↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/228

図書室の魔女1

第29部分「abyss調査3」からの続きとなります。

http://ncode.syosetu.com/n9687dy/29/

「あー……できれば今日中がいいんですが。

ダメですか?」


「別にいいけど、

どうしてかな?」


……やっぱり、

そう返してくるよな。


さて、どうしたものか――


と、理由を探していたところで閃いた。


もしかしてこれ、

ABYSSの調査に利用できるんじゃないか?


夜間外出する正当な理由になるから、

琴子に黙って、あるいは騙して出る必要がなくなる。


それに、生徒会による夜間見回りを公示しておけば、

ABYSSもそうそう儀式はできなくなるはずだ。


「実はですね、

まだ言ってないことがありまして」


昨日、先輩に仕事を頼まれた時に、

つい居眠りをしてしまったこと。


そうして帰る間際に不審な人物を見かけたことを、

適当な嘘も交えつつ二人に説明した。


「……まあ、その不審者が学外の人間なのか、

うちの生徒なのかは分からないですけれど」


「へー、それでそれでっ?

晶くんはその時どうしたの?」


「いやー、怖そうな人たちだったんで、

急いで逃げて帰ってきました」


「まあ、焦りすぎたせいで、

ちょっと派手に転んじゃったんですけれどね」


「あー。だからお兄ちゃん、

昨日傷だらけで帰ってきたんだ……」


『何で言ってくれなかったの?』と言いたげな琴子に、

ごめんねと苦笑いを返す。


さすがに、

殺されそうになったからねとは言えない。


「相手がABYSSだとしたら、

晶くんの判断は正解だったと思うよ」


「もしも見つかってたら、

誰にも気付かれないまま行方不明ルートだろうし」


「ですね。逆に、こっちが複数だったら、

相手もそうそう襲ってこないとも思いました」


「え、どうして?」


「ABYSSは秘匿性を大事にするって話でしょ?

簡単に口封じできないなら見逃すんじゃないかなって」


「実際、僕が逃げる時も誰かいる振りをしたんだけれど、

そのまま帰ってこられたわけだしね」


「ふーん。

よく思いついたねー」


「まあ、我ながら冴えてました」


「そういうわけで、生徒会で見回りすれば、

相手も活動自粛してくれるんじゃないでしょうか」


「学園祭が近づけば、

遅くまで残る生徒も出てきますしね」


「そうだね。面白そうだし見回りしようか。

今晩からでいいんだよね?」


「はい。見かけたのはまだ昨日だし、

間を空けるといなくなりそうかなと」


「でも、危なくないかなぁ?」


「もちろん、夜の見回りは小規模にするつもりだよ。

例えば男子だけでやるとかね」


「じゃあそうしようか。

先生には、ぼくのほうから申請しておくね」


お礼を言い終えるよりも早く、

真ヶ瀬先輩が棚から申請用紙を引っ張り出す。


それから、手の中でペンを五回くらい回して、

必要事項を記入し始めた。


「時間帯とかは決まってる?」


「あー……それじゃあ、夜の十時くらいで。

人数も、最初なんで少人数でいいと思います」


さらさらとペンを走らせる先輩。


ついで、べしべしべしとリズムよく音を立てて、

押印欄に判子をついていく。


「……そういえば、生徒会長欄の印鑑って、

真ヶ瀬先輩でいいんですかね?」


先輩って、生徒会を引退したんじゃ……。


「ああ、別にいいんじゃないかな。

これまでも先生方は何も言ってこなかったし」


……もしかすると、先生方って、

まだ真ヶ瀬先輩が会長だと思ってるのか?


実務面でも全く支障がないし。


真ヶ瀬先輩のインパクトが強すぎるのは分かるけれど、

現会長の影がこうまで薄いとは……。


「それより、

今晩の見回りって誰が行くの?」


「あー、そうですね……それじゃあ、

僕と生徒会長の二人で行こうかなと思います」


「えー! 何で会長なの?

そこは、ぼくを選ぶところじゃないの?」


「いやぁ、いつまでも

真ヶ瀬先輩に頼っていられませんからね」


本当は一人で行動したいだけだけれど。


会長には口裏合わせだけ

お願いしておけばいいだろう。


ただ、真ヶ瀬先輩が絶対に食い下がってくるはずだから、

まずはそれを撥ね除けないと……。


「ふーん……分かった。

晶くんは会長と頑張ってね」


……って、えっ?

うそ、引き下がってくれた?


何でこんな簡単に?


「じゃあ、ぼくはこれから用事があるから、

先に帰らせてもらうよ」


「後は聖ちゃんが来るから三人でやっておいてね。

こっちの書類は出しておくから」


それだけ言って、先輩は軽い足取り――

というかスキップで、生徒会室から出ていった。


……本当に帰ったのか?


見回りに反対してたとはいえ、

真ヶ瀬先輩がごねることもなく?


「お兄ちゃん……何か怪しくない?」


「やっぱり琴子もそう思う?」


「うん。いつもの真ヶ瀬先輩だったら、

絶対にもっとごねるもん」


だよなぁ……。


まあ、用事があるって話だったから、

早く切り上げたって考えれば納得はできるか。


にしても、うーん。

いまいち信じられない。


何か裏があるんじゃないだろうか――





――そんな僕の予想は、

困ったことに思いっきり当たっていた。


「やっほー。遅かったね」


「先輩……!?

どうしてここにいるんですかっ?」


「え、だって晶くんが

見回りするっていうから」


「いや、先輩はお留守番って

言いましたよね?」


「それを言うなら晶くんも、

一人での見回りは許可しないって言ったよね?」


うぐっ。


「ところで、生徒会長はどこかなー?

晶くんが誘うって言ってた生徒会長はどこかなー?」


うぐぐっ……。


「あれれー?

どこにもいないぞー?」


「これじゃあ晶くん一人しかいないから、

見回りは許可できないなー」


昼間はやけにあっさり引き下がったと思ったら、

こういうことか……。


「……先輩」


「うん? 何かな晶くん?」


「もしよろしければ……

僕の見回りにご一緒していただけないでしょうか?」


「えぇー、そんな急に言われても困るなぁー!

でも、晶くんのお願いだし、しょうがないね!」


「偶然たまたま超ラッキーでここにいたぼくが、

見回りに付き合ってあげるよ!」


「……はい、お願いします」


僕が生徒会長に連絡を取らないで、

一人で見回ることまで読んでたとは……。


何だか、見事にハメられた気分だ。


そう、肩を落としたところで――


びりびりと、

痺れるような敵意と視線を感じた。


出所は屋上。


ああ――やっぱり、

夜には魔女が付きものなのか。





「……先輩、一応言っておきますけれど、

遊びにきたんじゃないんですからね?」


「やだなぁ、それくらいは分かってるよ晶くん。

ぼくってそんなに信用ないかなぁ」


「……いや、信用したいんですけれどね。

過去の経験というやつがですね」


何か面白いもの、もとい怪しいものを見つけたら、

飛び出して行く未来しか見えない。


僕にできることは、何事もないことを祈ることと、

何かあった時に動けるようにしておくことくらいか。


とはいえ、情報漏れを嫌う団体だし、

無関係の先輩がいれば仕掛けてこないと思うけれど……。






そんな希望的観測は一応当たっていたのか、

一階を見回った限り、特におかしいものはなかった。


強いておかしいものを挙げるなら、

終始ご機嫌な真ヶ瀬先輩の存在くらいか。


というか、何でこの状況で、

こんなに楽しめるんだろう?


疑問に思って聞いてみると、先輩は体一杯で

『ええーホントに分からないの?』とアピールしてきた。


「だって夜の学園だよ?

夜の学園って、それだけでワクワクしない?」


「……まあ、非日常って感じはしますね。

基本、いつも人が溢れてる場所ですし」


ただ、楽しいっていうよりは、

むしろ不気味な感じが強いんですが……。


「この楽しさが分からないだなんて、

晶くんは人生を損してるなぁ」


「ぼくなんて楽しすぎて、何かこう、

ビッグなことを成し遂げたい気分だよ」


「例えば、風紀委員長の机に

『生徒会参上!』とか『上等!』とか書くみたいな」


「みみっちい行為で

ビッグな火種を蒔くのはやめて下さい!」


誰が後始末をするというのか!


「じゃあ、校庭に出て、

ナスカの地上絵を書いちゃうとか」


「見回る僕らが

問題を起こしてどうするんですか……」


「えー。せっかくのチャンスなんだから、

何かしないともったいないー!」


「見回りしましょう、見回り」


「もー、しょうがないなぁ。

次は図書室かな?」


「……ですね」


分かってはいても、

一瞬どきりとした。


屋上から僕らを見ていたのが黒塚さんである以上、

ここの見回りが一番緊張する。


とりあえず、いきなり飛びかかってこられたら、

真ヶ瀬先輩を突き飛ばして守るとして……。


問答になったら、先輩の前じゃまずいことを提示、

その後に裏で交渉……が最善だよな。


「どうしたの晶くん?

早く入ろうよ」


「あ、はい。

っていうか僕が開けます!」


ドアに手をかけていた先輩から正面の位置を奪って、

深呼吸の後に、ドアを開ける。



「ここも別に変わったところはないね」


「そう……みたいですね」


最悪の予想はあくまで予想だったらしく、

図書室に魔女の姿はなかった。


見回ってみても、

特に変わったところはなし。杞憂だったか。





……その後、二階、三階へと進み、

見ることのできるところは全て見て回った。


けれど結局、不審者も異常もゼロ。

幸か不幸か、見回りとしては空振りの結果に終わった。





「……まあ、こんなものですかね。

とりあえず、何もなくてホッとしました」


「ぼくは何かあったほうが

よかったなぁ」


いや、無茶言わないで下さい。


気を遣う側としては、

ホントしんどいんです。


「それじゃあ、

今日はもう解散しましょうか」


「いや、ぼくとしては、

もう一回くらい見て回ってもいいかなって」


「えーっ!

もう一度ですかっ?」


それは、ちょっとじゃなく困る。


何とか無事に

ここまで戻ってこられたのに。


「どうしてそんな、

もう一週なんて……」


「いや、どうしてって、

楽しいからに決まってるじゃない!」


ぺかー、なんて擬音と共に、

先輩は遊び足りない光線を放ってきた。


「……いや、さすがにそれは遠慮しておきます。

もう遅いですし、今日は帰りましょうよ」


「えー、もうちょっとだけだよ?

晶くん、もうちょっとだけ頑張れない? ね?」


「ムチャ言わないで下さいよ……」


これ以上は残業手当があっても無理です。


「ちぇーっ。残念だけど、

晶くんがそう言うならしょうがないか」


『今日はここで解散にしよう』と、

先輩は僕がずっと待っていた言葉を口にしてくれた。


ほっと胸を撫で下ろす。

これで、とりあえずは一安心だ。


「それじゃあ、また明日ですね。

おやすみなさい」


「うん、おやすみ。

寄り道せずに、ちゃんと帰るんだよ?」


大きく手を振りながら、

先輩が足早に去って行く。


偶然かどうかはともかく、

相変わらず先輩は鋭いな……。


念のために僕も、

帰った振りをしておこう。



先輩による追跡を警戒しつつ、

帰り道を一区画歩いた後に、迂回して再び学園へ。


それから、今度は校門には向かわずに、

裏手の方から学園の構内へと入った。


さて、ここからが本当の見回りだ。


果たして不審者は、

いつも通り図書室にいるだろうか?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。