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6-39

 食後には、百人の天世人序列一位であった「女たらしハクサン」の話しも聞かされ、噂話の全てが「ラディッシュへの僻み」の交じった「伝言ゲーム」と、面白おかしく付け加えられた「話の尾ひれ」と知り、誤解は解けた。

 しかし誤解は解けたのだが、その代わりラディッシュの料理の虜となった彼女は、


≪アタシもアンタ達に付いて行くさぁねぇ♪≫

「「「「「「「…………」」」」」」」


 そして現在に至る。

 ため息交じりのドロプウォート。

 ゲンナリした気持ちを切り替えようと思ってか、手綱を引くラディッシュに、

「それでラディ、行き先は決まりましてですの?」

 すると彼はバツが悪そうに笑いながら、


「実は、その、まだぁ……」

「まっ、まだぁ?!」

「だっ、だってぇ、復興中のアルブル国も気になるし、エルブの王様から頼まれたフルールとカルニヴァの王様への報告もあって、どれを優先すれば良いのか……」


 悩む横顔をニプルウォートは「くくっ」と愉快そうに笑いながら、

「まったくぅアンタらしぃ、生真面目な「お悩み」だねぇ~」

 微笑ましく思って居ると、背後の荷台から、


『行くならフルールかカルニヴァにしておくれでないさぁねぇ』

「「「?!」」」


 イリスである。

 チィックウィード達とカードゲームに興じながら、さも当たり前のように提案する彼女に、ニプルウォートは少々ムッとした顔して、


「頼まれもしてないのに憑いて来といてぇ、好き勝手言ってんじゃないさ」


 皮肉を以て不服を口にしたが、彼女は手札から目を離す事も無く、

「憑いて来てとは御挨拶さねぇ~行き先は決まって無いんだろぅ? だったらケチケチすんじゃ無いさぁねぇ」

「ウチはそう言う事を、」

 言い合いに発展しそうになった途端、


『分かりましたわ』


 ドロプウォートが打ち切る声を上げて淡々と、


「カルニヴァかフルールに致しましょう。ラディも、それで宜しくて?」

「う、うん。僕は「理由付け」があるなら、何処が先でも構わないよ」

「決まりですわね」


 彼女は笑みを浮かべて頷くと、荷台の仲間たちに、

「では「フルール国」と「カルニヴァ国」と、」

 どちらが良いか問おうとするより先、


『『フルールッ!!!』』


 熱の入った答えを返したのは、パストリスとカドウィード。

 二人の御目当ては言うまでも無く、


≪同人誌!≫


 それが分かる「同類のドロプウォート」は、

「当然、そうなりますわよねぇ」

 苦笑したが、そんな彼女の横顔をラディッシュ越し、

(…………)

 黙して見つめるニプルウォート。


 何かしらの危惧を抱いた表情で見つめたが、ドロプウォートは視線に気付く様子も、素振りも見せず、

「因みにイリィは、何故にアルブル国へ行きたくありませんの?」

 すると彼女は手札を一枚抜き出し、ゲームを普通に続けながら平然と、


「追っ手を撒いたばかりの国だからさね、今行くと、ちぃ~と面倒なのさぁねぇ」

『『『『『『追っ手ぇ!?』』』』』』


 ギョッとするラディッシュ達であったが、ニプルウォートはここぞとばかり皮肉と嫌味と、からかいを交え、


「キッシッシッ。盗みでも働いてぇ追われてるかぁい?!」


 笑いながら問いに、ゲームに没頭中であったチィックウィードが流石に手を止め、無垢な瞳で、

「そぅなぉ?」

 首を傾げると、イリスも幼子に不審者扱いされては黙って居れず、


『おっ、お馬鹿を御言いで無いさぁねぇ!』


 慌てた様子で振り向いて、


「アタシぁれっきとしたぁ! お……」

「「「「「「「お?」」」」」」」


 集まる視線の中、何かしらの言葉を飲み込んだ彼女は、

「お、おぅ……おぅさぁ「旅人」なのぉさぁねぇ!」

 その物言いは、誰が、どう見ても不自然で、その場の取り繕いとしか聞こえず、彼女の立ち振る舞いが気に入らないニプルウォートは追及の手を休める事なく、


「普通の旅人に追ってが掛かるモンなのかい?」

「うっ、ウッサイさねぇ! 長旅の間には、そのぉ、色々あるのさぁねぇ! ほっ、ホラぁオマエがグチグチ言うせいでぇ、またぁチィに負けちまったじゃないさぁねぇ!」


「「「「「「…………」」」」」」


 気遣い、不審、危惧、それぞれが黙して思う所がある中、

『パパ、オシッコ、なぉ!』

 唐突な声を上げたのチィックウィード。


 一先ず馬車を止めての小休止となり「チィ坊の介助に」と、そそくさと体よく離席するイリス。

 ラディッシュとターナップも離席し、二人となった御者台でドロプウォートが静かに本を読み耽っていると、


『まさかアンタが従うとは思わなかったさぁ』


 虚空を見つめるニプルウォートのボヤキに、

「…………」

 彼女が言わんとしている所が分かるドロプウォートではあったが、あえて話をはぐらかす様に、本から目を離す事も無く恍けた物言いで、


「何をですのぉ~?」

「何をって」


 少し苛立ちを滲ませた物言いで振り向き、

「アイツが、アルブル行きを渋った事にさ」

 しかしドロプウォートは本を読みながら平然と、


「アルブル国の復興状況確認と、フルール、カルニヴァ両王への報告は、私達にとって同じ重さの話。ならば事情が過分に付与されて重きを増した方に舵を切るは、当然の選択で、何の不思議が?」


 するとニプルウォートは真剣みを増した表情で、


「本当に……それだけかい?」

「それ以外に何がありましてぇ?」

「…………」


 見返りもしない返答に、一拍置いてから、意を決し、


「アンタ、ラディの事をもう、」

『僕がどうかしたの?』

(ラディ!)


 不意な帰還に驚くニプルウォートの一方で、

「何でもありませんわ、ラディ♪」

 ドロプウォートはニコリと笑って本と閉じながら、


「単に女子話じょしばなを、していたダケですわぁ」

「えぇ?!」

(しまったぁ! 女子の話に首を突っ込むなんてウザイって思われちゃう……)


 気弱なラディッシュは自身の名前が出ていた事を気にしつつも、

「あ、うん、そぅなぁんだぁ。あはははは♪」

 笑って、その場のお茶を濁した。


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