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異世界戦記 ~ここで俺は最強に至る~  作者: かげ2500
第5章 魔王討伐編

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159話 討伐…?

 魔王の右肩の傷は、一瞬で塞がれた。


 肉が蠢き、まるで時間を巻き戻すように元の形へと戻っていく。

 その異常な光景を目の当たりにしながら、ルミエラは思考を巡らせた。


(魔王に残されている加護は、伝心の加護と巨大化の加護のはず……)

(だが、今の再生は何だ!?)


 魔王の体組織があまりに素早く回復する様子は、ただの自然治癒力では到底説明がつかない。

 明らかに加護の力が関与している。


 ルミエラはある可能性に賭けることを決意した。


「おい! 魔王!」


 ルミエラは 叫んだ。


「お前は一体、どんな加護を持っているんだ!?」


 魔王ヴァルグ・アシュヴァル――先ほど涙を流し、死を懇願した。


 もし、あのときのように、瞬間だけでも理性が戻るなら――


「お前は……そのままでいいのか!」


 ルミエラはさらに声を張り上げた。


「身体を乗っ取られたまま、勝手なことさせてていいのか!!」


 ――しかし。


 ルミエラの叫びは、まるで魔王には届いていないかのようだった。


 魔王は答えなかった。


 何の反応も示さぬまま、ゆっくりと巨大な足を持ち上げる。


 その足の裏に映し出されているのは――眼下の兵士たちだった。


「う……あ……」


 兵士たちは 震えながら後退る。


 ――だが、彼らには逃げ場がなかった。


 無数の魔獣の軍勢が、すでに退路を塞いでいた。


 前にも、後ろにも、横にも……ただ絶望だけが広がる。


「……嫌だ……俺は……死にたくない……」


 膝をついた兵士の一人が、震える声で呟く。


 ――死が、降り注ごうとしていた。


(どうする……!?)


 ルミエラは必死に策を巡らせる。


(あたしの魔法ではダメージが入らない……攻撃すれば吸収される……!)


(……でも、このままじゃ……!!)


 悩んでいる暇はない。


 ルミエラは覚悟を決め、杖を振り上げた。


「――仕方ない!!」


 彼女は 全力の魔法を放とうとする。


 その時――


 空を切り裂く破壊音が響いた。


 ――ドンッ!!


「カイル君!」


 ルミエラは即座に振り返る。


 超遠距離からの弾丸が、魔王の太ももを撃ち抜いていた。


 空を裂く鋭い音とともに、銃弾が魔王の巨大な身体を抉り取る。

 続けざまに飛来する弾丸が、魔王の体の端々を撃ち抜き、損傷を広げていく。


 ルミエラはその光景を見て、一つの疑問を抱いた。


(なぜ……カイルは身体の端ばかり狙っているんだ……?)


 単なる偶然ではない。遠距離からの攻撃はすべて意図的に端の部位を狙っている。


(……まさか、端に行けば行くほど魔王の防御力が脆くなっているのか……!?)


 ルミエラの仮説を証明するように、魔王の巨大な体の“端”に命中した弾丸は 確実に肉を抉り取り、血を噴き出させていた。


(……やっぱり!)


 魔王の巨大な体は一見すると強固に見えるが、 面積が広がれば広がるほど密度が薄まり、防御力が落ちている。

 つまり、 端に集中攻撃すれば、よりダメージを与えられるということだ。


 ルミエラの唇が、ゆっくりと弧を描く。


「なら……! あたしにも分があるね!」


 ルミエラは即座に魔法を練り上げる。


 土元素を凝縮し、密度を極限まで高め、空気抵抗を極限まで削ぎ落とす。

 その形状は鋭く尖った弾丸状の魔弾だった。


 それは、まるで――


(……カイル君がよく使ってる魔法みたいだねぇ。)


 無意識にルミエラは、弟子の戦い方を模倣していた。

 意識したわけではない。だが、最適解を導き出した結果、たどり着いた形が奇しくもカイルの魔法と同じだった。


「――行くよ。」


 魔王の体が再生に集中している今こそが唯一の隙。


 狙いを定めるのは脛だ。


 今までは足全体を攻撃しようとしていたために効果が薄れ、魔力を吸収されていた。

 だが、脆くなった「端」の部分なら 魔王の吸収力を凌駕するダメージを与えられるはず。


「ストーン・ショット!!」


 魔法の詠唱とともに超高密度の魔弾が放たれた。


 轟音が響く。


 そして、次の瞬間――


 魔王の脛が抉られた。


 大穴が空いた魔王の右足は 重心を失い、巨体が崩れ落ちる。


「よっし……!」


 ルミエラは確かな手応えを感じた。


 魔王の巨大な体が、ドスンと地面を揺るがせながら倒れる。


(もうすぐだ……! もうすぐ決着をつける!!)


 ルミエラは 勢いよく魔王の身体を駆け上がる。


 目指すは心臓――


 そこに渾身の一撃を叩き込めば、魔王は終わる!


 ――だが、彼女は 異様な光景を目撃した。


 魔王の胸部近くに、何かがうごめいている。


「あれは……!?」


 ルミエラは警戒を強めながら、その物体へと近づく。


「……これは……!?」


 ルミエラの目の前にあったのは――


 カイルが撃ち落としたはずの魔王の右腕。


 だが、それは ただの腕ではなかった。


 元の魔王のサイズのまま、巨大化した魔王の体に接合するように貼りついていた。

 まるで意思を持っているかのように、もぞもぞと動いている。


「まさか……!!」


 ルミエラは直感した。


 これこそが 魔王の最後の加護を発動している正体だった。

 魔王の身体から切り離された部位が、自律的に動き、魔王の再生を促進する肉片に成り代わる加護。


 ルミエラは目を見開いた。


「これは……まずいね……!!」


「が……ががが……がががががが」


 魔王が異様な呻き声を上げる。


 そして、魔王の右腕が、ずるりと音を立てて胸部から剥がれ落ち――


 ルミエラへと襲い掛かる!!


「クソッ!!本体から離れられんのかよ!」


 ルミエラは反射的に魔法で迎撃する。


 しかし――


 魔王の右腕は魔法を吸収し、さらにルミエラに迫る。


「こいつ……!!」


 ルミエラは即座に判断する。


(こいつも魔法を吸収するのか!)


 彼女は咄嗟に身体を低くし、地面を蹴る。


 魔王の右腕が鋭く空を切る。


 間一髪で回避したルミエラは再び杖を構える。


「本当に面倒な相手だよ……!!」


 しかし、魔王の右腕は、まるで意志を持つかのようにどこかへ這い去っていった。


 ルミエラは地面を這うその腕を不気味に思いながらも、今最優先すべきは魔王本体の討伐だと判断し、それ以上追わなかった。


(いくら再生する加護があろうと、心臓を破壊すれば生命活動は止まる……。再生なんて、もう怖くない。)


 そう自分に言い聞かせると、彼女は魔王の心臓部分に超至近距離で魔法を放った。


 分厚い肉が爆ぜ、鮮血が噴き出す。


 開いた大穴の向こう側には、むき出しになった心臓が、まるで鼓動を悲鳴のように鳴り響かせながらドクドクと激しく脈打っていた。


(――これで終わる。)


 ルミエラは最後の魔法を放つべく、静かに唱えた。


「――ストーン・ショット。」


 形成された鋭利な岩の弾丸が、迷いなく魔王の心臓へと吸い込まれていく。


 ドスンッ!!!


 正確に、確実に、魔王の心臓を貫いた。


 ――鼓動が止まる。


 噴き出す血が次第に勢いを失い、 魔王の巨大な体が急速に縮小していく。


(これで、ようやく……)


 ルミエラは加護の影響が完全に消失したことを実感し、深く息を吐いた。


「……終わった……」


 彼女はがくりと膝をつき、全身の力が一気に抜ける。


 戦いの終焉を迎えた安堵が、身体をどっしりと重くさせた。


 ――そして、ルミエラは拳を突き上げた。


「うぉおおおおおおおおおおおお!!!!!」


 彼女の勝利の咆哮が、戦場に轟く。


 その叫びに呼応するように、 兵士や冒険者たちが次々と歓喜の雄叫びを上げた。


「やったぞぉぉぉ!!!」

「魔王を討ち取ったぞ!!!」

「俺たちは……勝ったんだ!!!」


 歓喜の波が戦場全体を包み込んでいく。


 ルミエラは、その光景を目に焼き付けながら、静かに目を閉じた。


 しかし、脅威はまだ去っていなかった――。

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