呪いの犯人
グレイ家当主キャメロン・グレイはすぐに応接室に現れた。
「こんにちは、ブラッドレイ卿。我が家の契約獣がどうかしましたか?」
侯爵の突然の来訪に驚いたキャメロンは白髪混じりの茶髪を撫で付ける。
なぜ契約獣の話をするのかわからない、とキャメロンは思う。
「不躾にすみません、グレイ伯爵。しかし、ことは一刻を争うのです。あなたの一族の誰かが、私の友人を呪う理由を教えてください」
それを聞いたキャメロンはとても驚いた。キャメロンには、一族を束ねる長として、人を呪う時はそれが本当に呪うに値するか審査する義務がある。現在、一族の誰かが呪っているなんて、キャメロンは知らなかった。
即座にグレイ家の契約獣であるカラスのシュカを呼び出す。当主は一族の誰かが、現在、契約獣を使っているか知ることができる権限をもっているのだ。
犯人はすぐわかった。キャメロンの甥であるアーロンがブライアンを呪っていた。
キャメロンは怒りで顔を真っ赤にして、アーロンを呼ぶよう執事に命令する。悪態をつきそうになるが、レディたちの前であることを思いだし、咳払いですませた。
そして娘のアリスを呼ぶと、ソフィーとミリィを第二応接室に向かわせる。
アリスは赤毛で透けるように白い肌の持ち主だ。小柄なミリィ、平均的なソフィーと比べると少しだけ背が大きかった。
全然違う三人だが、すぐに仲良くなることができた。
たわいもないことを話していると、第一応接室の方から扉が開く大きな音が聞こえる。
三人が様子を見るために第二応接室から顔を出すと、頬を押さえる赤毛の男アーロンが尻餅をついていた。
「お願いします、叔父さん! ちゃんと償いますから、没収だけは許してください! 僕はあなたの甥なんですよ!」
「だからどうしたというんだ。この罪は重すぎる。そしてお前は紋章貴族の誇りも汚した。どうやって償えると思う?」
ラルフの冷たい声が場を支配する。




