貴! 責任とりなさい!
これにて終了。
貴がコンビニから帰ってきたので、義彦さんの形見の木刀で滅多打ちにした。(義彦さんは剣道五段であり、大学時代は剣道部主将を務めていたらしい)
「ひとさまの娘さん傷物にして! このろくでないし! 死んで天国の義彦さんに謝れ!」
「なになに母さん痛い痛い!」
「お前は中学校の保険体育で何を習ってきたの! 避妊もできないクズ! 責任とれ女の敵!」
「なに言ってるの母さん! 本当に死んじゃう! 死んじゃう!」
とりあえず世間様に顔向けできないのでこのまま義彦ソードで引導を渡そうとしたら鶴が貴と私の間に分け入り身を呈して貴を守ったので、身重の体、何かあってはいけないと鉾を収め貴、いや人として大事な一線を踏み外した外道を睨みつける。
「お義母様、貴さんだけが悪いんじゃないんです、二人でしたことです、貴さんだけを責めるのは止めてください」
「鶴さん、男と女では体の機能が違うので責任の比重が大きく変わります。そこの外道は男としての責任を取らねばいけません、その身をもって」
「お義母様、貴さんはこれからも必要な人なんです、私にとっても、この子に、とっても」
鶴はそう言いながら翼で自分の腹を撫でる。
「え? 鶴?」
「はい、貴さん。お腹にあかちゃんが、」
鶴がそこまで言うと、貴は死後硬直して棺桶から飛び出した死体のように勢いよく跳ね上がり、鶴を抱きしめるとハイジのようにクルクル回りだした。
「鶴本当! 本当なの!?」
「はい、お医者様では三か月って」
「ヒァッホー! ありがとう鶴!」
「はい! はい!」
鶴が言ったお医者は、産婦人科医だろうか、それとも獣医なのだろうか、なんてどうでもいいことを考えながら、クルクル回ってあと一歩でバターになりそうな二人を見ている。
まあ貴も子どもができてことに否定的ではないみたいだし、天誅するのは止めておこう、我が子だし、そりゃ滅せなくていいのなら滅したくない。
子どもできちゃったし、これ鶴とか、言っている場合じゃない。責任として入籍は最底ラインとして、鶴を幸せにしなくちゃならない、貴だけだと全然充てにならないし、無職だし(私は貴が働いているといった鶴の言葉を妄想八割と疑っている、家にお金を入れていないし)、ここは私が一肌脱いで、私が鶴と産まれてくる孫の幸せを確保しないといけない。
気合いを入れ鼻息を吐いたら、フンスと漫画のような音が鳴った。
腕まくりをする。
とりあえず鶴のお腹の子が危機なので、クルクル回る貴と鶴を止めるため一歩前に踏み出すと、
胸の中心壇中から、
幸せの蒼光線がブバッと噴き出した。
ああ、今幸せなんだ私と、少し驚く。そして納得する。
幸せに煌めく蒼い光は、いつも家族と共にあった。
今日家族が増えたのだから、蒼光線が出るのは当然のことだろう。
ああ、私はなんて幸せなのだろう。