† 独房生活 : 十九日目 †
十九日目
朝食。カチャカチャ。・・・・・・・ポリポリ・・・・・・。食事の音の合間を縫うように『UM』は喋り続ける。もちろん、独り言。ボリュームは小さめで何を言っているのか内容までは聞き取れない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ~~~~~~~・・・・・・・・・・・・・ヒマだ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・驚くほどヒマだ。
鉄格子と向かい合わせに立ち、目を閉じる。
・・・・・・・・・・・・・(スタープラチナ!!!)
心で呼んで、ゆっくりと目を開ける。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ですよね~~~☆ 鉄格子、ぐんにゃりと開いている・・・・・・わけないですよね~~~☆
だってわたくし『ジョースター』の血筋でもないし『ディオ』って知り合いもいないし『ジョジョ』って呼ばれてないし『スタンド』使いでもないですから★
HAHAHA!!!!!! ほ~~~~~ら! ヒマ過ぎて三十五歳にもなって『ジョジョごっこ』とか一人でやりだす始末。
殺せよーーーー! 頼むから! 誰でもいいから殺してよーーーーーー!!!
あ~~~~~~~~・・・・・・ヒマ。
紐・・・・・・欲しいな~~~~~。紐遊びしたいな~~~。紐、紐、紐、紐、紐、紐、紐、紐ひもひもひもひも・・・・・・・。
パーカーの紐はもちろん、とっくに抜かれています。
・・・・・・・鉄格子の向こうに巾着が。私の生理用品が入っている巾着が。
・・・・・・鉄格子の間に手を入れる・・・・・・巾着を引っ張り込む。あっ、紐だ~~~。看護師が抜き忘れている紐を巾着から抜く。少し短い紐が二本。
その二本を一本にするべく結んでみた。固く固く固く・・・・・・結んでみた。
おや・・・・・・これは、なかなか。
首二周はするくらいの長さになった。
巡回を警戒しながら首に巻いてみた。
ドキドキする。わくわくする。
首の後ろで交差してゆっくり絞めてみる。
少し斜め上に引っ張りながらゆっくり絞めた。久し振りの感覚。苦しくはない。痛みも感じない。
ゆっくり少しずつ強く強く・・・・・・。
頭がふわりと浮く感じ・・・・・・肘と膝がガクガクと激しく痙攣する。
立っていられない。あぁ・・・・・・飛びそうだ・・・・・・。ベッドマットに膝から崩折れる。首から紐を解く。
安心した。嬉しい。嬉しい。嬉しい。嬉しい嬉しい嬉しい嬉しい!!!
私はまだ余裕で逝ける! 『首吊り』で逝ける! 痛みも苦しみもなかった! あのまま続けていたら今ごろ確実に飛んでいただろう!
嬉しい!!! 嬉しい!!! 嬉しい!!! 嬉しい!!! 嬉しい!!!
『練習』は間違いじゃなかったんだ!
私は紐をポケットにしまい、ポケットの中で紐を握り締めた。
なんだか安心する。これでいつでも絞めれると思うと嬉しくて仕方がなかった。
ヒョロ助と話す事は今のところ何もない。申請が終わらないと何も進まない。ここから出ることさえできない。
「ヒマです・・・・・・」
「でしょうね~~~。何か要望みたいなものはありますか? ・・・・・・ここから出せ! は、もう少し待っててくださいね? あと、紐くれ! もムリですよ~?」
紐・・・・・・ポケットに突っ込んだままの手の中にあるんだな~~~ひ・も♪
ニヤけそうになる頬を堪える。
無邪気に笑う小動物ヒョロ助。
もう受け入れもしてしまったし、本名にもなってしまったし・・・・・・ポケットに紐もあるからか、私の心も少々穏やかだ。諦めも少しはあるのかもしれない。
「本とか・・・・・・読みたいです」
「本・・・・・・どんな本?」
「どんな・・・・・・・・・ああ、聖書・・・・・・とか・・・・・・」
「聖書?!・・・・・・へ~~~、そういうの読むんだ~?」
「いいえ。読んだことはないです。無信仰の無宗教ですし・・・・・・ただ、あんまりにもヒマ過ぎて・・・・・・読んだこともないものが読みたいな・・・・・・と」
「あぁ・・・・・・暇潰しには・・・・・・」
「そうです。難しそうなので、いい暇潰しにはなるかな~~と・・・・・・」
「う~~~~~ん・・・・・・どっかにあった・・・・・・かな~? 他は?」
「他? ・・・・・・他・・・・・・他ねえ~・・・・・・。あっ、私荷物の中に本が・・・・・・あるのです・・・・・・けど・・・・・・」
「あっ本当に? なに? なに?」
ダメもとで言ってみるか?! ・・・・・・分かっているんだ。絶っっっっっ対!!! ダメだって・・・・・・。
ニコニコと笑顔で小首を傾げている小動物。子リスみた~い♪ なヒョロ助に言ってみた★
「・・・・・・『完全○○マニュアル』です」
「!!!!!!っ、あぁ~~~~~~~~・・・・・・うぅ~~ん・・・・・・・・・・ダメ・・・・・・です。それは・・・・・・ダメだ・・・・・・ね。他は? 他には本持ってきてないの?」
「他にはないです」
「そ・・・・・・・・・か・・・・・・・・」
苦笑する子リスちゃん。ヒョロ助てんて~ごめんね☆ ちょっと反応が見てみたかったんだ~。まあ予想通りの反応でしたが。
そんな感じで診察 (?) ・・・・・・今日のヒョロ助タイム♪ は終了です。
就寝前のお薬の時間です。私は一つもないのですが・・・・・・。
「それはなんの薬だ?! ・・・・・・そんなもん飲まんぞ!!!!!!」
「飲んでもらわないと困ります」
「飲まん! 飲まんぞ!!! 出ていけ!!!!!!!!!」
『Mじいさん』の怒鳴り声が響き渡る。昨日は飲んでいたのに今日は・・・・・・。『Mじいさん』と看護師の攻防が始まった。
「出ていきません。飲んでくれるまでここにいます」
「生意気な~~~・・・・・・!!!!!! 出ていけーーー!!!」
「はい。お薬飲んで頂いたら、出ていきます。飲んでください」
「いらん! いらーーーん!!! 飲まん!!! 飲まんぞーーーーー!!!」
「じゃあお注射になりますが、それで宜しいでしょうか?」
「なに?! 注射?! いやじゃーーーーー!!! 出ていけーーー!!!!!!」
「お薬かお注射のどちらかです」
「どっちもいらん!! いいから! 出ていけーーーーーーーー!!!」
「それは困ります。ちゃんと先生から処方されているので、どちらか選んでいただきます」
「どっちもいらん言うとるじゃろうがーーー!!! 出ていけ! 出ていけーーーーーーーー!!!!!!」
どのくらい続いたかしら? かなりの時間をかけ、数人の看護師の説得によりようやく納得したようで『Mじいさん』は薬を飲んだみたいだ。
そして・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「それはなんのお薬ですか? ・・・・・・いりません!!」
「・・・・・・飲んでもらわないと困ります」
デジャヴですか~~~? 『UM』の所でも全く同じ展開に!!!
「いりません! そんなお薬、私飲みませんから!!!」
「先生からちゃんと処方されたお薬ですから。飲んでください」
「イヤです! 飲みません! 私もう寝ますから!! ・・・・・・イヤです!!!」
「お薬飲むまで寝かせませんよ? はい、飲んでください」
「イヤです!!! ちょ! 誰か! 誰かーーーーー!!!!!!」
「じゃあお注射になりますが、いいですか?」
「注射はイヤです!!! イヤです!!! お薬も注射もイヤです!!! もう寝るんですーーー!!!」
「はい。飲んだら寝てください。どっちにしますか? お薬ですか? お注射ですか?」
「注射はイヤです!!! イヤです!!! 絶対にイヤです!!!!!! お薬もイヤです!!! 飲みません!!!!!!」
この『お薬 or お注射』攻防は看護師の粘り勝ちで幕を閉じた。って言うか・・・・・・不思議だ。なぜ二人は今日になって、今更ながら拒否をしたのだろう? しかも、二人共に・・・・・・。
なんの因果か? 月の満ち欠けか? 潮の満ち引きか?




