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悪魔法の使い方  作者: 低燃費
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対悪魔用戦闘訓練

「3・2・1・始めっ‼︎」

ジェイク先生の号令が響くと同時に、振り返って剣を構える。たったそれだけの動作の間に、着込んでいる鎧がガチャガチャとやかましい音をたてる。

そのまま相手の鎧(多分カイン)も同じ構えをとっているのを見てとって、お互いに距離を詰めて剣先をぶつけ合うはずだったのだが、

「ッヤアァーーーーーっ‼︎」

相手が 突然大声をあげて突っ込んできた。

頭、胴、腕、下と見せかけて上、突き、胴、頭、ーーーーー息もつかせぬ連続攻撃、といえば聞こえはいいが、まあ単なる考えなしの雑な攻撃である。少し驚きはしたけれど、冷静に対処すればリズムを崩すことはない。難なく躱し、受けることはできる。

ただ、僕にとってはこれ以上ないくらい嫌な攻め方だった。

僕が剣の授業を嫌っている理由の一つだ。

僕はこの剣同士がぶつかったときの音が好きじゃない。剣の授業ではどういうわけか、金属でできた刃の部分を潰した剣を使うのだ。それがぶつかり合うと、キンキンと、非常に甲高くて大きな耳鳴りのような音する。僕はこの音がとても苦手だった。

安全のために打ち合う時は鉄製の鎧を装着するのだけれど、鎧の頭の部分で音が反響してしまい、とても耳障りなのだ。

鍔迫り合いの時ならまだいいけれど、鎧の頭の部分を剣で叩かれた日には、それはもう本気で耳が痛くなるくらいの音になる。

だから、こういう風に積極的に攻めてくる相手は本当に嫌だ。

頭、胴、頭、頭、脚、調子づいてきたのか、連撃は終わるどころかどんどん激しさを増してきた。

かん。かん。かん。攻撃を防ぐ度に金属のぶつかり合う甲高い音が鳴る。

クソッ!いつまでもガンガンやってんじゃねえよ。

腕に力を込めて相手の剣をわざと強めに払い落とす。

キィィィンと一際大きな音が鳴り響き、相手の剣先が僕の足元の地面に刺さった。

その剣先を鎧の踵で思い切り踏みつける。

「うわっ。」

剣に引っ張られて相手の鎧が大きく体勢を崩した。

声から察するに、こいつはやっぱりカインだな。

「セヤァァァァァ‼︎」

なんか気合っぽく大声を出して、カインの頭めがけて剣を振り下ろす。

か〜〜ん

うん。やっぱりうるさい。

強く叩きすぎたのか、カインの鎧の頭の部分が少しへこんでいた。

「止めっ‼︎勝者ハルナ‼︎」

ジェイク先生の号令に合わせて、ニ歩下がって、剣を納めて、礼。

ふう。これでようやくこの暑苦しい鎧を脱げる。

後ろで待機していた生徒が僕と入れ替わりに試合場に入っていくのを見ながら、とりあえず鎧の頭を外す。先生の合図と共に、二つの鎧が剣をぶつけ合い始めた。

対悪魔用戦闘訓練が学校の授業に導入されてから一年。この風景もすっかり見慣れてしまった。汗臭い鎧も、今ではまったく気にならない。

もう鎧を脱ぎ終わったらしい。カインが汗を拭きながら歩いてきた。

汗で濡れた金色の髪が、日の光を反射して輝いているように見える。カインは顔も良いから、なんだか『水も滴るいい男』的な雰囲気を醸し出している。

「いやぁ。つっかれたねー。やっぱしんどいわー対魔。」

対魔というのは対悪魔用戦闘訓練の略称で、授業の時間割の表なんかでもそう表記されている。

「派手に動きすぎなんだよ。もっと力抜いた方が疲れなくてすむぞ。」

そんな風にアドバイスしたものの、しんどいというのは僕も同じ意見だった。一時間目に体育でサッカーをした後で、四時間目に対魔はきつい。対魔の授業は体育とは別の単元として扱われているため、今日のように体育と対魔の授業が両方ある日は肉体的疲労が単純計算で倍になる。おまけに、対魔の授業は本物の軍隊とほとんど変わらないメニューをやっていると聞いたことがある。それが事実なら、まともにやっていたら身体を壊してしまうくらいハードな時間割だ。

まあ嘘だと思うけど。

「手を抜いた上であの強さとか、さすがサムライ」

カインがからかうような調子で言った。

「サムライって言うな。」

剣を使う対魔の授業が実施されるようになってから、日本人で剣道が得意だった僕には『サムライ』というニックネームがついた。別に嫌なわけではないけれど、本物の侍に失礼な気がする。

ちょんまげとか結えないし。

「ミヨシはいいよなー。ケンドーとか得意で。もう勇者になっちゃえばいいのに。」

カインが笑いながら言う。勇者というのは、悪魔と闘うための軍隊、対悪魔特殊工作部隊に所属する人の俗称だが、対悪魔特殊工作部隊なんてものが本当に存在するのかどうかは誰も知らない。都市伝説のような職業だ。

悪魔が滅びてから三年、戦争は人類の勝利で終わったというのに、未だに人類は悪魔の存在を警戒している。いや、怯えているといっても良いくらいだ。

「……勇者か。」

悪くはないのかもしれない。僕は剣術が得意だし、何より、悪魔は人間に勝てなかったのだから、ある程度安全だと言える。

「いや」

そんな考えを、すぐに振り払った。既に存在しない敵と戦ったって意味がない。何より、僕は普通科の生徒だ。

そもそも、兵士なんてガラじゃない。















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