波に揺られて2
匠たちは荒波の中、海の上にいた。
「ウッ!」
匠は青ざめた顔で甲板に出ると、海に向かって盛大に吐いた。
「進藤君!君はだらしないな!男だろう!」
タンクトップにねじり鉢巻、肌は茶色く焼けた大男が言った。
「いや、そんなこと言っても。ウッ!」
第二波だ。
「何でこうなったんだ……」
匠は船から身を乗り出しながら言った。
『おーい、たくみー、起きてるかい?』
匠は早朝5時に琴音からの電話で起こされた。匠は時計を確認し、朝の5時であることを認識する。
『おい、琴音、今何時だと思ってやがる?』
『ふぇ?5時だよ?』
『集合は何時だ?』
『8時に駅前だね』
『そうだよな。ってことは?』
『んー……ん?』
『こんな時間に電話かけてくんなー!』匠は大声と共に電話を切った。
「ったく、目が覚めちまったよ。風呂でも入るか。」
匠はベッドから降りると、1階へと降りて脱衣所へ向かった。
「あらら、匠怒っちゃったかな?後で謝らないと。取り敢えず、お風呂でも入ろうかな。」
琴音もまたベッドから降りると、脱衣所へ向かった。
8月20日AM8:00 駅前
古川が駅前に行くと、既に匠と琴音がいた。しかし、何か様子がおかしい。二人は背を向け合い、そこには何やら近づき難いオーラを感じる。
古川は恐る恐る近づいた。
「あのー……」
古川が声を掛けると、匠と琴音は古川に気付いた。
「よう、古川!」
「あっ、莉子ちゃん!」
二人の声が重なると、匠と琴音はお互いの顔を見るや否や、顔を背けた。
「いや、あんたら何があったのよ……」
「聞いてよ莉子ちゃん!匠がね。」
「あれは不可抗力だ。そんなことくらいで怒るなよ。」
「そんなことって」
「わかったわかった。話聞くから落ち着きなさい。」
古川は言い争う二人を見かねて仲裁に入った。
古川が仲裁に入ると、二人はまた顔を背けた。
「で、匠、あんたは何をしたの?」
「俺は別に、ただ……」
AM8時前 駅前にて
「おーい、たくみー、こっちこっち。」
琴音は嬉しそうに手招きをしている。今日の琴音のファッションは、花柄が少し入った白色シャツに水色のロングスカート、麦わら帽子となんとも夏らしい服装だ。
「よっ!」
匠が琴音の方に近づくと、急に茶色い猫が飛び出してきた。
「わっ!」
匠は咄嗟に猫を飛び越え、前のめりになり、琴音に衝突した。
「いてて……」
目を開けると、匠は琴音の上に馬乗りになっていた。琴音は恥ずかしさから顔を赤くし、涙ぐんでいる。
「あっ、わりぃ……」
「まぁ、こんなところだ。」
「はぁ、全くあんたらは……取り敢えず、匠はちゃんと謝ること。琴音も、わざとじゃないんだから、許してあげなよ。」
古川は溜息をついた。
古川は実に大人である。匠と琴音がくだらないことで喧嘩をすると、決まって古川が仲裁に入りその場をまとめるのだ。
「ごめんな、琴音」
「私も、こんな事で怒ってごめん。」
匠と琴音は顔を向けあうと、少し微笑んだ。
「偉い偉い。」
古川は琴音の頭を撫でた。
「おーい、遅れてごめん。って、お前ら何してんだ?」
鈴木は、古川が琴音の頭を撫でている状況を不思議そうに見ている。
「遅い!罰として荷物持って!」
古川は自分のキャリーケースを鈴木に差し出した。
「まじかよー!」




