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TSした妖精幼女は異世界で家族が出来る  作者: えもぬえ


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第67話 死の歌(3)

6000ユニークアクセスありがとうございます!

今更ですが主人公が出ない、もしくは意識が無い場合サブタイトルが違います。

相変わらず話の構成を頑張って練っているので気長に更新をお待ちください。

「もう、殺してくれ⋯⋯」


 何?


「俺が来月には一児の親かぁ。家庭を持つなんて今でも夢みたいだ」


 これは何だ?男の声がする。私は⋯⋯ここは?


「ねぇ、今日はあのお店で食べましょう?この間は満席で入れなかったもの」


 この女も見たことが無いくらい上等な服を着てる。いや、そもそもこんな景色も一度も見覚えがないぞ。


「※◇%さん、やっと会えた!ずっと楽しみにしてたんです!ゲームでも凄く優しいから、今日はおめかしして来ちゃいました!」


 名前?それにしては聞き取りづらいな。誰かの記憶なのか?


「今日もパーティに入れなかったなぁ。ギルドはどこも一杯だし、ソロ狩りは行ける場所が少なくて飽きるんだよ⋯⋯誰かと一緒に冒険に行きたいなぁ」


 四角い箱に描かれた絵が動いてる。どんな魔道具なんだこれ、途方もない価値だろうな。


「はぁ⋯⋯今日も疲れた。仕事だからしょうがないけど、無茶ばっか言ってくるのはどこの上司も同じらしいし、我慢するしかないか。ストレスが溜まっておかしくなる前に解消する手段でも探したほうがいいか」


 仕事に対する愚痴か。仕事があるだけ有難いと思うんだけど、声色からこの男の待遇はあんまり良くないのが伺えるな。独り言も気晴らしの一つか。


「卒業おめでとう!今日は皆の門出であり、新たな学びの始まりだ!進学する者も、すぐに働く者も気を抜くなよ、最初の数カ月が肝心なんだからな!」


 広めの部屋に数十人が押し込められてるな。先頭に立つ指揮官以外は子供のようだけど。


「□◯ちゃんが⋯⋯死んだ?それに、父さんと母さんも行方不明って⋯⋯⋯」


 手に握った小さな絵には四人の家族が描かれてる。雫が落ちて⋯これは、涙?


「今日はどこに行くの?待って、お兄ちゃん!」


 妹か。この男にも守るべき存在がいるんだな。いや、さっきの状況から察するに⋯⋯私も上手くやれているとは言えない。


「これからあなたはお兄さんになるのよ。しっかりしてね」


 今度は治療院みたいな清潔な場所にベッドか。そこに寝かされた女の手に赤ん坊、ということは出産した直後ということか。ここも私の、いや⋯⋯普通の常識では考えられないほどの白い布と見たことがない器具ばかりだな。


「ぱぱ!まま!」


 この声。あの子によく似ているな。アリス⋯⋯。





「む、今のは?⋯⋯⋯夢?」


 体を起こしながら一人呟く。寝ていたようで、頭に靄がかかったみたいに意識がハッキリしない。目の下に流れるものを感じて頬に手をやると、涙が流れているのに気がついた。


「どうした泣いてたんだ?それに、今見たのは⋯⋯」


 完全に身を起こそうとすると身体の横に異物感を感じた。妹が私の腰にしがみつくように寝ている。思い出した、この子の記憶が蘇った事により生じた事態が、世界の危機だって女神様が止めに来たんだった。


「ということは、まさかな?」


 妖精という不可思議な存在になって女神の使いをやっている別世界の子。その前世の記憶、残滓とでも言う物が流れ込んできたのか?だとしたら⋯⋯。


「あっちの世界は随分と発展してるみたいだったな。私が今見ただけでも高度な技術がふんだんに使われた、恵まれた場所ってのが分かるな」


 そんな世界でも、絶望に身を苛まれ死を選ぶ程の事が目の前の妹を襲ったのだ。恐らくこの子の物だろう記憶を見た直後だからだろうか、急に切なくなり妹の頭を撫でて気を紛らわせようとした。


「んん⋯⋯」


「おっと、ごめん。起こしちゃったみたいだ」


 撫でるのをやめて様子を窺う。あんな事が起こった後だ、私と一緒で身体の治療はされているみたいだが、この子の心の方が心配になる。


「あ、お姉ちゃんおはよう!」


「ああ、おはよう」


 どうやら杞憂だったみたいで元気に挨拶をしてくれたことに安堵する。どこまで覚えているのか、忘れていたとしてどこまで教えて良いのか分からないから、迂闊なことは言わないようにしなければ。


「ところでアリ」


「おはようの、ぎゅ~~!」


 突然アリスが私の腰に跨がって力の限り抱きついてきた。


「うわっ!?ど、どうしたんだ?」


「え?嫌だった⋯?」


 涙目でこちらを見つめてくる。どこまでも純粋な赤い瞳に吸い込まれそうになるが、気を取り直して返答する。


「嫌じゃないけど、ちょっと驚いてな」


「そう?じゃあ、もっとする!おはようの、ちゅ~~!ちゅっちゅ!」


「んぶ!?」


 今度はキスをしてきた。恋人にするようなディープな奴じゃなくて、鳥が啄むように唇を尖らせて顔中に口づけを連打してくる。


「ま、待て待て!いきなりどうした?なんでこんな事するんだ?」


「だって大好きなんだもん。好きならいいでしょ?ちゅ~」


 今度は首筋に唇を這わせながら頭を擦り付けてくる。こそばゆいけど悪い気はしないが⋯こんなに積極的に感情を表に出す子だったか?何かがおかしい。まさかショックで記憶を失っている?いや、私を認識できてるからそれはないか。


「なぁ、さっきの事覚えてるか?」


「ん?ん~~、よくわかんない」


 少し考えながら返事が帰ってくる。目の動きを見る限り嘘を言ってる様子はない。普通の人は誤魔化す時に目線が泳いだり、動揺してあらぬところを見たりするがソレは無かった。相変わらずガーネットのような少し黒みがかった赤い瞳でこちらを見つめてきている。


「それよりお腹空いちゃった、ごはん食べに行こ?」


「あ、あぁ⋯そうだな」


 寝ていた部屋の外に兵士が居たのでティナとアールランド様が居る場所を聞いて、様子がおかしなアリスを連れて向かうことにした。



 ~~~~~



 とある家屋の一室で、やたら神々しい女性と席を同じくして会話する二人の姿があった。


「そ、それでは鑑定は恩恵(ギフト)ではないと?」


『そぉよ。どっちかと言うとそれは特殊技能(スキル)の残骸。たまーに隔離前の世界の能力を隔世遺伝みたいに発現する人間が居るのよ。恐らく貴女はハイエルフとして特に濃い情報を持って生まれてきたから、過去に先祖が習得していた鑑定が備わってたんでしょ』


「そうですか⋯⋯この血をご先祖様が絶やさず紡いでくれたおかげで⋯⋯」


 アールランドは感慨深いと言った顔で自分の親や祖父母に思いを馳せ、続く質問を投げかけた。


「御神が邪神ではないかという疑念が遥か昔から存在するのですが、それについては?」


『えぇー?いつの間にそんな事になってんのよ⋯⋯私はどこぞに邪教団なんて飼ってないし、生贄も欲しくないってのに。魔物とかダンジョン担当だから歪んで伝わったんじゃない?アナタ、この国の偉い人なんでしょ?ちゃんと修正しといてよね』


「ハッ、ハイ!承りました!」


「ところでアリスちゃんについてなんですが、伴侶と言ってましたね?もしやあの子は前世で結婚して子を成すほどに生きていたんですか?」


 ティナが核心を突く質問を繰り出す。今この場では、アリスとクリスが目覚めるまでの間ではあるが、普段聞けない世界のアレコレや個人的な質問に至るまで女神が答えてくれるという、非常に貴重な機会が設けられていた。


『正確に言うと子供が生まれることは叶わなかったけどね。素敵な女性を見つけて恋に落ちて、結婚はまだだったけれど奥さんの体調が戻ったら式を挙げる予定だったみたいよ。そんな幸せ絶頂期にあんなことしやがってからあの連中、ブチ殺してやって清々するわ!』


「やはりそうですか⋯⋯それに、あの子は元は男性だったんですね」


『そうだけど、幻滅した?あの子のお守りが嫌なら言ってね、今からでもここに居る関係者全員の記憶を消して処置をするくらいの時間はあるから』


「いえ、全然問題ありません。前世が何であろうと今は私の可愛い妹ですから」


『そりゃよかった。記憶操作はかなり神力(MP)食うのよね、バイト先から前借りしないといけないから』


「バイト?」


『ううん、こっちの話⋯⋯どうやら目覚めたみたいね』


 それを聞いて二人が耳を澄ますと小さな足音がして、クリスがアリスを連れて廊下を歩いてきた。

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