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だからなんでそんなに思考が物騒なんです?これが普通なんです??

 私が起きたら、スノウが破壊した扉をカイが直していた。結構ガタガタ音がしそうなものだが爆睡していたらしい。自分の図太さに驚きを隠せないわ。


「おはよ」

「申し訳ありませんでした!!」


「ふぁ?」


 寝起きの頭にスライディング土下座はやめてほしい。え?なんぞ??寝起きなのも手伝って普段以上に頭が働いていない。いや、マジでなんで謝られてるわけ??


「ご主人様が危険にさらされていたのに気づかず寝ていたなんて……いくらご主人様が寛大で慈悲に溢れたお方とはいえ覚悟はできています」


 そっとナイフを渡され、カイの喉元に……って危ないな!


「ぐぬ……」


 なんとかナイフを当てないようにしようとするが、カイが馬鹿力なのでびくともしない。このままではまずい。頚動脈ぶっつりいっちゃう!!


「この不始末の責は自分に……。ゲルダだけでもどうか……」


 カイは必死。私も必死。いや、なんとなく理解した。ちょっと酒に酔って護衛任務しくじったからって命までは取らないっつーの!人をなんだと思ってるんじゃい!


「あーもー!スノウ!いや、ジャン!!どっちでもいいからカイを止めて!!」


「かしこまり」

「了解!!」


 たぶん近くにいるだろうから呼べば来ると思ってはいたものの、二人はすぐ現れて指示に従ってくれた。ジャンがナイフを正確に蹴り飛ばし、スノウが手刀でカイを気絶させたのだ。


「二人ともよくやった。とりあえずカイは……拘束しておくか」


 また自殺未遂を起こされても困る。武器を取りあげ縛って転がすことにした。起きたら話そう。


「ご主人様……」


 縛って転がしたカイを眺めていたら、泣き腫らしたゲルダが現れた。その表情を見て、察した。ゲルダ、お前もか。


「はい、捕縛」


 もう、話を聞くより捕縛が早い。ポンと私が手を打つと、ジャンとスノウがゲルダの武器を奪って縛りあげた。


「うわーん!ごめんなさい!カイだけは許してくださいいいいい!!」


 似た者夫婦である。頼むから、(わたし)の話を聞いてくれ。


「いいですか、ゲルダ。よおおおおく聞きなさい」


「ふぇ……ふぁい……」


 涙と鼻水で美女台無し。とりあえずハジャンがくれた濡れタオルで拭ってやりつつ話しかける。私の言葉を聞き逃さないよう、ゲルダは泣くのをやめて私を見た。


「今回の不始末は不問」

「え」


「正直予想外過ぎたし、気がつけたのはスノウだけだもん」


「ぴぃす」


 とても誇らしげなスノウである。うむうむ。えらいえらい。えらいからよしよししてやろう。


「そもそも飲酒を許可したのは私だし、夜間護衛しろって命令もしてない。今後夜間の護衛については相談して決めることにしよう」


 ここは治安がいい日本じゃない。こういった襲撃についても考えておくべきだった。


「ご主人様、俺達は一応ちゃんと不寝番をしていたぞ」


「え」


 ジャンによれば、きちんと担当を決めて不寝番をしていたそうな。流石に昨日は二人を抜いてスノウとジャンが半々にしようと決めていたらしい。


「睡眠時は常時結界を推奨。不寝番いらない。スノウがお役立ち」


 スノウが得意げだ。結界かあ。いいかもしれない。


「それ、スノウは疲れないの?」


「すごいのじゃなければへいき。ねててもできる。きのう、あのあとためした」


「おお……」


 あ、もしや起きなかったのはそのせい?結界で遮音されてたのかな?だとしたら起きなかったの納得。


「昨夜の不始末としてカイとゲルダを壁に投げつけたけど大丈夫だった」

「うおおおおおおおおおい!!」


 もっと轟音が発生していた模様!


「すごかった。ほんと」


 ジャンが遠い目をしている。そんなにか!


「もっと痛めつける?」

「ノーモア暴力!いらんいらん!」


 なんでそんなに発想が物騒なわけ!?


「今回の失態は殺されてもおかしくない。いくらご主人様がありえないぐらいに寛大でも、相応のペナルティは与えるべき」


 物騒関係は本当に流暢なトークを展開するスノウ。


「スノウの言い分はわかった。でも、ご主人様は私なの!私がルールなの!今回は初回だし、夜間警護についてきちんとした取り決めをしてなかった雇用主(わたし)の手落ち!罰するのは次回から!!私が!命令する立場なの!!」


「むう……」


 正直なところ、ご主人様というよりは雇用主だと思っているが彼らにはこちらの方がわかりやすかろう。スノウも今回ばかりは反論しなかった。


「私がルール!私の言うことは!?」


「ちゃんときく」


 結果として、スノウのほうが折れてくれた。今度から説得不可と思ったらこの手で行こう。


「よろしい。聞いていたわね?カイ、ゲルダ。今回は私自身の認識不足、危機感の不足を踏まえてこれ以上の罰は与えない。夜間警護については貴方達全員でで話し合って案を提出すること!!」


 二人は涙と鼻水でベトベトになりつつ何度も頷いた。そして出された夜間警備案が大変ブラックだったために頭を悩ませることになるのだった。

 この世界にホワイト企業は存在しないらしい。

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