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第58話 城ヶ崎は何処にいる

「君って一年でしょ?城ヶ崎道夫くんって知っているかな?」


「え?いや、知らないです」


「そうか…………ごめんごめん」


 俺達は一年の教室が並ぶ三階にやって来た。うちの学校は学年が上がるほど階が下がっていくシステムだ。ちなみに特進クラスは別の建物にある。


 そんですれ違う子に片っ端から聞いているんだけど…………


「誰も知らないってどんだけ影が薄いの、城ヶ崎くんは」


 俺は愚痴をこぼす。かれこれ十人以上に聞いているが、知らないという回答しか返ってこない。廊下を移動しながら聞いているので、多分全クラスの子に聞いたはずなんだけど…………


「まだ一年生なんだから、仲いい友達が出来てないだけかもしれないよ?」


 まだ見ぬ城ヶ崎をフォローする二条。


「でも、もう二学期も中盤に差し掛かってるんだぞ?色々学校行事もあっただろうし、友達がいなかったとしても名前を知っている奴が一人もいないってことは無い」


「そうかな?」


「そうだよ。二年になっても友達がいない俺が言うんだから間違いない」


「それは…………説得力があるね」


 納得させる為に言ったけど、納得されたらされたでちょっと悲しい。


「でも、何処にいるのかしら?」


 顔にハンカチを巻いて隠しているアリスさんが言う。


 何でそんな事をしているかというとアリスさんが声をかけた一年生が男女問わずに顔を赤くして一言も喋れなくなるからだ。ちなみに俺が声を掛けたときも隣に居るアリスさんを見た途端思考が停止するから顔を隠してもらっている。


「うーん、拓也くんの話を参考にすると、もしかしたらこの学校にいないんじゃないかな?もしかしてトピカ様の使いという、コルクくんの情報が間違っているのかも知れないよ?」


 アリスさんと同じ理由で顔を隠している二条がそんな事を言い出した。


「いや…………さすがにそれはないだろ…………ないよな?」


 ちょっと心配になってきた。


 コルクって結構適当な奴だし。


「いや、まだ特進クラスにいるって可能性もあるから…………でもその場合は探しに行けないな」


 特進クラスがある校舎は一般クラスの生徒立ち入り禁止だ。どうしよう?


「…………そうだ!二条、校長に聞けないか?校長なら確実に城ヶ崎が何処のクラスなのか、そもそもこの学校にいるのかが分かるはずだろ?」


 正直校長みたいな偉い人に頼み事をしに行くなんて緊張するし怒られたくないから嫌だけど、何故か二条に絶対服従の校長だ。二条と行けば絶対教えてくれるはず。


「なるほど、そうだね。校長に聞きに行こうか」


 二条が納得してくれたので、俺たちは一年の教室前を後にして、校長室に向かった。




「何だね、何のようだ…………って、坊ちゃんじゃないですか!申し訳ございません、気が付かなくて!ささっ、お入りくだせぇ。今茶を入れますんで!」


 校長室に入って来た俺に対して高圧的な態度だった校長だったけど、続いて入って来た二条を見て途端に態度を変えた。


 てかなんでちょっと江戸っ子ぽくなるんだよ。


 ソファーに座った俺たちの元に、高級紅茶を自ら入れてきた校長が戻ってくる。ちなみに一杯だけだ。俺とアリスさんの分はない。


「こちら、スリランカから直接取り寄せた紅茶です。どうぞ……………それで、本日はどんな要件でございやすか?」


 校長が差出した紅茶の匂いを優雅に一嗅ぎする二条。


「ふむ…………これはいいお茶だね。ありがとう。それで今日は人を探しているんだ。この学校に通っているはずの一年生、城ヶ崎道夫くんなんだけど」


「城ヶ崎道夫ですか?……おーい!坂下くん!生徒名簿を持って来てくれ!…………えっと、それでその子がどうかしたんでしょうか?もしかして二条の坊ちゃんに舐めた態度を取ったとかでしょうか?…………絞めますか?」


 隣の部屋で待機しているらしい秘書さんに指示を出す校長。絞めますかって何だよ。怖いよ。


「いや、探しているだけなんだ」


「そうでございやすか……」


「校長、生徒名簿です」


 ノックの音がして、パンツスーツを着た仕事が出来そうな女性が生徒名簿を片手に入ってきた。


 校長は受け取るなり、すぐに中身を確認し始めた。


「一年の城ヶ崎道夫でしたね…………えーと……あ、いました」


「本当かい?」


「はい、彼は一年一組の生徒ですね」


「一年一組?」


 てことは、特進クラスじゃなくて一般クラスって事か。でも、だとしたらなんで見つからなかった?


 二条が代わりに聞いてくれた。


「さっき一年の教室を探したんだけど、誰も彼のことを知らないって言っていたんだ。何故だろうか?」


「わざわざ坊ちゃんが探しに行かなくても、言って頂ければ誰かに探させますのに……おい、坂下くん。一年一組の担任を呼んでくれ」


「はい。少々お待ちください」


 そういって部屋を出て行く秘書の坂下さん。


 なんか話がトントン拍子で進んでいくな。


 少し待てば、中年のおじさん教員が入ってくる。確か歴史の教師の谷村先生だったっけ。部屋の中にいる俺たちを見ると、一瞬怪訝そうな顔をする。まぁ気持ちは分かる。普通校長室に生徒がいることなんてないもんな。


「一年一組の担任の山村ですが…………話とは何でしょうか?」


 ごめん、名前違ったわ。


 てか滅茶苦茶ビクビクしてんな、山村先生。校長に呼び出されるなんて滅多にない事なんだろうか。


「君のクラスに、城ヶ崎道夫くんという生徒がいるね?」


 校長が二条に向ける顔ではなく、いつもの()()()で問いかける。


 すると山村先生の様子が一気に変わった。驚愕に満ちた表情をしたかと思えば青ざめて、そしてなぜか土下座を始めた。


「す、すいません!私も何度か家庭訪問をして学校に来てくれないかと言っているのですが、いまだ顔も見せてはくれず…………」


 物凄い勢いで何かしらの言い訳を言い始めた山村先生。何の話だ?


「山村くん、最初から話してくれないか?城ヶ崎くんは、学校に来ていないのかね?」


 山村先生は顔面蒼白で、すべてが終わったかのような顔だ。


「…………はい。入学式に来たっきり、引きこもっていて学校に来ていないです」


 なんと、そうだったのか。だから一年の生徒に聞いても誰も知らない訳だ。


 てかそれでもビビりすぎだろ。入学式の次の日から不登校なんて絶対先生のせいじゃないだろうし。


 しかし、これは一筋縄じゃいかない感じがするぞ。


「城ヶ崎くんの自宅が何処だか分かると嬉しいけど……」


「そうだね…………校長、城ヶ崎くんの自宅の場所を知りたいな」


 俺の呟きを拾った二条が校長にお願いする。


 すると校長は、


「へい!かしこまりやした!山村くん、彼らを城ヶ崎くんの自宅に案内したまえ」


「は、はい…………え?」


 よく分かっていないのに二条の言う通りに山村先生に命じる校長。命じられた山村先生は面食らっている。


 え、今、へいって言わなかった?って顔だ。


 まぁ、話が早くて助かるけど。


 

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