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第1話:『おまけで召喚されたお疲れOL、実は「お茶と和食で魔力を超回復させる」唯一の聖女でした』

(ちょっとまって!これ一体どんな状況!?)


私は今、漆黒の鎧を纏った、ものすんごく顔の怖い超絶イケメン騎士様に、監禁一歩手前の勢いで抱きしめられている。


「お前を誰にも渡さない。ずっと俺の側にいろ」


低くて色気のある声で囁かれ、私の心臓は今にも爆発寸前だ。



――どうしてこうなった。

話は数日前、私がブラック企業での残業中に、「おまけ」として異世界に召喚され、無能だと森に放り捨てられたところまで遡る。


◇ ◇ ◇


ドサリ、と容赦なく地面に放り出され、私の身体に鋭い痛みが走る。


「ヒッ……、う、嘘でしょ……!?」


見上げれば、昼なお暗い不気味な大森林。

巨大な毒キノコが怪しく光り、遠くからは獣の地響きのような咆哮がゴロゴロと鳴り響いている。


――『黒の森』。

王宮の兵士たちが私をポイ捨てする際、「生きては戻れない魔境」と嘲笑っていた場所だ。


二十八歳、中堅食品メーカーの営業事務。

終わらないサービス残業(サビ残)を終え、深夜二時の給湯室で、大好きな「ほうじ茶」をマイボトルに淹れた瞬間、足元が光ったと思ったら異世界。

しかも一緒に召喚された現役女子大生らしき美少女の「おまけ」扱いされ、魔力ゼロの無能としてここに捨てられたのだ。


「はぁ……。最悪だけど、でも……」


痛む身体を起こしながら、私は小さく息を吐いた。

恐怖はある。けれど、私の心を満たしていたのは、圧倒的な「解放感」だった。


(やった……! もう、明日からあのクソ上司の説教を聞かなくていいんだ! 有給も全部消化させてくれないブラック企業におさらばできる!)


そういえば、残業中にお茶を淹れて夜食を食べようとしていたから、喉がカラカラだ。

そう思った瞬間、私の頭の中に不思議な感覚が走った。


『固有スキル:魔法収納アイテムボックスが覚醒しました』


(えっ、何これチート!?)


念じてみると、私の手のひらの上に、時間が完全に停止した状態の『淹れたてのほうじ茶マイボトル』と、夜食用に買っていた『まだホカホカの鮭おにぎり』がポンッと飛び出してきた。

それだけじゃない。仕事用バッグに入っていた、取引先の農家からサンプルとして預かっていた『日本の野菜の種(大根、ネギ、大豆など)』や、実家から届いたばかりの『お中元の極上調味料セット』も、バッグの中身ごと丸ごと魔法収納に保存されている。


「やったー! 時間が止まってる! これなら食いっぱぐれない!」


私が魔法収納の便利さに大喜びした、その瞬間だった。


ゾワリと背筋が凍る。

足元の草むらがガサガサと揺れ、闇の奥から、血のように赤い二つの眼光がじっと私をロックオンした。


獰猛な牙を剥き出しにした、熊ほどもある巨大な漆黒の狼(魔物)が、低く唸りながらゆっくりと這い出てくる。


(待って、ブラック企業から解放されたと思ったら、一瞬で人生のデッドライン!?)


逃げようにも、腰が抜けて指一本動かない。

魔物がおにぎりを抱えた私に狙いを定め、大きく顎を開いて飛びかかってきた――その、絶体絶命の瞬間だった。


ドシュッ――!!!


鼓膜を突き破るような轟音とともに、眩い「碧い雷光」が視界を染める。


一瞬で消し飛ぶ魔物。

激しい風圧に私が目を瞑った次の瞬間、目の前にズシン、と重々しい足音が響いた。


恐る恐る目を開けると、そこに立っていたのは、返り血を浴びた漆黒の鎧を纏う、一人の騎士だった。

乱れた黒髪の隙間から覗くのは、すべてを凍りつかせるような、冷徹で、けれど吸い込まれそうなほど美しい――碧い瞳。


(ひえっ……! 助かった、の……? でも、魔物より何倍も顔が怖いお兄さんが来ちゃったんですけどー!?)


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