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学生コンクール2

「琴音、あれ進藤くんじゃない?」古川は改札を通ってくる匠たちの方を指差す。

「えっ?ほんとだ。」


「東京行ったら何します?」

「コンクールに出るために行くんだぞ。」当麻は鈴木の呆れた質問に答えた。

「当麻先輩、揚羽先輩は満更でもないですよ。ね?」匠は荒川の方にアイコンタクトを取る。

「なっ、何の話だ。」

「鞄から東京観光の雑誌が顔を覗かせてますよ。」荒川は焦るように隠した。

「こ、これは…私だって女子なのだ。東京には憧れる。」

「ちー先輩にお土産でも買って行くんですか?」

「買わん。」


「匠!」後ろから聞こえた声で、匠は振り向いた。

「琴音。それに古川じゃないか。」

「よっす!鈴木もいんじゃん。あんたら、何してんの?」

「コンクールだよ。そういうお前こそ何してんだ?」

「あんたには関係ないね。」古川は舌を出して鈴木を牽制する。

「ほんとに君たちは仲がいいねー。」琴音は笑いながら言った。

「良くない!」見事にハモった。

「古川、お前も吹部だったのか?」

「あれ、知らなかったの?体験入部一緒に行った時、隣に莉子居たじゃん。」琴音は首を傾げながら訊いた。

「あっ、あぁ、そ、そうだったな。ごめんごめん。」

「進藤くん、酷いよ。」

「悪かったって…それで、お前らここで何してるんだ?」

「私たちも演奏会があるんだ。東京の希望科学館ってとこの演奏ホールでね。」

「えっ!?」匠と鈴木は見事なシンクロを果たした。

「いや、逆に『えっ』だよ。ビックリした。どったの?」

「だってよ、俺らもそこでコンクールの発表があるんだから。」

「そうなの!?」こちらも見事にシンクロした。

「じゃあさ、コンクール終わったらで良かったら」

「おーい、1年、電車来るぞー」琴音が話している途中で、上級生が琴音と古川を呼んだ。

「先輩が呼んでる。じゃあ、私たち行くから。ほら行くよ。」古川は琴音の腕を引っ張った。

「あっ、うぅ…」琴音は悲しそうに引きずられて行った。

「あの子らはお前らの同級生か?」

「ええ、黒髪ロングが篠崎琴音、俺の幼馴染で、琴音を引きずって行った髪の短い方が古川莉子(ふるかわりこ)って言って、鈴木の幼馴染ですよ。」

「俺はあいつが嫌いだけどな。」鈴木は腕を組んでいる。

「そうは見えんがな。」

「荒川先輩までそんなこと言うんすか。」

「まぁ、いいんじゃないですかね?それよりも、電車来ましたよ。」

東京に向かう電車、匠と琴音はそれぞれの思いを乗せて出発する。


千里は病院のベットで目を覚ました。時計を見ると、6時を回ったところだった。

「千里ちゃん、おはよう。制服も着替えないで、疲れてたんだね。」菊子は千里の頭を優しく撫でた。

「菊さん…私、寝ちゃってた。」

「行かなくていいのかい?」

「うん。行ってくる。」千里は机に置いてあった鞄を持って、病室を出ようとした。

「千里ちゃん、これ置いていくのかい?」菊子は机に置いてあった紙の束を持ち上げて言った。

「それは…使わないからいいんだ…」

「千里ちゃん、ごめんね。千里ちゃんが寝てる時、ちょっと読んじゃった。私には理解できない内容だった。でもね、私にもわかる事があったの。千里ちゃんはまだやりたい事があるんだなって。後悔先に立たず。」菊子は千里の資料を差し出した。

「ごめん菊さん、ありがとう。」千里は資料を受け取ると病室を後にした。


「ここがコンクールの会場か。」匠たちは建物を見上げた。それはまるで博物館や美術館のような建物で、赤レンガ造りの古風な建物だった。

「9時丁度だな。受付するか。ええーっと。」当麻はコンクールの詳細が書かれた紙を見る。

「当麻、我々の他にも同じような目的の学生はいるようだ。」辺りを見回すと、楽器を持った学生やいかにもコンクールに来たような学生が沢山いた。

「なるほど、目的は同じか。」


「みんな。今日の演奏会は秋の大会の予選みたいなものだから、気合い入れて行こうね。」吹奏楽部の部長と思われる、ポニーテールの女子学生が言った。

「琴音、緊張するね。私たちは2番目だからすぐだよ。」

「う、うん。そだね。」琴音には不安材料があった。緊張したり、気持ちが不安定になると耳が聞こえづらくなる傾向があった。

「莉子、本番の前に薬打ってもらっていい?」

「うん、わかった。」


当麻は高校名を受付の出席簿に書き込み、予定表を受け取る。

「よし、これで受付は終わりだな。それにしても、コンクールにこれだけの学校が参加しているとはな。」


参加学校数21校。持ち時間、一校につき20分。


「俺たちは、なるほど、20番目か。発表までは時間があるようだ。出入りも自由だから出番まで休むなり、他の学校の発表を聞くなり自由にしよう。」

「そうっすね。開会式は9時半からっすから、ちょっと建物の中見に行きませんか?」鈴木は子供のように興奮している。

「すまない。ちょっと、お手洗いに行ってくる。後で連絡するからお前達は先に行っててくれ。」

「ああ、わかった。」

荒川はトイレの方向へ歩いて行った。

「何かお土産みたいのとかないっすかねー?」鈴木は楽しそうに先走った。

「お土産ね…」当麻はどこか浮かない顔をしている。

「どうしてんですか、当麻先輩。」匠は訊いた。

「いや、ちょっと昔のことを思い出してな。」

「昔のこと?」

「荒川って、ちょっと女っぽくないだろ?」

「何を言うんですか。怒られますよ。」

「はは、冗談だよ冗談。あいつ、昔からどこか行くと必ず俺と千里にお土産を買ってきてくれたんだよ。マメだろ?」

「ええ、そうですね。」

「ある夏の日、まだ小学生だった俺らは、三人でちょっと遠くの街まで出かけようとしたんだ。当日になって千里のやつ熱中症で倒れてさ、荒川と二人で出かけたんだ。帰る時になって、荒川が千里のお土産を買って行くって聞かなくて、一時間も悩んでたよ。あいつはお土産を買って行くことで、一緒だって思いたかったんだろうな。今になってもあいつは変わらずだな。」

「そうなんですね…」

「すまんな、昔話なんて。」

「いえ、大丈夫ですよ。」

「匠ー、当麻先輩ー。面白いものありますよ。」鈴木がこちらを見て手招きしている。

行ってみると、仕切りで区切られた場所に謎の装置がある。


『ボタンを押すと装置が作動します。危ないのでこの中には入らないで下さい。』


「このボタンを押すのか?」鈴木はボタンを押した。


バチッ

装置から周囲に電流が走った。

「うわっ!」鈴木は驚き、腰を抜かす。

「これは、テスラコイルだな。ニコラ・テスラが開発した、2つコイルを共振させて高周波、高電圧を発生させることができる装置だ。電流はその際に発生するものだ。」当麻が丁寧に説明する。

「へ、へぇ…」鈴木はまだ腰を抜かしている。

「流石、科学館といったところか。」

その時、当麻の携帯が鳴った。


『そろそろ開会式が始まるが、戻ってこれるか?』

「もうそろそろ開会式が始まるそうだ。戻ろうか。」匠たちは会場となる講堂へ向かった。





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