『夕暮れ、ふたり、帰り道。』 作者:あき
「いやあ、にしても今日の零紗はすごかったなあ...。」
「なによ、急に。」
いまは放課後。帰りを零紗と一緒に帰っていた。
いろんな視線が痛々しかったが零紗が強引についてきたって感じだ。
夕日がまぶしくてどこか切ない、そんな夕方の時間が俺はけっこう好きだったりする。
なんてガラにもなく感慨にふけりながら今日の合同訓練の時の零紗と夏羅那の戦いを思い出していた。
あの後、なぜか意気投合した二人は昼食を一緒に食べるというなんとも謎に友人になっていた。
あれか?拳で語り合って~みたいな?
「なあ零紗。俺たちってなんで神憑きなんだ?」
零紗ならこの問いに答えられる。
そんな気がする。
誰も答えを知らないこの問いに。
「...さぁ。ただ言えるのは。」
立ち止まり、零紗は空を見上げ、虚空に手を伸ばしなにかを掴もうとした。
「意味がない、なんてことはない。としか言えないわ。」
俺を真っ直ぐ見つめる零紗を夕日が照らし黄金に輝かせる。
その姿はまるで世界の破滅を知らせる天使。みたいな...。
「中二病かッ!!」
「なっ、なに!?」
「あぁいや、なんでもないわ。めんごめんご。」
つい心の中の突っ込みが漏れてしまった...。
「...ところで、彩希?」
「んお?」
「その、じ、じつは、相談が...あるのだけど?」
なんだ?
やけにもじもじとしながら俯き、なんだか歯切れ悪く話し出す零紗。
「ぶっちゃけ言っちゃうけど、私いま家がないのよね。」
「....え。」
「だ、だからその、め、めいわくじゃなければ、なんだけど。居候...させてくれないかし、ら...?」
いかん。脳みそが追い付いていないぞ。ん?待て待て?
「も、もちろん家事とかは私がやるわよ!?必要ならせっ!せせせせせっ、せいしょっ!!」
「ああああぁぁぁっ!!まてまて!わかった!わかったから落ち着け!!」
急な爆弾発言に発した零紗すら混乱するという収拾のつかない事態になり始めたぞ!!
「わ、わかったわ。まずは落ち着くわ...ふぅ。」
こいつは冷静なんだか天然なんだか...。
「それで彩希...おねがい。」
俺を真っ直ぐ見つめる零紗を夕日が朱色に染めあげ、紅い目は穏やかな甘えた捨て猫のようにキラキラと輝いていた。
純粋にかわいいなって思えた。
だから俺は。
「...困ってるなら、ほっとけねーよ。スーパーいこうぜ。今夜はとんかつだっ!!」
「彩希....!ふふっ、それを言うなら今夜も、でしょう?」
やっぱり俺は、零紗はなにか特別な存在な気がする。
そう思えたんだ。