6-42
女性陣が幼いチィックウィードを残して女子会に向かい、残された幼女チィックウィードが機嫌を損ね、ターナップが軽い気遣い程度のつもりで「遊びに誘った」あの後、彼は体を動かせば気も晴れると思い、
『追いかけっこでもするかぁ♪』
すると彼女は、
「はぁ~~~」
呆れ交じりの「長い長い嘆息」を漏らして首を横に振り、
「おいかけっこってぇ……」
「おん?」
「タープぅまでぇ、チィを「コドモあつかい」なぉ」
不愉快極まりないと言った顔に、
(あっ、やべぇ)
地雷を踏みかけているのを悟った彼は、
「いやぁ、オレは、その、何っつうかぁ、んなぁつもりじゃなくてだなぁ、」
「どぅいうつもりなぉ」
「うっ……」
冷めた物言いで平静にツッコまれ、言葉に詰まる。
安易に首を突っ込んだが故に「子ども扱い」を見透かされ、不満の火の粉を丸被りしそうな気配に、
(このままじゃヤベェなぁ)
分が悪いと思った彼は、話の矛先を変えようと、
「ならぁ「チィ坊」は、」
『なぬぅ?!』
「あっ、いやぁ、あはは」
再びのチョイスミスを笑って誤魔化しつつ、腹の中では、
(心底ぉ面倒臭ぇ~~~!)
思いながらも、表面上は愛想良く、
「ならぁチィは何がしてぇんだ? 姉さん方が戻るまで、付き合うぜぇ?」
すると、スッと背を向け、
「…………」
荷物へ向かうチィックウィード。
(なんだ?)
向けられた背を黙って見つめていると、
「…………」
荷物の中から取り出した「愛らしいヌイグルミ」を無言のうちに持たされ、
「え、えぇとぉ……オレにコレで何をしろと……?」
不安を覚え始める彼に、彼女はビシッと指差し、
『タープぅは、ツマなぉ!』
「つま???」
理解が追い付かない彼を置き去りに、
「そして、チィが「オット」!」
『ちょっと待てぇ!』
即座にツッコミを入れるターナップ。
彼女の二の句を慌てて遮り、
「ツマって「妻」かぁ?! そんでぇ何でぇオレが「女役」なんだぁ?!! ってか、そしたら、この「ぬいぐるみ」はオレの子供ってかよぉ?!!!」
(この歳になってぇ「おままごと」なんてぇ冗談じゃねぇぞぉ!)
漢としてのアイデンティティー崩壊を目前に慄いたが、事態は「彼の想像の範疇」を軽々超越していて、
「ヒトのハナシはさいごまで、キチンと、きくもの、なぁぉ」
チィックウィードは大人ぶった余裕の物言いで苦言を呈し、
「…………」
事態の好転を願う彼を前に、目元をキラリと光らせ自慢げに、
「それはツマ(妻)のマオトコ(間男)なぉ♪」
『修羅場じゃねぇかよぉ!』
断固拒否の姿勢を示したが、チィックウィードは駄々をこねて泣き出すどころか、ジト目で彼を見据え、異常なほどの平静を以て、
「ヤクソクをホゴにする、なぉ?」
「うくぅ……」
反論できないターナップ。
(こんな時だけぇ難しい言葉で正論を……これだから大人に囲まれた子供ってヤツぁ)
苦々しく思って居る所へ容赦なく、
「オトコが「ジブンでいったヤクソク」を、ホゴにするなぁお?」
「なっくぅ!」
外堀のみならず、内堀まで埋められてしまった感のある彼に、もはや拒否権は存在しなかった。
(ちょうど姉さん方は居ねぇ……しぃ……仕方ねぇ……)
チカラ無くうなだれながら腹を括り、
「分かったよぉ……」
渋々承諾したが、「真なる地獄」がこれから待っているのを、この時の彼は知る由も無かった。
ターナップが「苦悶の時間」に足を踏み入れる少し前、緊迫の女子会の只中のドロプウォートは、
「イリィ、貴方……」
重々しくも、遂に口を開き、
「「「「………」」」」
得も言われぬ緊張感が否応無しに増す中、
『同人誌を読んだ事がありまして?』
「「「「・・・・・・」」」」
一瞬の静寂。
その後、
『『『『はぁあっ?!』』』』
呆気にとられた声を上げる仲間たち。




