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異世界戦記 ~ここで俺は最強に至る~  作者: かげ2500
第4章 冒険者編 

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135話 打ち明け

「な?あたしの言ったとおりだろ!?急にこんなんなっちまったんだ!」


 騒がしい声で話しているのはルミエラだ。

 彼女は俺の異常事態に気づき、急いでアルマを連れてきてくれた。どうやらアルマの勤務する学園はカーミラの近くにある大都市に位置しており、距離的にはそこまで遠くなかったらしい。


 さらに運が良かったのは、ちょうど昼休みの時間だったことだ。ルミエラが昼食をとっていたアルマを強引に連れ出し、ここまで急行してくれたようだ。


「本当だわ…心臓部分に強力な結界魔法が施されている。こんなもの、一体どうやったら…?いや、そもそも誰がこんなことを?」


 ルミエラが騒ぐ中、俺の胸に手を当て、魔力を込めながら慎重に調べているアルマは、何やら興味深げな表情を浮かべている。それがかえって不安を煽る。


「カイル。あなた、一体何をしたの?」


 アルマの声は冷静だったが、含まれた鋭さに俺は思わず息を呑む。

 心当たりはある。『魂の回廊』――あの謎の空間で出会った男だ。俺の中に宿るもう一つの魂。いや、もう一つどころか、俺を含めてこの身体には三つの魂が宿っている。

 その事実を知る俺は、あの男がこの結界魔法の原因である可能性が極めて高いと感じていた。


 だが、なぜこんなことを?何が目的なのか?思考を巡らせるが、答えは見つからない。


 そして、次に浮かんだのは別の疑問だった。このことをルミエラとアルマに話すべきなのか――それとも黙っているべきなのか?


 俺は、エルドリックの言葉を思い出していた。まだ彼のもとで魔法を学んでいた頃、彼は俺に警告した。


「自分が転生者であることは誰にも話すな。魂が複数宿っているなど、もっと話してはいけない。そんな事実を知ったら、どんな人間だってお前を異端と見るだろう。」


 その理由は簡単だった。転生なんてものは、この世界でも前世でも伝説や御伽噺の中だけの話だ。誰もが「そんなことあるわけがない」と信じて疑わない。そして、この世界において、魂の概念はもっと厳格だ。


 魂は一つの肉体に一つしか存在しない。それがこの世界の絶対的な常識だ。

 しかし、俺はそれをも覆している。


 転生者であり、複数の魂の保持者。俺はこの世界で異端そのものだ。それを知られたら、どんな反応をされるか分からない。


 だが――。


 ルミエラとアルマは、エルドリックとは違うかもしれない。彼女たちの知識は、あの師匠さえも上回っている可能性がある。そして、彼女たちならこの奇妙な現象について何かを知っているかもしれない。


 俺は悩んだ末に決断した。すべてを打ち明けることにしたのだ。


「アルマさん、ルミエラさん…。聞いてほしいことがあります。」


 俺は深呼吸をして、これまで隠していた自分の秘密を語り始めた。


「俺は…別の世界で死んで、この世界で生まれ変わった…いわゆる転生者です。前世の記憶を持っています。そして、それだけじゃありません。この『カイル・ブラックウッド』の身体には、俺以外にも二つの魂が宿っています。」


 言いながら、胸が苦しくなる。彼女たちがどう反応するのか、正直怖かった。だが、ここで黙っているわけにはいかない。


「そして、今回の結界魔法の原因は、おそらくその『もう一つの魂』にあります。俺は訓練中に意識を失い、その魂と会話しました。そのとき…何かをされたのかもしれません。」


 静寂が降りた。俺の告白を受け、アルマとルミエラは言葉を失っていた。


 ルミエラが真っ先に反応した。


「…つまり、カイル君の中には『誰か別の人』が二人もいるってこと?それってどういうことなの?」


 俺はうなずきながら、ルミエラの問いに答える。


「正確には、『魂の回廊』という空間が俺の中にあって、そこに俺以外の二つの魂がいるんです。片方は…多分この身体の本来の持ち主なんですが、今の俺の言動に干渉してくることはないんです。でも、もう片方…今回会った魂が、おそらく俺の心臓に魔法を施している原因だと思います。」


 アルマが目を細め、じっと考え込む。


「…魂が複数存在する、ね。そんな事例、聞いたこともないわ。」


「…」


 アルマは俺を見据え、慎重に言葉を選びながら話し始めた。


「この世界には、確かに『分離した魂』や『不完全な魂』の伝説や御伽噺がいくつもある。でも、三つも魂が一つの身体に宿るなんて、正直聞いたことがないわ。ただ、それだけ魂があるなら、それぞれの魂が持つ魔力や力も相当なものだと考えられるわね。」


「でも、それってカイル君が危ないんじゃないの?」


 ルミエラが不安そうに口を挟む。


「ええ、危険性は十分にある。特に、その魂が意図的に本当にカイルの心臓に干渉しているとしたらね。でも…どうやらその魂はカイルを殺そうとはしていないみたい。」


「どうしてそう思うんですか?」


 俺が尋ねると、アルマは冷静に答えた。


「心臓に結界魔法を勝手に張れるくらい自由に動けるなら…カイル、あなたはすでに殺されているわ。でも、事実あなたは生きている。つまり、その魂はカイルの身体を守るために、細心の注意を払って結界魔法を設置していると思う。」


「守る…?」


 俺はアルマの言葉に耳を疑った。俺の命を狙っているのではなく、守るために結界を張った?一体どういうことだ…?


 アルマは結論を急がず、慎重に調査を進める必要があると話した。そして、解決の糸口を探るため、彼女の知識を総動員してくれると言った。


 俺は一抹の不安を抱えながらも、二人の助けを信じることにした。


「とりあえず、カイルはしばらく魔法の使用を禁止するわ。今の未知の状態で魔法を使用するとどうなるか分からない。」


 アルマはそう告げると、俺を見据えながら続けた。


「私は学園に早退を報告してくるわ。その間、ここで待っていて。いいわね?」


 俺がうなずくと、アルマはすぐに準備を整え、魔法で空を飛び去っていった。その後、静寂が降りた部屋に残されたのは俺とルミエラだけだった。


 室内には微妙な空気が漂う。

 俺の正体を知ったことで、ルミエラが気味悪がっているのではないかと思うと、胸がざわついた。やっぱり…無理もないだろう。

 転生者だとか、魂が三つも宿っているなんて、普通の人間からすれば異常すぎる話だ。


 少しでもこの気まずい空気を打破しようと、俺は席を立ち、外に出ることを決めた。


「俺…ちょっと外に出てますね。」


 そう言い残し、部屋を出ようとしたそのとき――。


「待って。」


 ルミエラの静止の声が、俺の足を止めた。


 俺は振り返り、彼女を見つめる。いつもの気楽そうな表情ではない。真剣な目つきで俺を見据える彼女に、俺は思わず息を飲んだ。


 ルミエラは少しの間ためらうようにしてから、ゆっくりと口を開いた。


「…カイル君って前世の記憶も持ってる…って話だったよね。」


 その質問に、俺は背筋が凍るような感覚を覚えた。


「は、はい。」


 恐る恐る答えると、ルミエラは軽くうなずいた。そして、次に発した言葉が、俺の予想を完全に裏切るものだった。


「ということは…」


 彼女の顔が一瞬険しくなる。そして——


「あんた精神年齢何歳だよ!!」


「は?」


 予想外すぎる質問に、俺は困惑するしかなかった。


「だってさ、この間、『もうすぐ13歳』って言ってたわよね!?なのにその達観した性格ってどういうことなの!?」


「え、えぇ…まぁ…。」


 突然の矢継ぎ早な追及にたじろぎながらも、俺は仕方なく答える。


「前世の記憶では、ちょうど20歳くらいでしたけど…。」


 その瞬間、ルミエラの目がカッと見開かれた。そして、天を仰ぎながら叫ぶ。


「33じゃねぇかーーー!!!!!」


「え、いや…まぁ、計算上はそうなりますけど…。」


 俺が半ば呆れながら訂正すると、ルミエラは頭を抱えてその場に倒れ込むように座り込んだ。


「はぁ…なんでだよ…!好きになりかけてたのに…!見た目は好みだったのに!年齢もストライクゾーンだったのに!!」


「は?」


 突然の告白めいた発言に、俺は思わず聞き返してしまう。


 ルミエラはその声を無視して、地面をバンバン叩きながら子供のように駄々をこね始めた。


「なんで転生者なんだよぉぉ!!くそぉぉぉ!!もう…33とかダメじゃん!おっさんじゃん!」


「お、おっさんじゃないですよ!?中身は若いんですから!」


「うるせぇやい!その『中身』っていうのがアウトなんだよぉ!」


 部屋に響き渡るルミエラの叫び声に、俺は何とも言えない複雑な感情が胸の中で渦巻いた。


 俺は、呆れ半分、少し怒りを感じながらも、ルミエラの子供じみた態度を見て、なぜかほんの少しだけ安心している自分に気づいた。


 あれだけ異常な事実を告げたのに、彼女は特に気味悪がることもなく、むしろ今まで通りの態度を崩していない。


「ルミエラさん…。」


「んだよ!?」


「…俺のこと、怖くないんですか?」


 俺がそう尋ねると、ルミエラは一瞬目を見開いた後、大きなため息をついて肩をすくめた。


「はぁ?…あんたのことなんか怖がるわけないじゃん。転生者だとか、魂がどうとか言ってるけども、今のカイル君がカイル君だってことは変わらないだろ?」


「…ルミエラさん…。」


 ルミエラの言葉は、俺の中にあった不安を一気に和らげた。彼女はバカみたいに叫んでいたが、その根底には揺るぎない信頼と親しみがあることを感じた。


「それにさ。」


「?」


「年齢差が気になるってのは、あたしの個人的な好みの話だから。別に嫌いになったとかじゃないんだから勘違いしないでよね。」


 そう言い放つルミエラの顔は、ほんの少しだけ赤らんでいるように見えた。俺はその表情を見て、思わず小さく笑ってしまった。


「なんだよその顔!」


「いえ、なんでもないです。」


 俺は少しだけ軽くなった心を抱えながら、ルミエラともう一度向き合う決意を固めた。

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