01 別れてくれないからと殺されました
主人公 シャルロッテ・クロイツェル
夫 リュシアン・クロイツェル
侍女 エレノア
私、シャルロッテ・グランチェスターと。
リュシアン・クロイツェル。
2人は、幼い頃に親が決めた婚約者だった。
疑うことなく、婚約し、結婚した。
親が決めた相手だったけど、私は本当にリュシアンのことを愛していた。
だから、まさか、こんなことになるとは…
ルカ歴1999年9月9日。
いつものようにお茶会に出かけて帰宅すると、リュシアンが玄関で待っていた。
「あら、リュシアン。どうしたの?」
そう言うと、突然、剣で斬りつけられた。
驚いて逃げようと思ったのに、足が動かない。
「別れてくれって言ったのに、どうして別れてくれないんだ!」
そう言われて、混乱した。
リュシアンから、別れてくれなんて、1度だって言われていない。
「な、なにを…?」
訳が分かず、リュシアンを見る。
と、見覚えのある女性がリュシアンにしなだれかかった。
「早く、殺してしまってよ。私のことを愛しているんでしょ?」
そう言っている。
ますます、訳が分からない。
「可哀そうなシャルロッテ。リュシアンがあなたと結婚したのは、あなたの財産が目当てだったの。あなたの両親が亡くなって、財産を相続した今、あなたは用なしなのよ」
その女が、そう言った。
たしかに相続はしたけど。
そうか。
私が死んだら、私のものはリュシアンのものになるから…
「だから、別れてくれって言ったのに」
そう言って、リュシアンが剣を振り下ろした。
その瞬間、私は死ぬんだなと思った。
それにしても、私は、別れてほしいなんて、1度も言われていないのだけれど…
**********
瞼に光が当たって、重い瞼を持ち上げた。
天国についたのだろうか。
そう思って体を起こすと、ベッドの上にいた。
どういうことだろう。
自分の体を確認してみたけど、どこも切れていないし、血も出ていない。
死ぬと、傷が無くなるのかしら。
キョロキョロとあたりを見回したけど。
なんとなく、住んでいた家に似ている。
天国というのは、一面のお花畑があって、みたいなのを想像していたから。
ちょっとビックリだ。
「おはようございます、奥様」
そう声を掛けられて、驚いた。
天国にも侍女がいるの?
と、思ったけど。
それは、生前、仕えていてくれた侍女だった。
もしかして、この子まで殺されてしまったんだろうか。
そんなことを考えていたら「本日はこちらのドレスでよろしいですか?」と服を持ってきてくれた。
「え?…あ、ええ。それで…」
ん?
なんかおかしい。
「ねえ、エレノア。私、死んでる?」
「…変な夢でもご覧になりましたか?」
エレノアが変な顔をした。
どうやら、死んではいないらしい。
どういうこと?
服を着替えて、カレンダーを見た。
「エレノア。今日は何日だったかしら?」
私が訪ねると、「ルカ歴1998年9月9日ですよ」と言われた。
1998年…あの日の、1年前。
リュシアンと結婚して、間もない頃だ。
「エレノア、リュシアンは?」
そう尋ねると、エレノアは益々、変な顔をする。
「朝、お見送りになられたではありませんか。それで、二度寝されるとおっしゃって」
そうだったっけ?
2年前のことなんて覚えてない。
そう。
どういうわけか、2年前に戻ってきたようだ。
これはきっと、神様がくれたチャンスに違いない。
『別れてくれって言ったのに』と言った、リュシアンの声が耳に蘇る。
別れてくれなんて、言われた記憶がない。
でも、言えなかっただけで、思っていたのかもしれない。
だったら、そうなのだったら。
別れてやろうじゃないの!
殺されるくらいなら、別れたほうがいい。
私はずっと、リュシアンのことを愛していたのに。
リュシアンは、おそらく、あの女と…
そう思ったら、惨めな気分になる。
首を振って、その気分を吹き飛ばした。
殺される前に、別れる!
それしかない。




