プール対戦
炎天下の中、匠はプールサイドにいた。今年の最高気温を更新。ニュースでは朝の時点で最高気温38度を記録したらしい。
「皆、聞いてくれ。昨日言ったが、あくまでも掃除だからそこはしっかりと頼む。水を掛けて遊んだりしないように」
「なんだよー、つまんねー」
男子生徒からブーイングが飛ぶ。
「まぁ、話は最後まで聞け。遊ぶなとは言った。だが、事故で女子に水がかかってしまった場合、俺にはどうすることもできないな!」
米村は笑いながら言う。米村がそう言うと、男子生徒の目の色が急に変わった。
「変態どもめ。女子も負けてられないわ!」
女子生徒はホースやブラシを持って対抗しようとする。こうして男子対女子の闘いが始まった。
「元気なこった。掃除はしっかりとやってくれよ」米村はプールサイドの掃除を始める。
匠と琴音はプールで騒ぐクラスメートをプールサイドから見ていた。
「匠は混ざらないの?」
「俺はいいよ。疲れるしな」
「なーんか、オヤジ臭い。ほんとに高校生なの?」
「そ、そうか?昔から一緒にいたんだから分かるだろ」
匠は少し口角を上げて、苦笑いする。
「なーんてね、分かってるよ。ずっと一緒だったんだから…」
琴音は頬を赤らめて言う。
「えっ?」
「匠、私に水掛けてもいいんだよ?」
琴音は両手を広げる。
「掛けねーよ。それとも、なんだ、掛けて欲しいのか?」
「はは、冗談冗談」
その時、突然匠の顔面に勢いよく水が当たった。
「ぶはっ!」
匠は思わず仰け反った。
「おい、匠!なーに高みの見物して、イチャついてやがんだ。お前も加勢しやがれ」
水を掛けてきたのは鈴木だ。
「てめぇ、鈴木。やりやがったな」
匠はプールサイドからプール内に降り、鈴木に水を掛ける。
「待て待て、敵は女子だぞ」
「うるせー、みんな敵だ!」
匠は本当に高校生に戻ったかのように楽しんでいた。
疲れ果て、匠がプールサイドに仰向けになっていると、タオルが顔の上に降ってきた。
「うわっ」
匠は咄嗟にタオルを取る。目の前には覗き込む凛の顔があった。
「進藤君」
「なんだ、凛か。どうした?」
「なんだ、とは失礼ね。随分と楽しんでるように見えるけど」
「そうだな。久しぶりに何も考えずに楽しんだかもな」
「そう、それは良かったわ」
「なぁ、この前、お前は未来は変わらないって言ってたよな?」
「ええ。あなたの行動で多少のプロセスに変動は生じても、結果に影響はないわ」
「俺が選択しなかった方をこの世界で選択すれば、現実世界での結果は変わるんじゃないのか?」
「変わらない」
「どうしてそう言えるんだ?」
「あなたが勘違いしているからよ」
「勘違い?」
「そう勘違い。あなたは過去にタイムスリップして来たと思ってる」
「そうじゃないのか?現に高校生に戻ってるし」
「厳密には違う。この世界はあなたの記憶から作られた世界。過去の自分に戻ったと言う意味ではタイムスリップかもしれない。でも、世界軸が違う。だから、この記憶の世界での出来事は、あなたが数年前に経験した既に起きた事実に行き着く。たとえ、行動を大きく変えたとしても、現実の世界に影響は出ない」
「そうなのか…」
「おーい、皆そろそろ片付けに入るぞ!ちゃちゃっと終わらせてくれ」
委員長の米村が大声で指示をする。
「だ、そうよ。私たちも手伝いましょ」
「あ、あぁ」
匠は凛の言葉に困惑していた。




