学生コンクール1
8月3日
チュンチュン
匠は小鳥のさえずりで目を覚ました。
「まだ、5時か…」匠は半袖短パンで階段を降り、一階のリビングに歩いて行った。
階段を降りている最中、リビングから何やら音がする。匠は不思議に思いながら扉を開けた。
「あらー、早いのね。目が覚めちゃった?」
宏子が料理をしていた。
「母さん、こんな朝早くから何してんの?」
「何って、見ればわかるでしょ?お弁当作ってるのよ。コンクール頑張ってね。ほら、早く起きたなら朝ごはん食べちゃいなさい。」そう言って、宏子はご飯と鮭を出した。
「うん。いただきます。」匠は手を合わせてご飯を食べる。
「あんた、琴音ちゃんのことちゃんと気にかけてる?」宏子は皿洗いをしながらおもむろに言った。
「えっ?何だよ急に。」
「いいわよ別に。鈍臭いあんたのことだからそんなとこだろうと思ってたけどね。」
「何の話だよ。琴音のことはちゃんと気にかけてる。母さんが心配しなくても大丈夫だよ。」
「そう、それならいいんだけどね。」宏子は少し合わしたような表情を浮かべる。
「ご馳走様。ちょっと、外歩いてくる。」匠は椅子から立ち上がり、家の外へ出て行った。
空はまだ、朝日で少し朱く染まっていた。鳥のさえずり、静かな住宅街、匠はあの場所へ行った。あの丘の上の公園に。
匠が、丘の上の公園に着くと人影が見えた。
「来ると思ってた。」人影が振り向き、徐々にその正体が見えてきた。
「りん!なんでお前がここに?」
「やっぱり、気付いていないのね。」
「何がだよ。」
「あなた、8年前と同じ行動をしているのよ。」
「えっ?」
「あなたは8年前の今日、コンクール当日の朝にここに来ている。」
「何が言いたいんだ?」
「あなたは無意識に過去と同じ行動を取ってしまった。つまり、それはあなたが無意識に過去と同じ結果に向かっているということ。」
「無駄だって言いたいのか?お前に何が分かるんだよ!?今日はコンクールなんだ、じゃあ。」匠は憤慨し、公園を去った。
「無駄なんかじゃない。あなたは自分の影響力に気が付いていないのね。」
駅前 AM7:00
「おはようございます。すみません。」
匠は走って来たのか、少し息が切れている。
「ギリギリだぞ。まぁ、いい。鈴木もいるな?」
当麻が確認する。
「ひどいっすよ、さっきから居たじゃないですか。匠、お前がギリギリに来るからこうなるんだぞ。」鈴木は匠に対して文句を言った。
「わりぃ」
「まぁ、何にせよ揃ったわけだし東京に向けて出発するとしようか。」荒川は地面に置いていた荷物を肩に掛けた。
「あっ…」匠は言葉に詰まった。
「どうした?」
「いや、ちー先輩はやっぱり…」
「あぁ…」
『揚羽、当日の朝に電話ですまんな。匠には私は行けないということにしておいてくれ。私がいたらあいつは…』
『千里、お前はそれでいいのか?』
「……あぁ。その方がいい。』
『分かった。当麻にもそう伝えておこう。陰ながら応援してくれ』
『もちろんだ。楽しみにしているからな』
荒川は電話を切った。
「今日まで頑張って来たんだ。悔いのないように全力でやろう。」当麻は他の3人を鼓舞するように言った。




