアップルパイがあるの!そんな、よくわからない術で誑かそうなんて、100年早いわよ!」

「む…!リゼット殿!これは由緒正しき恋の術!貴殿の言う『ぱい』とやらより、遥かに主殿の心を癒やす効果が…!」


二人が火花を散らしていると、今度は、氷のように冷たい、しかし、その奥に確かな嫉妬の炎を宿した声が響いた。


「二人とも、非論理的極まりないわね。彼の疲労の原因は、連日の戦闘データ分析による、脳のオーバーワーク。必要なのは、糖分でも、意味不明な接触でもなく、適切な休息と、精神の安定よ」


涼しい顔でそう言ってのけたクラウディアは、ごく自然な動きで、僕の隣の椅子に腰を下ろした。そして、僕が読んでいた資料を、当然のように横から覗き込み始める。

「…ここのエネルギー変換効率の計算、少し雑ね。私なら、こう解くわ」

「なっ…!ク、クラウディアさん、あなたこそ、一番抜け駆けしてるじゃない!」

「人聞きの悪いことを言わないで。私は、ただ、プロデューサーの業務をサポートしているだけ。最も、合理的で、効率的な方法でね」


三竦みの、一触即発の空気。

その戦場を、ふんわりとした聖母の微笑みが、優しく浄化する。


「あらあら、うふふ。皆さん、とっても仲良しさんですのね」

いつの間にか、エミリアが僕の背後に立っていた。その手には、湯気の立つハーブティーのカップが。

「アルトさん、お疲れでしょう。わたくし、安眠効果のあるカモミールを淹れてきましたです。さあ、どうぞ」

彼女は、僕の肩を、優しく、もみほぐし始める。その、あまりにも自然で、あまりにも的確な癒やしのアプローチに、他の三人が「あわわ…」「くっ…」「しまった…!」と、それぞれに呻き声を上げる。


…これが、僕の日常。

僕の天才的頭脳をもってしても、この、四色の恋の火花が散る戦場を、平和的に解決する数式は、未だに見つけられていない。


そんなある日の午後。

菖蒲が、一冊の古びた本を手に、真剣な顔で僕に詰め寄ってきた。

「主殿!新たなる恋の術を会得したでござる!ささ、拙者と『壁ドン』の稽古を!」

「かべどん…?それは、新しい体術か何かの訓練かい?」

「そうでござる!指南書によれば、こうして、相手を壁際に追い詰め…『お前、俺のものになれよ』と、情熱的に囁くのが、作法とのこと!」

彼女は、僕の腕を掴むと、工房の壁際まで、ぐいぐいと引っ張っていく。そして、僕を壁に背をもたれさせると、小さな身体で、一生懸命に、僕の片腕を掴んで壁に、ドンッ!と打ち付けた。


(なるほど…壁を利用して、相手の逃げ場を塞ぎ、同時に威圧する、と。なかなか、実践的な拘束術だ)

僕が、その合理的な動きに感心していると、菖蒲は、顔を真っ赤にして、僕の顔を、じっと見上げてきた。その瞳は、潤んで、熱っぽい。


「さ、さあ、主殿!次は、主殿の番でござる!『お前は、拙者のものだ』と!さあ!」

「…なぜ、僕が?」

「それが、『壁ドン』の稽古でござるから!」


もはや、意味がわからない。

だが、彼女の、あまりにも真剣な眼差しに、僕は、断ることができなかった。

仕方なく、僕は、彼女に言われた通りの台詞を、棒読みで、口にした。

「お、お前は、拙者のものだ…?」

「…『拙者』ではなく、『俺』でござる!もう一度!」

「お、お前は、俺のものだ…」


僕が、そう言った、瞬間だった。

菖蒲は、「はうっ…!」と、奇妙な声を上げると、両手で顔を覆い、その場にへなへなと崩れ落ちてしまった。その耳まで、真っ赤に染まっている。


「主殿の…『俺のものだ』…破壊力、絶大でござる…!指南書にも、これほどの威力とは、書いてなかった…!」

ぷすぷすと、頭から煙を立ててショートしている菖...。

その光景を、工房の入り口から見ていた、リゼットとクラウディアの身体から、凄まじいオーラが立ち上っていることに、この時の僕は、まだ気づいていなかった。


かくして、僕の平穏は、今日もまた、ヒロインたちの、愛という名の、甘く激しい嵐の中に、飲み込まれていくのだった。



その頃。

この世界の、どこか。

およそ、善良な市民が足を踏み入れることのない、悪意と、そして、どこか気の抜けた空気に満ちた、秘密のアジト。


けばけばしい装飾が施された、巨大な玉座の間。

その玉座に、一人の女が、ふんぞり返って座っていた。

数千年前に世界を恐怖に陥れたとされる、伝説の魔王ゼノビア。その人である。

だが、今の彼女に、かつての威厳はない。豪華なドレスの胸元をはだけさせ、だらしなくポテトチップスを頬張りながら、壁に埋め込まれた巨大な魔力水晶マジックモニターに映し出された、昼ドラの再放送に、夢中になっていた。


「…もう、なんなのよ、このドラマ!ミカとタカシは、どうしてこうもすれ違うわけ!?さっさとくっついちゃえばいいのよ、もう!」

一人で、テレビにツッコミを入れる魔王様。

その傍らに、音もなく、一人の、妖艶な美女が控えていた。

身体のラインがくっきりと浮かび上がる、深紅のドレス。挑発的に開かれた胸元。そして、全てを見透かすかのような、気だるげな瞳。

魔王ゼノビアが最も信頼を置く、腹心の部下。女幹部、ルージュ様である。


「魔王様。また、そのような俗なものに現を抜かして。世界征服の計画書、まだ目を通していただけておりませんわよ」

「あー、はいはい、後で見るわよ、後で!それより、ルージュ、あんた、ちょっとこれ見てよ!」

ゼノビアは、食べ散らかしたポテトチップスの袋の横に置かれていた、一枚の新聞を、ルージュへと放り投げた。

その一面には、プリズム・ナイツの四人の少女たちと、僕の、あまり似ていない似顔絵が、でかでかと掲載されている。


「あら、面白そうな子たちがいるじゃない。特に、この子たちをプロデュースしてるっていう、この男。見てよ、この、朴念仁そうな顔!私の、好みのタイプだわ」

けらけらと、下品に笑うゼノビア。

ルージュは、その新聞を一瞥すると、心底、退屈そうに、ふぅ、と溜め息をついた。


「…まあ、少しは、暇つぶしにはなるかもしれませんわね。最近の勇者一行は、根性も、色気もない、ガキばかりでしたから」

「でしょ!?でしょ!?ちょっと、あんた、ちょっかい出してきなさいよ!世界征服の、前哨戦ってことでさ!」

「…はぁ。仕方がありませんわね」


ルージュは、やれやれと肩をすくめると、その深紅の唇に、残酷で、そして、どこまでも蠱惑的な笑みを、浮かべた。


「よろしいでしょう、魔王様。このわたくしが、ちょっくら、世界征服のついでに、その生意気なプロデューサーとやらを、身も心も、わたくしのモノにしてきて差し上げますわ。せいぜい、わたくしを楽しませてもらわないと、割に合いませんもの。おほほほほ…」


コミカルで、しかし、新たな波乱を、確かに予感させる、高慢な笑い声。

僕と、僕の愛するヒロインたちが紡ぐ、次なる物語の幕が、今、静かに、そして、どこか、どきどきしながら、上がろうとしていた。

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