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第65話 嫌なことほどまた起きる。

「見た目か!?見た目の話をしてんのか!?だったらお前も俺と似たようなもんじゃろがい!!」


「お客様、落ち着いてください」


 昼休み、俺の隣でお弁当を食べているほのかが卵焼きを食べながら言う。


「大体なんで昼休みになっても帰ってこないの?授業四時間もサボるってどういう事?」


 朝のHRの前にいなくなった面々は、なんと 四時間目が終わっても帰ってこなかった。


 そんな事ありえんのか思うところだけど、何故か教師の誰も指摘しなかった。


 担任の片山先生はせっかちすぎてHRに一人二人いなくても無視するので通常運行として、他の教師は何をしてるんだろう。


 ……多分二条もアリスさんも転校生で、桜子もクラスを移動してきてるのでまだ名簿が間に合ってないとかそういう事だろうか。


「それは確かに気になりますね。せっかく授業中の二条様をお世話出来ると思ったのに……」


 なんか会話がかみ合ってない気がする。


「…………お前、俺の話聞いてる?」


「いや、半分聞き流してます」


「おい」


「だって、ぐちぐちとしつこいんですもん。男らしくないですよ?」


「こんなにこけにされて黙っていられるか。あいつ、俺の顔を見て決めてたじゃん。確かに二条とかアリスさんは物語に出てくるような顔だよ。桜子だって綺麗な方だろ?それに比べて俺が並以下なのは分かってるよ。分かってるけどさ……」


 ほのかはため息をつく。


「そんな事無いですって。お客様も十分かっこいいですよ」


 目線はお弁当を見たままそんな事を言う。


「そんな雑に言われても心に響かねえと」


「はぁ……まったく面倒くさい人ですね。というかそもそもあの道夫くんってのは誰なんですか?私そこから知らないんですけど」

 

「あ…………そういえばそうだったな………」


 ほのかは神の力関係の事は知らない。


「なんで言われるがままに二条様やアリスさんはホイホイ付いていったんですか?」


 俺は道夫君のお母さんと山村先生に使った言い訳を流用することにした。


「あの子一年なんだけど、入学してからずっと不登校だったんだ。そこで生徒会長である早川先輩からお願いされて、昨日彼の自宅に行ったんだ。そしたら今日からきてくれることになったんだけど…………さっきみたいにアリスさんに夢中になっちゃって」


「つまりはお客様と一緒じゃないですか」


「一緒にするな!一緒じゃないって!俺もアリスさんに、その…………ぞっこんなのは…………でも奴とは違うから!」


「どう違うんです?」

 

「それは今関係ないだろ!」


「一番あると思います」


「…………くっ!」


 異世界の話をせずに違いを説明出来ない。まじか、傍から見れば一緒じゃん。


「…………いや待て、俺とアリスさんは一つ屋根の下で暮らしているんだ。これは圧倒的なアドバンテージだろ」


「じゃあそう彼に伝えればいいじゃないですか」


「そんな事したらアリスさんがいたから学校にこれた道夫くんの精神が崩壊してしまうよ。せっかく不登校を辞められたのに」


 それを聞いて何故か少し目を見開くほのか。


「…………ったく、お客様はいろいろ抱え込みすぎる癖がありますね」


「抱え込む?どういう事?」


「それは一旦置いときましょう。……そもそも彩お嬢様がそんな事お願いするとは思えないんですが」


 俺の質問には答えず、質問を重ねてくるほのか。 


「それは別におかしくないだろ。あの人生徒会長なんだから」


「いや、お客様より長くお嬢様と付き合いのある私が断言します。お嬢様はそんな赤の他人のことを考える情のあるお方ではありません。……どこかの誰かと違って」


 そういえばこいつ早川先輩の屋敷のメイドだったな。だから早川先輩の事はよく分かっているんだろう…………あ。


「でもお前クビになってホームレス手前だったじゃん。そんな奴が先輩を理解してるとは思えないな」


「…………今の私は二条様お付きのメイドです。前職の事は忘れました」


「いや、お前から言い出したんだろ」


 こいつ逃げやがった。なんだよもう。てか何の話してたんだっけ。話が脱線しすぎて忘れたわ。


 ああ、そうだ。道夫くんが顔で人を判断するって話だ。


 …………でも待てよ。


 俺はほのかの顔をじっと見る。


「……急になんですか?私の美貌にメロメロにでもなったんですか?」


「うん。確かにお前は滅茶苦茶美人だよな」


「…………え?」


 茶髪にピアスというちょっと悪そうな要素があるものの、メイクは薄いし素材がすっげえいいのは事実だ。


 道夫くんが顔だけで人を選んだとしたらほのかだってアリスさんの仲間と見なされるだろう。なのにほのかは俺と一緒で無視された。てことは俺の顔を見て判断したわけじゃ無いのか。


 もしかしたら俺の顔から相談しずらそうなオーラが出ていたのかも知れない。


 ………なんかそう考えるとすこし溜飲が下がる。

 

「なんかお前と話してたら落ち着いたわ。やっぱほのかは名前に似て場をほんわかさせる能力があるんだな…………て、あれ?そんな顔を真っ赤にしてどうした?」


「……ったく!軽々しくそんな事言わないでください!」


「いっへぇ!やめろほ!」


 思いっきり両方のほっぺをつねられた。何でだ。


「急にはにするんだ!ほっぺつねっちゃだめはろ!」


 俺も負けじとほのかのほっぺをつねり返す。


「自分だってやっへるひゃないでふか!」




 そんな感じで俺とほのかが互いのほっぺに大きな跡を残す作業をしていると、


「随分と元気だね?」


 そんな声が後ろから聞こえてきて、俺とほのかは互いの手を離した。


「二条!」


「二条様!」


 後ろを見れば苦笑している二条の姿があった。


「おお、やっと戻って来たのか!すっげぇ長かったな。何してたんだ」


 俺が喋り掛けている間にも、ほのかが二条の座席の椅子を引いてハンカチで座席をさっさっと拭いて待っている。すげぇ。こういう所見ると、プロのメイドだなって感じがする。


「ほのかくん、ありがとね」


 その様子にほとんど動じず椅子に座る二条もまた、プロのお坊ちゃん感出てる。


「いやあ、僕もこんなに長引くとは思っていなかったよ。待たせて悪かった

ね」


 ほのかがカップに注いだ紅茶を手渡すと、香りを一嗅ぎしてから口に含む二条。


「まぁ別に待ってなかったからいいんだけど……」


 俺がそんな事を言うとほのかが無言で睨んでくる。


 きっと昼休みまでの間に百回ぐらい、ねぇあいつらまだかな?、と聞いてたからだろう。


 うっせぇ。ずっと気にしてたって言ったらダサいだろうが。


「…………で、二条!結局こんなに長く何の話をしてたんだよ…………って、あれ?桜子とアリスさんは?」


 俺がほのかの視線に気が付かないふりで二条に話しかけたとき、俺は二条が一人で戻って来たことに気が付いた。


 ついでにいえば道夫くんも今どうしてるんだろう。

 

 俺の疑問に対して、二条が重く口を開く。


「うん。それなんだけど…………道夫くんは初日って事もあって早退したんだ。それで桜子くんとアリスさんは、今日は道夫くんの家に泊まることになったんだ」


 …………は?何言ってんの?


 俺が言われた事の処理に時間を掛けていたら、二条の後ろに控えたほのかがぽつりと呟く。




「アドバンテージ、無くなりましたね」


 俺はそれを聞いて、無言で椅子から立ち上がる。


「拓也くん?急に窓を開けて、どうしたのかな?」


 俺は答えずに、校庭に向かって大きく息を吸う。 




「…………だからっ!何なんだあいつはぁぁぁぁぁぁぁ!!」




 あっ、校庭でサッカーしてる男子がびくってなった。


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