驚き過ぎて心臓止まるかと思いました。
本日最後の3話同時投稿の3話目です。
3時間で9話投稿…。少しやりすぎた気もしますが、気がついてないことにしましょう。
side ウイルン
私の主人、シヴィ様に仕えてから10ヶ月程が経とうとしている今日のこの頃。
初めてお会いした時から今日に至るまで驚くことの連続だったわ。
今日は1週間に1日のお休みの日。2、3ヶ月前なら外出してお買い物とかしてたんだけど、最近は雪が降る日も出始めているからお屋敷で温温と温まっているの。
別に、寒いのが嫌いってわけじゃ無いよ?冬生まれだし。
でも、シヴィ様の考案された『炬燵』と言う暖房器具の中に入ったら、お仕事でも無い限り出る事はまず無理ね。
お屋敷の中は、各部屋に暖房装置が付けられているけど、この炬燵は別格。これに入りながらお菓子を食べたり本を読んだりする贅沢を味わえば、抜け出す事は不可能よ。
今年も後半月ちょっとで終わってしまうと思うと、驚きを隠せないわね。
さっきも言ったけど、シヴィ様に仕えてからは驚きの連続で時間の流れが早かった。
「ちょっとウィー」
「なに?」
「いくらお休みだからってだらしないよ?」
「メイだってパジャマじゃん」
「うぐっ…わ、私は良いのよ!」
うぐっ…て、女が上げていい声じゃ無いと思うんだけど?
ってか、何その理論は。暴論すぎじゃ無い?
「いいから早く整えなさいよ!」
「ちょ、ちょっと!」
ガバっ!と炬燵から抜け出たメイに引っ張られて、なす術もなく愛しの炬燵様から引き剥がされてしまった…。私の聖域が…。
「ほらほら、着替えて!」
「そう言うメイだって」
「私も着替えるって!」
はぁ。まあ確かに、いくらお休みだからとは言え少しだらしなかったかもしれない。
服は野暮ったくて髪も整えてなく、メイクは…いつもしてないんだった。
何にしても、こんな姿をシヴィ様に見られたら今まで築き上げてきたメイド長のイメージが…。
「ほらほら、普段はしないお化粧もして」
「え?なんでよ。誰に見せるでも無いのに」
お化粧なんてする人はあまり居ないのに。
そりゃあ王城で働いてた時はしてたし、周りもみんなしてたけどさ。
ここじゃ誰もして無いじゃん。
「ナチュラルで良いからしときなさいよ。いざと言う時に化粧の仕方忘れるよ?」
「うぅーん…確かに」
普段はメイド流早着替えで着替えるけど、今日はお休みだし時間を掛けてお化粧してみよー。
お化粧辞めてからは肌の調子が良くなったんだけど、たまになら良いよね?
よし、でーきた!久々にしては上々じゃ無いかしら?髪も、普段はポニーテール一択だけど、今日は趣向を変えてナチュラルなユルフワにしてみました!
お洋服は、普段のメイド服は白と黒のモノクロでシンプルなのに対して、今日着たのはクリーム色のロングネックニットとチェック柄の濃紺のガウチョパンツ。
メイド服はロングスカートだから、たまには気分を変えて良いかなって。
そんな自分の出来栄えに満足してると、ドタドタと言う足音と共に大声が聞こえてきた。
「この屋敷の主人、シヴィ・ダンシャク殿はどちらに居られる!」
何事!?
急いで声のする方に駆けつけてみると、何故か近衛兵の鎧を着た兵士がゾロゾロと入って来てた。
「これは何の騒ぎでしょうか?」
「貴殿は?」
「執事長のドラドと申します」
「ドラド殿、この度国王陛下よりの御通達がある故に、貴殿の仕えるシヴィ殿の元へと案内を願いたい」
普通、御通達があるなら事前に知らせがあってからの筈。でなければ、出迎えの準備ができないから。
なのにいきなり、しかも国王陛下を御守りする事が仕事の近衛兵がいらっしゃるなんて…只事では無いわね。
「それではこちらに…」
サーモン執事長が先頭に立って、シヴィ様の居られる部屋に案内する。その集団の後ろを、私も一緒に着いていく。
メイド長としては我関せずなんて出来ないから。
「シヴィ様、近衛兵の方がお見えになっております」
「え?今無理だよ」
いやいや!シヴィ様!そんなこと言ってる場合じゃありませんよ!
「失礼。私は近衛隊第11班隊長のハッピーだ」
近衛隊第11班?ハッピーさん?どちらにしろ聞いた事が無い名前だけど、軍事には明るくないから知らないだけかも。
有名な、近衛国剣隊とか国盾隊なら聞いた事はあるけど…。
「国王陛下からの御通達をしに来た。扉を開けられよ」
「嫌だね」
「シヴィ様!?」
「む」
おかしい!絶対におかしい!
普段のシヴィ様なら、隠し立てがなければ素直なお方……隠し事が何かあるって事?知られてはいけない?
シヴィ様とルー姫様の関係が発展したとか?
「ならばこじ開けるまで!突入してひっ捕えよ!」
『はっ!』
顔から血の気が引いて行くのがわかった。
今の私の顔は、これ以上無いくらいに青ざめていると思う。
メキッと音がして扉がこじ開けられ、中に雪崩れ込んでいく近衛兵たちをみて、貧血で倒れそうになってしまう。
「うわぁ!やめ!やめてよ!」
「ええい!大人しくしろ!」
直後、ドカッと音がしてから何かが倒れる音が続いた。
部屋から引き摺り出されて来たのは、右の頬を腫らして気絶したシヴィ様だった。
この後は何やら食堂に行って、このお屋敷一同にことの次第を話すとかで一緒に連れられて行く。
確かに、今まで私とサーモン執事長以外の従事者を見てない気がするけど、食堂に集められてたのかな。
どんな事をしてこんな事になったのか分からないけど、まだ子供のシヴィ様を殴って気絶させ、引き摺って食堂まで連れて行くなんて…。
「ここが食堂です」
「そうか。なら、まずはあなた方から入って貰おう」
「ウィーさん」
「…はい」
サーモン執事長に促されて、私が食堂の扉を開けて中に入ろうとする。
『お誕生日、おめでとう!!』
「え?え?ええ?ええぇえ!?」
何が起こったのかわからない!
いつにも増して重く重く感じた扉を開けたら、パンと言う音が複数聞こえて来た。
「ふふふっ、驚いた?お誕生日おめでとう」
「シヴィ…様?」
まるで、いたずから成功したかのような子供らしい笑顔を見ていると、急に腰が抜けてへたり込んでしまった…。
ああ、本当に良かった…。
「ウィー!?ご、ごめん!やり過ぎたよ!」
「だから言ったじゃないですか、やり過ぎだって」
「(海外ではサプライズとして使われる手だから)平気だと思ったんだけどなぁ」
今にして思えば、メイの様子が少し変だったのも、護衛の人が出てこなかったのも頷ける。
はぁ…心臓が止まるかと思ったぁ…。
「ごめんね?こう言う刺激的なサプライズも楽しいかと思ってさ」
「お顔は平気なのですか?」
「これ?これはメイクだから平気だよ。本当に殴られたわけじゃ無いんだ」
そう言ってタオルで顔を拭かれると、腫れていたはずの頬が元の綺麗な肌になってた。
す、すごい…。パニックになってて気が付かなかったのかも知れないけど、本当に殴られた痕みたいだったのに…。
「それじゃあ、気を取り直して誕生日パーティーを始めようか!」
「あの人たちは?」
「ん?ああ、彼らは王城の衛兵さん達だよ!本当の兵士の人じゃ無いと迫力がね」
そんなとこまで拘らなくても、十分に驚きましたよ…。
国王陛下にも根回しは済んであると言う用意周到ぶり。感服ですよ、シヴィ様。
その後は皆んなで楽しくパーティーをして、絶対に忘れることのできない誕生日になりました。
「今度から、こう言う事をする時は事前に言ってくださいね?」
「それじゃあサプライズにならないじゃん」
「サプライズは当分お腹いっぱいです。仕掛ける方なら喜んで参加しますが」
「はははっ!わかったよ!」
でも、お次はご自身の誕生日である事をお忘れなく。
盛大にお祝いして差し上げますので。
お読みいただきありがとうございます。
次回は、16日の14時を予定してます。




