表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘つきクソ野郎だと追放され続けた幻影魔法使い、落ちこぼれクラスの教師となって全員〝騙〟らせる  作者: フオツグ
神竜の寝床

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
32/63

「契約を違えたな」

「痛っ……」


 レイは全身に感じる痛みで目を覚ました。


「何が……起こったの……?」


 レイは身体を無理矢理起こしながら、記憶を辿る。

──火の魔法が結界に当たったと思ったら、洞窟の奥から強い風が吹いて……。

 周囲が明るくなっていることに気づいて、バッと顔を上げた。

 空が見える。


「ここ、洞窟の外……?」


 レイは洞窟を追い出されていた。

 周囲を見回すと、洞窟内にいた人々が、レイと同じように地面に倒れて、痛みに唸っている。

──シャルル先生は!?

 レイはシャルルルカの姿を探す。

 レイの真横に、彼はいた。

 シャルルルカは苦い顔で【神竜の寝床】の奥底を睨みつけている。


「シャルル先生! 一体何が起こって……!?」

「退避だ……」

「え?」

「麓まで逃げろ! 今すぐに!」


 シャルルルカは叫ぶ。

 シャルルルカの必死の形相に、これは嘘ではないと、レイは直感した。

 レイは急いで倒れているマジョアンヌに駆け寄る。


「逃げましょう! マジョ子ちゃん!」

「……は、はい……」


 マジョアンヌは痛みで上手く起き上がれないようだった。

 レイはマジョアンヌを背中に乗せ、立ち上がる。


「皆さんも逃げましょう!」


 レイは他の生徒にも呼びかけつつ、麓へ続く山道へと向かう。

 生徒達は訳もわからず、逃げる。

 叫びながら。足を引き摺りながら。這いずりながら。

 一方、シャルルルカはキョーマに近づいていた。

 キョーマは右腕を押さえて蹲り、痛みに耐えている。

 キョーマの怪我などお構いなしに、シャルルルカはキョーマの襟を掴んだ。


「お前、何したかわかっているのか!?」

「違っ……! 俺はただ、結界の強度を試そうと……!」

「言い訳はあとで聞く。さっさと山を降りろ、クソガキ!」


 シャルルルカはキョーマを麓へ続く山道の方に放り投げる。

 地面に叩きつけられたキョーマは「ああう」と痛みで唸った。

 その直後だった。


「オオオオオオ」


 洞窟の奥から、唸り声が響く。

 その声はだんだんと近づいてくる。


「来る……!」


 洞窟から声の主が飛び出した。

 その拍子に再び強風が吹き荒れる。

 シャルルルカは下を向き、帽子を手で押さえて、強風をやり過ごす。

 次に彼が顔を上げたとき、巨大な魔物が翼を使って、暗雲が垂れ込めている天へと浮き上がっていた。

 それは、蛇のような身体に、硬そうな翼、そして、額に巨大な魔法石が埋め込まれている。


「あれが……神竜ガルディアン……」


 レイは足を進めながら、神竜ガルディアンを見上げた。

 神竜ガルディアンは口を開く。


「我が眠りを妨げる者には死を」


 神竜ガルディアンの背後に複数の光の矢が出現し、下界に降り注ぐ。

 レイが気づいたときには、矢は直ぐそこまで来ていた。


「レイ!」


 ドン、と胸を押され、レイは尻餅をつく。

 レイに背負われていたマジョアンヌもその場に倒れた。


「ううっ……」


 レイは目を開けて、顔を上げる。

 目の前には、シャルルルカがいた。

 光の矢がシャルルルカの腹部を貫通し、地面に突き刺さっている。


「しゃ、シャルルルカ先生……!?」

「……はあっ」


 シャルルルカは苦しげに息を吐く。

 彼はかろうじて地面についている足で踏ん張り、後ろ手で腹に刺さった矢に手をやる。

 そして、矢をゆっくりと引き抜いた。

 矢を引き抜いた瞬間、傷口からどろどろと血が溢れ出した。


「先生、血が……!」


 レイが傷口を抑えようと手で触れる。


「《回復(ソワン)》!《回復(ソワン)》……! 血が……血が止まらない……! 止まって! 止まってよ!」


 レイの顔や服に血が降りかかる。

 そんなこと、レイは気にしてられなかった。

 血を止めることが、何よりも最優先だった。


「ハハハ! ざまあないな! 偽物!」


 ピエーロが笑っている。


「シャルルルカ様の名を騙るから、天罰が下ったんだ! ハハハハハ!」

「なんで、笑ってるんですか……? 先生が死んじゃうかもしれないんですよ!?」


 レイがそう言っても、ピエーロは心底愉快そうに笑うだけだった。


「人間……契約を違えたな。我の領域を侵した罪は重いぞ」


 天に浮く神竜ガルディアンは咆哮する。


「神竜を倒したことがあるんだろう!? 見せてみたまえ! 大魔法使いシャルルルカ!」


 ピエーロはそう言って、シャルルルカを煽る。

 シャルルルカは治療するレイの手を乱暴に振り払った。


「せ、先生……?」


 心配するレイを他所に、シャルルルカは神竜ガルディアンの元にフラフラと歩み寄る。

 神竜ガルディアンは自身に近づく存在に気づき、目を向ける。


「汝、何用だ」


 そう尋ねた直後、シャルルルカはどさりと地面に膝をついた。

 そして、両手をつき、最後に頭をつく。


「神竜ガルディアン様、この度は貴方様の眠りを妨げて申し訳ありません。貴方様の怒りは尤もです。人間側の裏切り……契約を破棄されても致し方ありません」


 シャルルルカは自身の杖を掌に乗せ、神竜ガルディアンに捧げた。


「これは、かつて魔王を討った、希少な杖にございます。お納め下さい。そして、どうか、どうか、お許し下さい……」


 その杖は、大魔法使いシャルルルカの証そのものだ。

 彼の教員採用試験のとき、そのようなことを言っていた。

──あの杖は先生の大事なものなのに。そんな簡単に手放して良いの?

 神竜ガルディアンは顔を近づけ、捧げられた杖をまじまじと見つめる。


「ふむ……。この杖は世界樹の木で出来ているのか。それにこの巨大な魔法石……素晴らしい品だ」


 神竜ガルディアンはシャルルルカの杖を受け取る。

 空中にガラスが割れたような亀裂が出現する。

 割れ目からは複数の色の絵の具を混ぜ合わせたような、不気味な色が覗き見えた。

 神竜ガルディアンは杖を空間の裂け目にねじ込んだ。

 収納魔法の一種なのだろう。

 杖は裂け目の中に消えていった。


「今回は汝に免じて許そう。しかし、次はないぞ」


 神竜ガルディアンはそう言い残すと、体を翻し、洞窟の奥へと戻っていった。

 垂れ込めていた暗雲が消え去り、辺りがしん、と静まり返る。


「許して……貰えた……?」


 レイはその場にへたり込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ