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オトコの姫とヒゲデブの騎士  作者: あしき わろし
2 闇夜の宴
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支配者の血脈

「そこらの成金がカネで購えるような、そういうブツじゃねェんだよ、あれは」



 いつになく真剣な表情でスキピオは言った。



「ほんなら、どがいなブツなんじゃ」


「口髭に百合の意匠……間違いねェ、諸国の家紋でも最高位のひとつだぜ」


「ありゃあ。ずいぶん、ええとこの子じゃね」


「どころじゃねェよ。よく考えたら、あいつが喋ってんのはタカハ古王朝の宮廷言語だ」



 葛籠の中身をひと目で高級品と見抜いたスキピオも、さすがに想像がおよばなかったのだろう。

 自分の迂闊さに顔をしかめて、



「今になって思い出すたァ、どうにも焼きがまわったぜ。オレとしたことが、よりにもよって王族を拾っちまうとはな」


「王族……ほんまか」



 王族といえば、当然だが諸国の君主と、その家族たちである。

 貴族に名門は数あれど、戴冠を許される血脈は国家にただ一系。

 すなわち、幾千万の人々が住む広大な中つ洲に、わずか八家を数えるのみ。

 いわば、この世を支配する家族群といえた。



「そういや、タカハからこのヤゴナ王国に嫁いできた王妃がいたぜ。ええと、第二王妃……いや、第三だっけな。確か王子をひとり産んでたはずだ。王子の名前はなんつったっけ……」


「ミトラじゃないんか」


「そんな女性名じゃねェ……くそっ、思い出せねェ」


「名前はともかく、タカハ古王朝の血を引いとって、こんヤゴナ王国の王子(?)でもあるミトラが、なんであがいな格好で、こげな山ん中で殺されかけとったんじゃろうのう」


「知るかよ。とにかくオレぁ、王族と関わりあいになるのはゴメンだぜ」


「そりゃワシもじゃ。お互い脛に傷を持つ身じゃけんの」



 声をひそめて話し込むふたりに、



「なんの話しとっと?」



 と、すっかりシャモキジを平らげたミトラが、先ほどとはうって変わった上機嫌で、



「ウチも入れて!」


「おっと」



 カトーが支えてやらなければ、ダイブした勢いそのまま、派手に倒れこんでいただろう。



「あはははは、なんか楽しくなってきたばい」


「あっ!こいつ、ブドー酒を呑み干しやがった!」



 スキピオが拾いあげた皮袋は、中身を失い、だらりとぶらさがっていた。



「ちくしょう、まだ半分は残ってたはずなのに!ガキのくせに酒癖の悪ィやつだ」


「大人がケチくさかこと、言いよったらいかんばい」



 カトーにもたれかかったまま、ミトラはにへらと笑った。

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