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6-34

 しばしの後――


 揃って食事を取る約束の「教会の一室」で、

「「「「「「「「…………」」」」」」」」

 うつむき、ただ黙するラディッシュ達。

 一人欠けただけで、やけに静かに感じる中、


『こんなんでぇホントに良かったんスかァ!』


 真っ先に、堪らず苛立ちの声を上げたのはインディカ。

 イキ顔を悔し気に歪め、


「アイツの、あの顔を見たっしょ!? アイツは戻りたくて戻った訳じゃねぇんスよぉ!」


 腹に据えかねた不満をぶちまけた途端、ターナップが彼の胸倉を掴み上げ、


『ピーチクパーチクっせぇえッ!』

(!)


 怒り心頭の様子で睨み、


「良かねぇのはぁ百も承知なんだよォ! ならぁテメェはどうした?! あの時点でアイツの厚意を無にする暴露大会でも開ぁきゃぁ良かったってのかァ!? その結果ぁどぅなる! ラディの兄貴は信用を失い、合成獣の大群は大暴れぇ! 倒せても村の被害がどれほど出たと思ってやがるッ!」

「そっ、それは……」

「アイツや、ラディの兄貴の気持ちを考えもしねぇでテメェの不満だけぇガキみてぇにブチまけてんじゃねぇ!」

「お、オレっちぁ……ただ……」


 ターナップの言い分は最もで、自分の思慮の浅さを痛感した彼は言葉を続けることが出来なかった。

 するとラディッシュが、悔しさと、後悔と、悲しさと、寂しさと、様々な感情が入り混じった小声で呟くように、


「今の時代の勇者である僕に……もっと「知恵とチカラ」があれば……彼女を帰らせずに済んだんだ……」


 それは新生七草を名乗った七人の誰もが抱いた、自身の弱さに対する歯痒さ。

(ラディの大兄貴……)

 インディカは気付いた。

 サロワートを犠牲で事なきを得たのを、誰よりも恥じ、誰よりも後悔しているのが、ラディッシュである事に。


(言いたい事を言うダケのオレっちぁターナップの兄貴の言う通り、「まるきりガキ」じゃねぇかぁよ……)


 人知れず、彼が人としての成長の「確かな一歩」を刻む中、ラディッシュがおもむろ、

「サロワートさんが助けてくれたお陰で、僕たちは大ごとにならないで済んだけど……」

 静かに、そしてゆっくりと顔を上げ、


『ケジメはつけないといけないって、僕は思うんだ』


 その表情からは何かしらの決意が見て取れ、

(((((((ケジメ……)))))))

 各々が責任の取り方に思いを巡らせていると、ラディッシュが先んじて、


「僕は先ず「この村から出る事」だと思うんだ」

(((((((!)))))))


 彼の提案に、異を唱える者は居なかった。

 あれほど村を、村人たちを気に入っていたサロワートを、自らの足で出て行かせてしまったのだから。


 しかも≪裏切り者の汚名≫まで着せて。


 彼女が隠した心痛が「如何ほどであったか」など、語り合う必要が無いほど想像に難くなく、誰もが村を出る決意を固めた表情を見せる中、ターナップがインディカを真っ直ぐ見据え、


「オメェは村に残れ」

「なっ?!」


 驚く彼を尻目にラディッシュも、


「そうだね。インディカくんは村を出ちゃダメだよ」

「何でぇスかぁ、タープの兄貴ぃ! ラディの大兄までぇ! オレっちも男として責任を、」


『半人前がナマ言ってんじゃねぇ!!!』

(!)


 ターナップは一喝した上で、

「アイツを村に連れ帰ったのはオレ達で、オメェじゃねぇ。それにオメェは修行中の身。半人前の「弟分の分」も含めて兄貴分が責任を取るのは当たり前ぇじゃねぇか」

「でも!」

 尚も食い下がろうとすると、


「強くなって村を守って、インディカくん♪ 不出来な、僕たち兄貴分の代わりにね♪」

「ラディの大兄貴……」


 見回せば、他の仲間たちも同意の表情で見つめていて、


「…………」

(何スかそれ……兄貴たちにぃんなぁ顔されたら、オレっち断れねぇじゃねっスか……)


 不承不承、承諾したように視線を落とすと、


 ドンドンドン! ドンドンドン!


 勝手口が突然激しく叩かれ、よほど差し迫った急用があるのか返事も待たず、


『勇者様はおられますかァ!』


 扉が勢いよく開かれ兵士が姿を現すと、彼は室内に勇者一行が揃って居ると見るや焦り露わな早口で、


『大司祭様が北門で御待ちです! 急ぎお越し下さぁい!』

「じじぃがぁ?!」


 ターナップはラディッシュ達と顔を見合わせ、七人プラス一人は部屋から駆け出した。


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