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オトコの姫とヒゲデブの騎士  作者: あしき わろし
2 闇夜の宴
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食は基本

 ウィル・オー・ウィスプの薄明かりを頼りに、カトーが二羽のシャモキジを切り分けている。

 ミトラは、まだ首をかしげていた。



「シャモキジが鳥でもあっとは知らんかったばい。ばってん、なんか納得いかん」


「なにが気に入らねェんだよ」


「シャモキジってわかりにくいけん、シャモキジトリって言うべきじゃなかか」



 スキピオはあきれて、



「食いもんの好みは人好きずきだがよ、名前が気にいらねェってやつァ初めてだぜ」


「それも食うまでのことじゃ。いっぺん口に入れたら、すぐに気にいるけえ、冷めんうちに食べんさいや」



 カトーは包んでいた葉を皿がわりにして、三分の二羽に切り分けたシャモキジを乗せた。



「ほれ、ちょうど三等分じゃ」


「……お前さ、食うことになると妙に几帳面っつうか、マメマメしいとこあるよな」


「食は基本じゃけえの」



 カトーは自分のぶんを引き寄せつつ、



「書は読むのも、剣を振るのもええ。ほんじゃが、なんぼ賢うても強うても、食わんにゃ死んでしまうんよ」


「まァな。そうだけどさ」


「じゃけん、食だけは誰にとっても平等でなかったらいけんのじゃ」



 首をかしげて聞いていたミトラは、おずおずと自分の葉を引き寄せた。

 そのまま、しばらく躊躇していたが、とっくにかぶりついているスキピオを見て、意を決したように手を伸ばして、



「熱ちっ」



 まだ余熱が残っていたのか、掴みかけた肉片を落としてしまった。 



「あっ……」


「いくら冷めんうちに言うても、いきなり掴んだら、そりゃー熱いじゃろ。ほれ、ワシのと変えちゃるけえ、ようフーフーしてから食べんといけんで」


「フーフー?」


「こうじゃ、こう」



 と、カトーはやってみせてから、代わりに転げおちた肉片を拾いあげた。



「でも、そっちは……」



 ミトラは悲しげな顔をして、



「ばっちくなって……しもうたばい」


「土がついたら払えばええんよ。死にゃーせんわい」



 と、手羽元あたりにかぶりつく。


 それを見ていたミトラは、今度は慎重に息を吹きかけ、おそるおそる口先でかじって、



「う、うまか!」



 と、目を丸くしたのだった。

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