1話 《無限球速アップ》
「いいか!! 我の名はインドラ!! 100階層を住処にしている『このダンジョンの女王』である!! 我らの資源を根こそぎ奪おうとする貴様らを……蹂躙しにきた!!」
……。
ダンジョン一階層で今日も今日とて地味にコツコツ資源集めをしてただけだってのに……俺ってばいつもいつもなんでこんなに運がねえんだ?
「頭上表記、レベル320ってSランク探索者並みだったような……。あー、俺死んだ? てか全員死んだか?」
「探索者……貴様らはそういう生き物なのか?」
やっべ。目をつけられた。
俺以外の奴らは……こっそり隠れたり逃げたり……。
まったく、誰か一人くらい心配してくれる人間はいないのかよ?
「いや……。俺なんか……。メディアの笑いものの俺なんかを心配だとか助けようだとかそんな奴、いるわけねえか。親父だって――」
「おい! 貴様我の質問に答えよ!! 出なければ……」
――バンッ!!!!
「いだっ!!!」
インドラが片手を高々と掲げると、辺りに雷が降り注いで深いクレーターがいくつもできた。
それでもって跳ね返ったそれは俺の肩を掠めて全身に痺れが走った。致命傷……ではないっぽい。
きっとこれも魔法なんだろうが、魔法陣も詠唱もない……。
俺の『ボール魔法』と似てるが、威力が桁違い過ぎる。
このままだとこれで逃げ口の階段を塞がれかねないし、全滅だってあり得る……。
仕方ない、全員ここから逃げられるように俺が人柱になって会話の相手をしてやるか。
最後の最後に誰かを助けて、そんで死んだ。
それなら親父もきっと褒めてくれる、あの古ぼけた『店』はワンチャンこれをきっかけに流行ったりし――
「――おい!! 今のうちに逃げるぞ!! 『Fラン暴投無駄筋君』が引き付けてくれてるうちに!! ま、でも心配すんな!! あいつは肩以外ぶっ壊れることねえからよ!!』
「そうだな!! 親父のくっそまずい握り飯を毎日食ってもピンピンしてるくらいだもんな!!」
好きかって言いながら逃げてく探索者たち。
いや、全員逃げろって思ってはいたけどさ……。
「お前ら!! 絶対恨んで出てやるからな!! 寝てる間にその握り飯を口の中にぶち込んでやるからな!! あれくっそしょっぺえから覚悟しろや!!」
俺の叫びは虚しく一階層、この広い間で響き渡った。
でもそれを気に留めることもなく人はいなくなってしまった。
あー、キレそう。
「……。……。……あは。あはははははははははははははははははは!! なるほどなるほど!! 貴様らはそういう生き物であると! あはははは!! よーく理解できた!! 醜い、醜いなあ!!」
「わ、分かってくれて何よりです」
「それで、貴様はその中でもとびきりの出来損ない……と。なんとも醜い!! 弱い!! ……。そして我はそんな生き物が大嫌いだ。その意味、理解できるな?」
インドラはその端正な顔で俺の顔をじっと見たかと思えばたゆんたゆんとそれを揺らしながら両手を掲げた。
今回は威嚇じゃない。マジで俺を狙ってる。
俺も逃げるか? いや、まだ近くに他の探索者はいる。
被害を抑えるのなら少しでも時間を稼ぐしかない。
……。あーあ、あんなこと言われたってのに逆境で少し燃えちまうのは元スポーツマンだからなのかねえ。
「……。ピッチャー振りかぶって……」
「む? 抵抗するのか? 貴様のようなものが、我に? ふん、その気概は嫌いではないかもな」
テレビで流れるような実況アナウンスを口に出しながら俺は片足を上げ、グローブに見立てた左手から強く握られた右手を離し、弧を描いていく。
不思議と古傷が痛みそうで怖かった肩は自然と上がり、今までにないくらい滑らかに体が動くのを感じる。
最後の最後ってこんなにもバフになるんだな。つっても使えるのはこんな初級魔法、ボール系魔法だけだけど――
『痛みと恐怖の払拭が確認されました。ボール魔法強化が覚醒しました。≪無限球速アップ≫を取得しました。初回可能上がり幅は……スキル主の最高球速《165キロ》の《3倍》となります』
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