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第四話

「この棒のやつは私のですわよ」

「ちょっとまて独占はナシだ」

「僕も棒好きー。ぺろぺろ舐めるとおいしいの!」

金曜の学校帰り、洋菓子屋に寄り詰め合わせとプリンを買い先輩達の家を目指していた。

「いやいや、これ先輩達のだから」

「お構いなくですわよナギさん」

それはもらう側の台詞だ。

「今までの分と、特訓で色々と教えてもらうわけだから、それのよろしくおねがいしますだからね」

「ナギにゃん僕達の分がないよ!!」

「プリン10個買ったから大丈夫だよ」

「チカにゃんいっこだしてー」

「歩きながらプリンは駄目」

「はしたないですわよますみさん。座って食べないと。ああそうだ机と椅子を作りましょう。物質生成イメージでうまいことできるかも知れませんわ」

「いいなそれ。マッサージチェア作ろうぜ」

「おー!レッツプリン!」

モラルが不足していた。



「気にしなくてよかったのに」

桐子先輩は渡した詰め合わせを持ち大人な返しをしてくれた。

「ほら言った通りでしょう」

キョウちゃんを手で止める。

「いえ、色々とお世話になっていますので。お食事もご馳走してもらったので」

「いいのいいの。私達としてはね、同じ巫女の仲間ができて嬉しいんだよね。ゆっくりしててね。四季たちもう少しで帰ってくるから」

「おまたせ、紅茶が三人、二人はジュースでいいんだよね?」

リセ先輩が飲み物を持ってきてくれる。四季先輩楯先輩ひかり先輩は出かけているらしい。

「すみません、わざわざ。ありがとうございます」

「桐子せんぱーい、先輩は何の素質なんだ?一昨日見たのは槍使った戦い方で、特別な神楽を使ってた感じもなかったじゃん?」

「わからなかったんですのチカさん?あの身のこなし、スピード、槍さばき。予測される桐子先輩のスキルは“肉体強化”。霊力を自らの身体能力の向上にあてることは可能ですが、それを素質として持っているわけですわ」

確かに、霊力を体の一部分に多くまとい動きの底上げをすることは可能だ。ただ、もし桐子先輩の素質スキルがそれだとしたら。こういうこと言ったら駄目だけど、他の人と比べて物足りないものがある。

「あれ、四季から聞いてないの?私の能力。私のはね、“形状変化”」

そう言うと桐子先輩は立ち上がり、両手首に巻いたブレスレットを合わせた。ブレスレットの形が変わり、槍になる。一昨日使っていたものだった。

「霊力を使ってこれの形状を変化させて色々な武器にして戦う感じ。武器、針、盾とか」

言いながら槍を剣にし、サボテンにし、盾にした。

「肉体強化は?」

「多少はするけどね。私の素質スキルは形状変化」

わかったように説明していたキョウちゃんはぽけらとしていた。

「ひかり先輩は、“光線”とか、そんな感じですか」

「正しくは“霊力変換:光線”だね。凝縮した霊力を指からビーム状にして出す。威力よりもスピードとか命中性とかを意識してるって言ってた」

「桐子さんとそのひかりさんがメインのアタッカーで、楯さんが盾役、リセさんがアシストとサブアタッカー、四季さんが全体の指示。チームってそういうのだよ、やっぱ」

「だからチームとしての練習とご、指導をつけてもらおうぜってことで特訓すんだろ」

「ね!がんばろーね!」

「すみません。チームとしての戦いに慣れていなくて」

「うん。がんばって」

「ただいま、みなさん」

帰ってきた四季さんが地下のリビングに顔を出した。

「少し待っててください。二人が降りてきますから」

「はい。よろしくお願いします」

「四季ー、みんながお菓子とプリン買ってきてくれたよ」

「すみませんわざわざ。あとで食べましょうか」

おふたりが降りてくる。総勢10人と妖精。

「さて、みなさんの予定が空いているということで週末使って特訓をしましょうということで」

「はい。至らないところもありますが、よろしくおねがいします」

「それでは、まず希望にあったチームとしての動きについての話をしましょうか」

そう言うと先輩はホワイトボードをひっぱってきた。大きい家だがこんなものまであるらしい。

「一昨日見させていただいたもの、あれが普段の戦い方で間違いないですか」

「はい。えと、基本的には」

昨日は襲撃がなく『敵が来たら現地集合しましょうか』と話をしていた先輩達とも会わなかったので戦い方については今日に回っていた。

「と、その前になんですが、わたし達なりに考えてみました。聞いて、えっと、いただいていいですか?」

もしかしてわたし達がこうすることを予測していたのか、特に動揺もなく四季先輩はお願いしますと言った。というか先輩に動揺することなんてなさそうだけど。

「基本的には五人での対多数の雑魚戦としての動きということで。ボード借りていいですか」

「はいどうぞ」

立ち上がり先輩に椅子を譲る。

「チカちゃんは攻撃力が高く一体でも複数でも相手にできるので前衛に。キョウちゃんも前衛ですがキョウちゃんは複数を相手にして、動きを封じることが得意ですが、二人は接近しすぎてもお互いの能力を使い分けることも難しいので、お互いがフォローできつつ適度の距離をとって戦います」

二人の名前を上面の左右に書く。ややチカちゃんが前。

「その後ろにわたし。前のふたりは多数を相手にする必要があるので倒しきることが難しい場合わたしが追撃で倒しきります。ロックオンしておけばわりと逃げられない攻撃が可能なので」

二人のした、中央よりにわたし。

「サラちゃんは広い攻撃範囲を持っているのでこちらが押されている場所を食い止めたり、またもう一押ししたい場所を攻撃したり、遊撃的な役割を。メインアタッカーではないですが状況により前に出てもらいます。後ろから来られても厄介ですので、基本位置はわたしのやや後ろに」

わたしの下にサラちゃん。

「ますみちゃんはどんな状況でも攻撃を受けないことが強みですので、どこにいても守ることができるというのが理想ですが、前にいすぎてもむやみに力を使うだけですので、サラちゃんの横あたりで」

ますみちゃん。ほとんど先輩達の真似になってしまうけど。この形が今考えられるベターな形。

「まだひとつのチームとして連携した動きができるわけではないんですが、少しずつなれて行きたいなって」

学校と家で模索した結果だが、先輩達にお披露目できるレベルのものじゃなかったらどうすれば。

「全員で考えたものなんですよね」

「はい、えっと、はい」

「でしたら、一度戦ってみましょう。それで」

「えっと、問題点とか」

「それは実戦を一度経験すれば見えてくるはずです。昇華させていくのはそれから」

ナナに付き合ってもらい動きの練習をしたが、恐らく実戦は簡単にいかないんだろう。

「先輩、今回はあたしらに任せてくれよ!試してみたくて仕方ねーんだ」

「ピクニック的感の覚で見ていていただいてよろしくてよ」

「すみません、偉そうで。でも、この戦い方で絶対に勝ちます!だから、わたし達に任せてください」

「格好いいね。やる気マンマンだ」

「ですね。ですが、もし合わなかったら、すぐに解除したり新しい戦い方をしてみたりでもいいんです。答えは一日では出ません。いい動きだとは、思いますけどね」

わたし達なりに考えたことを汲み取ってくれたみたいで、わたし達は誰も嫌な顔はしていなかった。誰かカチンと来てなくてよかった。

「頑張ります」

「チームとしての動きに関しては、帰ってからしましょうか。皆さん親御さんの許可はとってきました?」

今日から合宿という名目で先輩の家に泊まる。このあと襲撃があるまで待ち、18時を過ぎたら一度帰宅。荷物を持って再集合。寝るまで練習し一泊してから翌日も練習、襲撃を総評をいただいてから解散という予定。お母さんには友達の家に泊まると言ってある。

「部活みたいだよね!僕達部活入ってないから楽しみ!」

「……うん」

サラちゃんが言っているくらいだから間違いないんだろう。同じ境遇がそうさせるのか、先輩達にも心を許しているようだった。

「ここ、空調きくので大丈夫だと思うんですが夜寒かったり暑かったりしたら言ってくださいね」

四季先輩リセ先輩おふたりのマンションは一階にそれぞれの部屋と誰かが泊まる用の部屋がひとつ、リビング。それから地下室。アルバイトをしているとしても大学生がふたりで住むレベルの部屋じゃない。

「消灯は何時ですの?」

「消灯てお前。んなもんないだろ夜更かししようぜ遊ぼうぜ」

「ねーねー先輩、ボードゲームない?」

「あるよあるよ!いっぱいあるよ遊ぼうね!」

確かに楽しみというかわくわくも多少持ち合わせてはいるがそれよりも強くなるという前提のもので、ただ楯先輩が乗ってしまったのでグラついている。

「無理はしないでね」

桐子先輩が笑っている。わたしも少しそう思う。先輩達が“特訓”と言っているんだ。夜遊ぶ体力があるかどうか。

「まあまあ。皆さん、夕飯は何がいいですか?」

「え?選んでいいの?僕達決めていいの?」

「作るか、外食行く?」

夕食の意見を出し合っている。何から何までお世話になりっぱなしだ。布団も全員分あるとのことだが、わたし達のために買ったものではないらしい。単純に来客用だとして、常備してあるにしては数が多い。

「ラーメンって気分じゃないですわ」

提案が続いているが、話を戻せばそもそもこの空間も何のためのものだろう。いや今はわたし達がいて作戦会議の場として活用しているが、先輩達だけで会議するなら上のリビングで十分だろう。

「和食は今日は違うんじゃないんですの」

わたし達と初めて会った時の先輩達のリアクションを見る限り先輩達からしたら初めての後輩のはずで。それにしては予測していたような準備。嘘をつく理由も今のところは見当たらず、しかしこうネガティブに考えると個人的に不可解なことが浮かんでくる。

「カレーはベストではなくてよ。いえ私は何でもいいんですのよ」

「出てっぞ優柔不断!」

今はまったりと昼寝かましているがナナはどうして先輩達の話をしなかったか。先輩達はわたし達をいつから認識していたのか。どうしてあのタイミングで助けてきたか。いや、先輩はあのときなんて言っていた。インカムの第一声。思い出せ思い出せ。

「凪ちゃん。凪ちゃんは何がいいですか」

「あっ、はい、えっと、そうですね。なんでも。でも十人って多いですよね」

「そうですね。大人数でいけるところとなると」

「んー、焼肉行く?」

「いいのか!イエーイ!」

「……いえーい」

リセ先輩の夕食が意見で決まったが、わたしは先輩の第一声を思い出しそびれていた。

「ハイタッチですわ!」

「焼肉ハイタッチ!」

ウチのチームには誰にも相談できそうになかった。先輩組になら四季先輩リセ先輩桐子先輩とこのことに限らず話を聞いてもらいたいくらいだが、本人にはさすがにできない。消去法でサラちゃん、かなあ。


襲撃の報告を受け楯先輩の車に揺られ急行、敵がこちらに気付く。

「行こう、みんな」

「っし!予定通りあたし左」

チカちゃんが突っ込む。

「ちょ、駆け出さない!」

インカムをつけていてよかった、スピードを落とすチカちゃん。

「まったく、輪を乱す存在ですわ。華麗に出陣」

キョウちゃんが右に。重力神楽を展開する。チカちゃんが一体目を倒すところを見ながらわたしも走り出した。

「割と広く敵がいる!サラちゃん、左右お願いしていい?」

「……了解」

わたしの少し後ろにサラちゃん、ますみちゃんも続く。

「チカちゃん、一撃はゆるめで大丈夫だからね!」

『おう!取りこぼすなよ』

流れるようにダメージを、動きを封じてくれている。

「行くよ!」

チカちゃん側の四体、キョウちゃん側の二体をロックオン、指を六度鳴らし霊波を出す。撃沈。次。

「ナギ」

サラちゃんの声で左右の敵が近づいてきたことに気付く。前線を下げて、うん。

「ふたりとも少し下がって。手薄な左から攻めるよ!ますみちゃん、右側いける?」

「オッケー!任せて!」

飛び出すますみちゃん。防御壁を張り敵の侵攻を防ぐ。

「チカちゃんキョウちゃん左にスライド!傷付いた敵から倒して数減らしていこう」

牽制程度だけだった真左は傷付いていないだけあって数こそ少なくともわたしやサラちゃんだと蹂躙というわけにはいかない。

『おいキョウ神楽カブってんぞ!』

『私の台詞でしてよお被り遊ばせると文字通りヘコみますわよ?』

「喧嘩しない!霊力少し控えめで、チカちゃんこっちお願いできる?」

『任されてィ!』

思ったより言うことをきいてくれて助かる。

「サラちゃんチカちゃんキョウちゃんの間に。二人のアシストを」

「わかった……」

ふたりの位置を入れ替える。ちらと後ろを見たがまだ大丈夫そうだった。

「チカちゃん、まずその一帯から終わらせるよ!大変だけど終わったら反転、ますみちゃんが守ってくれてる方行くよ」

『フォロー頼むぜナギ!』

楽しそうにばっさばっさしているチカちゃん。わたしも神楽で追撃を決める。前方も少し押されていた。

「キョウちゃん、若干後退いつつ合図したら展開強めで足止めよろしく!」

『待ってますわ!』

「あと二秒で反転!はっ!ますみちゃんは少し休憩ね、チカちゃんっ!!」

『応!』

左側を綺麗にし、チカちゃんが右に飛ぶ。疲れが見えていた。チカちゃんの倒し残しを捌き、わたしも反転。まだ大勢いた。

『ナギさん、まだですの?』

「もう少し!ますみちゃん、もう少ししたらもう一発お願いするよ!」

『まっかせて!』

前方はだいぶ後退していた。もうひとつ何か欲しい。

「チカちゃん、しばらく一人でいける?」

『長くはキツいぜ!』

「大丈夫!キョウちゃん、おまたせ!つっこんでから発動よろしく!」

『げっ!ぜ前進ですわねお任せを。はー、行きますわよ!』

前方ほとんどの敵が鈍く、というかほとんど動かなくなる。神楽を使いつつ武器で攻撃しているキョウちゃんを中心として円状に効果する重力神楽は敵味方関係なくわたし達も入ったらまともに動けないだろう。

「サラちゃん、こっち!チカちゃん、力溜めて、合図したらキョウちゃんに拡散撃てる?」

『げげっ!』

チカちゃんの後方にわたしとサラちゃん、支援を続ける。

『いいのかよ、あいつ無防備だしそういえば仲間だぜ?』

『そうですわよ!ウラギリ!!そそういえば?え?ゆ、許すまじですわ!ダメゼッタイ!!』

「大丈夫だから!ますみちゃん!」

『あいあい!』

「最小限で発動後キョウちゃんのところまで!自分とキョウちゃんをチカちゃんの攻撃から防げる?」

『了解!』

『そういうことな、ぶっ放すわ!』

「しばらく下がってて、パワー溜めてて」

ますみちゃんに寄るチカちゃん。

『一安心ですが、あんまり長くは持ちませんことよ?』

「そのためのしばらくのエコモード。チカちゃんの攻撃ですぐ解いてね!」

『言われなくても、ですわ!』

『行けるぜ、ナギ!』

チカちゃんが武器をしまいわたしに向け笑う。肩で息しながら楽しそうだ。

『まずますみちゃんから!』

『ゴー!』

重力の範囲内を駆け抜けるますみちゃん、中々早い。攻撃しつつ目で合図し後退するわたしとサラちゃん。

『到着だよ!』

「バリア展開、チカにゃん、ぶっぱなしちゃって!」

『行くぜキョウ!特等席で味わいな!!』

走り出し両手をかざす。大型の拡散波が敵を襲った。ナイスパワー。

『だ、大迫力ですわ』

『ゲームみたーい!』

土煙が消える。これで。

「がっ!」

「え」

サラちゃんが吹き飛んでいた。まずい、こちらにもまだ十分な数が。起き上がってくれた、よかった。無事は無事みたいだ。

『サラ!』

こちらに戻ってくるチカちゃん。攻撃を仕掛けるが彼女も体力が切れ掛かっていた。

『どうしますの?前方、右?』

「ますみちゃん!」

『ごめん、残り少ないよ……』

無理をさせすぎた。まずい。

『ナギ!攻撃続けるぞ!』

「う、うん!」

前方はどうなった?この数、倒せるか?一度後退、いや偉そうなこと言ったんだ、そんなこと。どうする、先輩達なら、どうする。考えろ、考えろ。もう少しなんだよ。畜生。




---------------------




「もう行く?まずそうだよ?」

意地か興奮状態がそうさせるのか、あきらめることなく戦い続けていた。インカムからでも傷つきながら食らい付いていることが伺える。インカムの受信のみから受送信に切り替える。

「みなさん、交代しますか?」

『もう少しだけ、やらせてください!はっ』

「わかりました。くれぐれも無理しないでください」

即席のチーム戦にしては流れも綺麗、能力を生かした戦いができていた。足りなかったのは慣れ。

『もう一発は撃てない。全員固まって!』

元々思いついていたらしい、足止めからの拡散の組み合わせはもう使えないようだった。ひとまとまりになる五人。

『集まると神楽は使えませんことよ!』

『もうほとんど残ってないでしょ!武器で戦うよ!』

密集し向かってくる敵をカウンターで倒していく。しかし完全に囲まれていた。

『がはっ!』

伊織ちゃんが倒れ、先ほどから傷ついていた沙良ちゃんも崩れ落ちる。

『ますみちゃんギリギリまででいい!バリア張って二人守って!』

『も、もうキツいぜ……』

海悠ちゃんも武器を出せないくらい消耗していた。

『はー、はー』

両手を膝につき肩を落としている凪ちゃんは飛び掛る敵に手だけを向け霊波で吹き飛ばす。

『はー……』

構えを取る凪ちゃん。海悠ちゃんもバリアの中に入った。

『ショット!』

指を鳴らし一発の霊力を飛ばして二体を突き抜け三体目にぶつけた。

『追尾は、こういうこともできるんだ。やっぱり』

最終目的の前に中間地点として敵をロックオンして攻撃したようだ。今思いついたのだろうか。すみちゃんが倒れ、バリアが切れる。

「楯、準備を」

『もうちょっと、もうちょっとなんだ!頑張れわたし!』

両手から先ほどの霊波を出す。もう覚えたらしい。襲ってくる敵をけり倒し、霊波で追撃。

『あああああああああああああ!!!!』

最後の一発で五体を貫き、殲滅させていた。

『次ィ!はー、はー』

構えをとる凪ちゃんがもう敵がいないことに気付いたのは発言から三秒後だった。

「お疲れ様です。皆さん無事ですか」

『え、あ、はー、はい。はーっ、はーっ。だ大丈夫、です』

四人も意識を失っているわけではなく、彼女達の勝利だった。

「勝ったんですよ。お疲れ様です」

ナナが一帯に張っていた空間を解き、五人のもとに飛んでいく。ねぎらいの言葉をかけ、それから再生の欠片を集めているようだった。

「もう解いていいですから、帰りましょうね」

「って、歩けないんじゃない?」

『いや、大丈夫だ。はー、つかれたー、おつかれー』

『中々、良かったんじゃ、ないですの』

『ど、どうだろうね……。はっ、本当に、勝ったのか、実感ないや……』

『いや、お前最後スゲーぜ。なんかこう、先輩達みたいだった』

『なんか体が、動いたっていうか……はあ』

『ま、終始あたしの攻撃がデカかったけどな』

『自分で言うもんじゃありませんこと、よ。MVPは、ま、間違いなく私ですわ』

『みんな、すごかったよねー!ごめんね、僕最後力尽きちゃって!』

『守ってくれた……ありがとう……』

インカムの電源を切る。みんなにもそう指示。

「一昨日に比べると」

「あ、やっぱり?私もそう思ったなあ」

続きを口にしなくてもリセが同意していた。桐子も頷いている。

「多少無理をした部分があるんでしょうか、ま、こちらも同じですが。今のがどれくらいなのかがわかりませんが」

「しばらくは様子見、かな」

「皆さんが素質の使い方を覚えるのに、間に合えばいいんですが」

「間に合わなかったらどうするの?あ、車出してこなきゃ」

「そのときは、わたし達の出番」

戦闘を終えた後輩達が戻ってくる。大小違いはあっても疲れながらもその顔はなんだか楽しそうで、嬉しそうだった。




第四話 夕日が沈むのも涙が乾くのも おわり

     to be continued……

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