コンクール「宇宙の始まり」2
匠の考え
「俺は先輩達みたいに頭良くないんでそんな難しいことはわかんないですけど、宇宙の外にいる人が作ったとか、そんな感じだったら面白いですね」
「匠、お前は小学生か?」
「人の意見にケチ付ける前に鈴木は自分で考えることだ」
「すんません」
当麻から注意が入る。
「進藤、もう少し説明できるか?」
当麻は匠の話に興味を示す。
「いや、そんな深い意味はないんです。ただ、宇宙の外ってどうなってるのかなって思って」
「宇宙は今も拡散しているというのが一般論だが」
荒川が説明する。
「でも、外側がないっておかしいですよね?」
「と、言うと?」
「ちー先輩、この部屋の外には何がありますか?」
「なんだ急に。そこのドアだったら廊下があるし、窓だったらグラウンドだな」
千里は指をさして言う。
「はい。空間には上下左右前後、内と外があると思うんです。だから、宇宙という空間にも上下左右と同時に端には外が存在すると思います。その外側の世界には別の世界があったりしたら面白いなって思って」
千里は感心したような目で匠を見る。
「ほう、なかなかおもしろいことを言うな、匠は」
「ちょっと大学で…」
「大学?」
「あ、いや、その、大学でそういうこと学びたいなって、考えていたり、いなかったりなんて」
匠は大学で法学部だった。法律の解釈は論理的思考が求められる。だから、匠には当麻や荒川の言っていることが理解できる。しかし、若干15歳の高校生がそんな話について行ったら不自然なので、分からないふりをしている。
千里はノートにそれぞれの考えを写すと、締めくくりにかかる。
「来週、もう1つのテーマ『パララルワールド』について、今回みたいに意見を出してもらうから考えてきて欲しい。来月の学生論文コンクールに提出するテーマをこの2つのどちらかにしたい。今日の部活はこれで終わりにしよう」
当麻と荒川は予備校があると言い、そそくさと帰って行った。
匠が鈴木と帰ろうとすると、千里に呼び止められた。匠は先に鈴木に帰るように言い、化学室に残る。
「どうしたんですか?ちー先輩」
千里は何も言わず、匠に近づきジロジロと見る。
「お前、何か隠してないか?」
匠の心拍数が上がる。
「え?何のことですか?」
「……いや、やめておこう。科学室は閉めておくから帰りな。走れば鈴木に追いつくだろ?」
千里は離れ、匠に背を向けながら言う。
匠はひとこと挨拶をして、その場から逃げるように立ち去った。
「……」
匠は歩きながら考える。
「ちー先輩は俺が未来から来たって勘付いているのか?いやいや、あり得ない。タイムスリップして来た俺でさえ信じ難かったのに、他の人が信じるわけがない」
その日の夜、琴音からメールが来た。
「やぁ、元気かい?」
「お前の方こそ、大丈夫だったのか?」
「平気だよ。良くなってきてるって、お医者さんに言われたから」
「そうか。それは良かった。部活の方はどうだ?」
ほんの少し時間をおいてメールが来る。
「うん、ちょっとね…でも、吹奏楽できてるから私は幸せだよ。先輩たちも優しいから…」
「そうか。お前がそう思ったのなら大丈夫だ。何かあったらちゃんと言ってくれよ?」
「うん。ありがとね。お休み」
「あぁ、お休み。また明日な」




