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第4話 タクヤはちからをてにいれた!

「お前は何の眷属だ?」


 飛んできた槍を掌で止めた綺麗なお姉さんに何かわけわからんことを聞かれています。


「………えっと」


 どう答えたらいいんだろうか。分からないことが多すぎる。


 いつの間にかお姉さんは槍を槍投げ選手の様に構えている。


「問いを変えよう。死ぬ準備は出来たか?」

 

 そう問いつつお姉さんの右手が少し後ろに下がる。発射準備完了です。


「ちょ、ちょっと待ってください!眷属って言うのがよくわからないんです!そもそも、ここが何処なのかも………学校から家に帰る途中に、急に穴が空いて、そこに落ちたんです。だから、現状、なにもかも分かってないんです!」


「つまりあれか?貴様は眷属でもなく神自身でもなく、偶然この空間に紛れ込んだ人間というわけか?」


「はい、そうです」


「その話を信じろと?」


「どうやったら信じてもらえますか?」


 お姉さんは鼻で笑った。


「ふんっ、そんな話信じるわけ無いだろう。人の身でこの空間に存在することは無理だし、その槍は神の力を持つものしか使えん。どうせつくなら、もっとマシな嘘をつくべきだったな」


 そういって槍を俺に投げようとする。


「待った!待った待った!嘘じゃないです!信じてください!それに、ここに来る途中で戦場に沢山の人がいるのを見ました!ほら、その槍だって、亡くなった人の横に落ちていたのを借りてきたんです!」


 横に落ちていた訳ではなく、思いっきり腹に刺さっていたけどな。


 お姉さんは呆れるように言う。


「貴様、もしや私のことを知らないのか?」


「はい………えっと、どちら様でしょうか?」


「………私は空間の神トピカだ」


「トピカさんですか、はい」


「………」


「………」


「………そうか、本当に私を知らないのか………」


 そういってトピカさんは槍を掲げていた腕を降ろした。おっと、俺を殺そうとするのは辞めてくれたのか?


「まあでも、とりあえず殺しておくか」


 そう何気なしに言うとトピカさんはラグビーボールを投げるように槍を俺に投げてくる。


 とりあえずってなんだよ!


 俺が反応する前に、槍は致命的な距離まで近づいてきていた。やばい、死ぬ!


「うぁぁぁ!…………ぁ?」




 ………生きてる。


 俺は生きてるよな?体の何処を見ても槍は刺さっていない。


 槍は何処に行ったかと思ったら、俺の股の間に刺さっていた。


 何、そこが定位置なの?


 


 マジでびびった。問答無用は酷すぎるって。


 俺に槍が刺さらなかったのをみて、今までほとんど表情が変わらなかったトピカさんは初めて表情を変えた。


「何だと?避けた?」


 理解し難いものを見たという様に、眉間に皺を寄せている。


「いや、俺は避けてないですし、トピカさんが外しただけじゃ………」


 次の瞬間、トピカさんは大きく目を見開く。


 やばい、余計な事言ったせいで怒らせた。


「す、すいません!俺が避けました!トピカさんが外す訳無いじゃないですか!本当に偶然、偶然当たらなかっただけで、トピカさんの投槍は完璧でしたよ!マジ甲子園狙えますって!」


「…………」


 トピカさんは俺のヨイショを無視すると、次の瞬間、消えた。


「え?」


 違う。消えたんじゃない。消えたと同時に同じ場所に現れた。姿がブレたといった方が正しいか。


 トピカさんの手には、見覚えのある槍が握られている。


 俺はすぐに自分の股ぐらを見る。


 嘘だろ。そこにあった槍がない。今、何が起きた?


 絶賛混乱中の俺を放置してトピカさんは槍を眺めながら笑っている。ちょっと狂気を感じさせるような笑顔で怖い。


「ケラウノス……久しぶりに見たが…………こんな舐めた真似をするなんて、偉くなったものだな」


 ケラウノスって、槍の名前か?ケラウノスは心なしか震えているように見える。


「意思を持つ神器……ははっ、欠陥品だな」


 意思を持つ?って事は、さっきトピカさんに投げられて、完全に俺に刺さるコースだったのに、股の下に突き刺さったのは、ケラウノスが避けてくれたって事?


 ああそうか、トピカさんの言ってた避けたってのは、俺に言ったんじゃ無くてケラウノスに言ったのか。


 なんだよ、ケラウノス、すごいいい奴じゃないか。偶然持ってきただけの俺を助けてくれるなんて、これからも是非お付き合いを続けていきたー


 ボキッ!


 え?



 

「ふん、調子に乗るなよ」


 そういって二つに分かれたケラウノスを地面に投げ捨てるトピカさん。




 折られたんですけど。愛着が湧いた瞬間に折られたんですけど。


 投げ捨てられて足下に転がってきたケラウノスだったものを拾う。


 悲しい。


 この何一つ理解出来ない空間で、初めて頼りになる存在だと思ったのに。


「おい、お前」


 俺はビクッと震えてしまう。ケラウノスは壊された。もう俺をこのクレイジーサイコガールから守ってくれるものはなにもない。


「な、何でしょうか」


「お前、名前はタクヤといったな。ケラウノスを何処で手に入れた」


「…………だからさっき拾ったんですよ。フェデリコさんっていう人が使ってた槍です」


「フェデリコ?フェデリコ・サルザンドか」


「知っているんですか?」


「ああ、奴は占いの神の眷属だ。占いの神の持つ、相手の事柄が分かる能力は眷属を探す上で便利だからな。奴を殺して力を奪うつもりだった」


 トピカさん、殺意高すぎだろ。『殺す』って言うのが選択肢の一番上にあるじゃんか。何処の蛮族だよ。そしてサウザントさんはどっちにしろ死ぬ運命だったのか、滅茶苦茶可哀想な。


「お前、フェデリコを殺したな?」


 おっと、答えずらい質問が来たぞ。ここは素直に頷いておくべきか?


「えっと、はい。まあ事故みたいなもので殺したかった訳じゃ無いですけど」


 しっかりと言い訳も添える。


 しかし、以外と会話が続いているぞ。このまま会話を続けていたら、死を回避出来るんじゃないだろうか。


「そうか、フェデリコを殺したのか…………だったらやはりお前を殺すべきだな」


「ま、待ってください。その、殺す以外の解決策っていうものはないのでしょうか?なんで俺を殺そうとするんですか?」


 トピカさんは面倒くさそうに答える。


「私は眷属を殺すためにわざわざこの空間を作ったんだ。だからお前を殺す。例えお前が眷属という自覚が無くてもな。それにフェデリコの占いの神の力が欲しいと言っただろう?」


「俺が眷属だっていうのは,多分何かの勘違いだと思います。全くピンと来ていないんですけど。眷属って一体何なんでしょうか」


「眷属とは神の力を持つものだ。そしてお前は眷属に間違いない。この空間は時の概念がないから人が生きることが出来ない。生きるというのは時間を伴うものだからな。もし人間がこの空間に紛れ込んだとしたら、時の概念の関係ない”ただの物”となるだろう」


 つまり死ぬってことか。


「貴様が眷属になったのはフェデリコを殺したからだろう。神の力は消えない。眷属を殺せばその眷属が持っていた神の力が殺したものに移動する」


 ………やっぱりフェデリコさんは俺が殺したってことになってるのね。そんで眷属の力が譲渡したんだろう。フェデリコさん、本当にすみませんでした。


 でもまあ、プラスに考えよう。トピカさんの話だと、ここでは人のままだと死んでしまうっていう話じゃないか。フェデリコさんが力をくれたおかげで、俺は今生きていられるんだ。


 フェデリコさん、ありがとう。この恩は絶対に忘れません。死に際に頼んだぞって言われたけど、わかりました。自分がやれるだけ頑張ります。


 何を頼まれたか忘れたけど。


「しかし、そうか…………それもありだ…………」


 目の前でトピカさんがブツブツと独り言を呟き始めた。トピカさんの目が怪しく光った。なんか嫌な予感がするぞ。


「タクヤ、お前は死にたくないのか?」


 ほら出たよ。十中十厄介事じゃないか。


「そりゃあ、まあ」


「じゃあ私の代わりに眷属を殺してこい」


「無理です」


 なんでそうなる。


「無理ではない。貴様は神の力を手に入れた。その力をうまく使えば眷属を殺せるだろう。殺せば力を奪える。そうして力をためて眷属を全部殺せ」


「いや、そんな殺すだなんて一般人の俺には無理ですよ」


「フェデリコ・サルザンドを殺したのだろう」


「だからあれは事故で、自発的に殺した訳じゃあ…………あれ、力を手に入れたって、もしかしてフェデリコさんの相手の事柄が分かる能力を、俺が使えるって事ですか?」


 いつの間にか超能力手に入れていたみたい。


「そういう事だ。試しに私に向かってやってみろ」


「やってみろって言われても………」


 どうやればいいんだよ。あ、そういえばフェデリコさんは俺と目があった瞬間、俺の名前分かったぽかったな。あれは能力を使っていたのか。


 じゃあそれをヒントに、


「………」


「………」


 トピカさんを見つめる。この人まじで美人だな。こんな美人、芸能人とかの比じゃ無いと思う。もはや芸術品の域に達しているよ。


 とか何とか考えながら、十秒ほど見つめてみたが、何も起こらなかった。


 しまいには、


「何見てんだ貴様、殺すぞ」


 というありがたい神のお言葉を頂戴しました。


「………出来ないです」


「そうか、まあ出来なくても問題ない。貴様に眷属の力があるのは、今ここで生きている事が証明しているからな」


「でも、使えないんじゃその眷属さんを殺すことなんて無理なんじゃないですか」


「細かいやつだな。さっさと戻って眷属共を殺してこい。眷属が何処にいるかは、後で私の眷属を送るからそいつに聞け」


「いやいや………」


 本当にこのクレイジーサイコは勝手すぎるって。


 そんな事を思っているとトピカさんがため息をついて、


「…………分かった。貴様がどうしても不安だというなら、空間の神の力をやろう」


 そう言うと突然、トピカさんが消えた。


 まただ。消えたと思った瞬間、俺の目の前に現れた。瞬間移動してる?


「空間の神トピカが貴様、平塚拓也を空間の神の眷属に命じる。貴様は私の手となり足となり、その全てを捧げること」


 トピカさんは言い終わるやいなや俺の後頭部をつかむ。そして反応出来ずに無抵抗な俺に顔を近づけて…………

 

 







 その柔らかい感触を俺は一生忘れないと誓った。


 そうして俺は気を失った。

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