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敏感な彼女と鈍感な僕  作者: 唯乃 猫


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0.プロローグ

 僕は僕である。


 それ以外の何者でも無いし、何者になりたいとも思った事はない。

 幼い頃からそうだ。両親にたくさんの愛を注いで育てて貰ったし、偶然にも環境にはとても恵まれていた。


 しかし恵まれていたからと言って、恵まれた人間がそこにいるだけでその子がどう育つかはその子次第だと僕は思う。


 まともに学校に通っても勉学は身に付かず、習い事をしてもこれまた身に付かず、挙げ句の果てにはそんな僕を見て、申し訳無さそうな両親の顔を見る始末だ。

 そんな顔をさせたくないのならもっと頑張れよと思う人も沢山いるだろう。


 僕だってそうだ、自分自身に対してそう感じている。

 でもこれが僕なりの頑張った形で、努力の結晶なのだ。

 その結晶が他の人の結晶より少し小さく、少し脆く、少し儚く、少し濁った色をしているだけなのだ。


 みんなも経験したことがあるのではないだろうか。

 自分の努力が、努力だと認められずに無に還された事が。

 それが勉学しかりスポーツであったとしてもだ。


 幼い僕はこの事に対して、きっと憤りを感じていたと思う。

 それもそうだ、他人の努力なんて他人が測り得るモノじゃない。

 それでも大人になった僕はそう思わなくなった。


 否、そう感じられなくなったといった方が正しいのかもしれない。

 どうやら僕は、自分の事に対して鈍感に、興味を抱けなくなってしまったんだと思う。

 「かもしれない」「そう思う」などと断定出来ないのもきっとそのせいだと自分の事ながら推測する。

 

 決してネガティブな訳ではない。自分の事を卑下している訳でも無いし、反して過大評価さえもしていないと思う。

 ただ有りの儘を、僕から見えた僕を、他人から見えた僕を、世界から見えた僕を、僕なりにそう評価してしまっているだけのことだ。


 ああ、また空気が読めずに僕の一人語りをしてしまった。

   

 「初めまして。僕の名前は、野田 犬(の だ けん)と申します。

犬の様に人懐っこく、皆んなに愛されるようにとの想いが込められているそうです。名は体を表すそうですが、だからか僕はお世辞にも高身長とも言えず、童顔で、残念ながら男らしさなんてモノは欠片も持ち合わせていません」


 こんな僕が、とある女性との邂逅をキッカケに

色褪せた結晶に色を取り戻していく。

          

 そんなお話。



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