実録、唐突に出てくる「〇〇しないと出られない部屋」とは何か
「さて…今の状況なんですけど」
『どーゆーコトなんだろうねぇ~♪ 組み合わせが謎でウケる~(^^』
「あ、他に誰もいなくても続けるんですね、それ…」
とある個室の中。
内出屋君は、座る椅子もなく棒立ちしていた。
落ち着きなく、たまにあたりを眺めるが、それもそのはず。
ここには入り口も出口もないのだ。
ふたりとも、何の前触れもなく気が付いたら居たところ。
気絶して目が覚めたら、ですらない。
本当に気が付いたら二人だけの部屋にいる。
理解はではないが、真っ暗ではないのだけは幸い。
天井に光源らしいものがある石畳、もしくは古いレンガ造りっぽい狭い部屋に、いつのまにかいる。
それ以外の情報が本当にないのである。
それだけなら、まぁ、内出屋君ならしばらく様子見して寝るくらいの余裕はあるが。
隣に今回もう一人いるのが問題であった。
生徒会の、樟恵世華呼。
先日の事件で割と探検部にとって気まずさが増した書記である…よりによって。
空気をどうすればいいのか、間をそのままにしていいのか埋めるのか、その辺から未知数すぎた。
『ナアナア探検部よお(=^・・^=)』
びくり。
距離感がある微妙な相手からの、急な声かけは…。
一言で言うと、なんか、そう、怖い。
状況が状況だけに、説明しろよ、または土下座しろよ等言われることは、内出屋君も覚悟はしていた。
「…な、なんでしょう…」
『ここが〇。〇スしないと出られない部屋だったら迷わず襲い掛かるほう?( ;∀;)』
「はあぁ!!?」
急すぎる。
ネットミームだろう、いつごろからか世の何にあるかのように語られだした、はた迷惑な用語と施設。
『〇〇しないと出られない部屋』
性的だったり、告白だったり、緩急いくらでも応用が利くパーティ施設かのように話の上では出てくるこれ。
じっさいあったら、それはそれでたまったものではない。
『だってこっちだって可愛くてか弱いJKなわけで、相手か性欲を無理に抑えたド外道なケダモノか、ぐらいは確認しないと、こわ~いよおぉ管理人さぁん( ;∀;)』
「そのあとどこからか出てきた画像付きで死ぬまで後悔を強要され続ける未来に行くことだけは、わかりますよ」
『ォ、ナイス観察力』
だが、相手が相手では希望もクソもあったものではない。
油断も好意も欠片もない相手では、だ。
「安心してください、そこまで考えなしにヤケになれる人間はここにいないです」
『わかんないぞう?(^^)私がおなかすきすぎて急にお前を食べてしまおうとかみつくかもしれないぞお( 一一)』
「…数日先を見据えたとしても、やめてくださいね」
『た~べちゃうぞ~(=^・・^=)』
そっちかい!
というツッコミはなしに、内出屋君は壁や床を調べ続ける。
興味もないと言わんばかりに、同室の美女はほったらかしだ。
まれに、スカートをちらりちらりとつまんで持ち上げて、内出屋くんの行動を様子見なのか、挑発なのかしているのは視界の端に見たりするが、今は無視。
理由は当然、言葉にした通りだ。
録画だなんだ、仕掛けたうえでの行動なのは疑いようもない。
…そういう相手だ。
『もお~(´・ω●)~ つまんねえぞお探検部よぉおう(;゜Д゜)』
「数十分で音を上げないでください…」
『そうではなく!お前が!反応が!つまんない!退屈!ノーリアクション芸人なのかお前ぇ!よぉ!( ;∀;)』
「そんなにしてるとスマホすぐ充電切れますよ」
男性側だって、全く興味がないと言われるとウソになるはずだ。
重ねて言うが、生徒会相手で弱みが漏れたら最後だという緊張感があればこそである。
『どんなに乱暴に使っても一週間分は予備バッテリー持ってるわい!( `ー´)馬鹿にしないでくれる(=^・・^=)』
「…いざとなったらそのいくつか、壁くりぬく爆薬にしますからね」
『ひっでえ!(-""-)横暴だ!訴訟だ!(゜Д゜)』
なるほど。
何もできることはないと、最初から内出屋くんで遊ぶことにリソース全つっぱしてたわけだ。
ならば、ことさら出ることだけに集中して、そっちはおまけでいい。
さらに行動が一部エスカレートして上着やそれ以外をもぞもぞしていた気もするが、知らない。
反応したら負け、そう内出屋くんの心が告げていた。
…しかし。
数時間、成果は全く得られることはなく。
内出屋くんは何をするにも八方ふさがりと言う結論を出さざるを得なくなった。
「…いや、そういえば、普通の音声変換ソフトって発声のデータで外部通信してませんでしたっけ?」
『ま、無料のはそういうの多いやね(*^-^*)』
「ここ、ネットだけ繋がってたりするんですか!?」
『無理無理~((+_+))そんなの私が試さず見過ごすはずないだろおぉぉ~ん?( 一一)』
「ですよね…」
とっさの思い付きも不発。
音声の会話、この生徒会はずっとオフ環境のままだったのかな…。
どんな時でもこのスタイル崩さない鉄壁の心構えだったりするのかな……。
興味は多少抱かざるを得ないが、いや、聞くまい。
対価がどれほどになるか見当がつかない。
「……しかしまあ、さすがですよね」
顔も向けず、独り言のように内出屋くんから切り出す。
「肝が据わっていると言うか、よく暇つぶしを考えるだけで不安にならないですよね、生徒会は」
『なぁにが言いてぇ(゜Д゜)』
「…ま、状況として無視するのは無理なんでぶっちゃけますが…」
とはいえ、異性に対して好んで言いたくはないので、そっぽむいたまま会話する姿勢の内出屋くん。
「喉乾いたり飢えたり、トイレなんかであったり生理的に避けられない話、一日二日とこのままな場合にどうするべきか、そろそろ取り決めの何かしらしないと…危険でしょうよ」
沈黙。
ほんの数瞬だったかもしれないし、そうでもないかもしれない。
だが、たしかにあった沈黙。
お互いに、言いたくても言えないところこそ、やはり真っ先に気にしてしまうものだ。
『あぁ~……言っちゃうかぁそれ、気づいちゃうかあ( 一ω一)』
そして、わずかに相手も固まった後、何もなかったかのように即反応してくる。
やっぱりお互い気にしてはいたのか。
……我慢していたとしたら、凄い気まずくて言えずにいただけなのか。
狭い、この一部屋から出られない中で事故があれば本当に気まずくて脅威なので……。
なので、懸念は先にして絶対に避けたい。
内出屋くんも、切り出すのは割と切実さを肌に感じたからなのだ。
緊張だけでも喉が渇くし、自分だけが空気を気にして口でしゃべるこの現状。
つまり、指だけで頑張れる相手と行動でいちいち応対するので差が否応なく生まれる。
ならば先に音を上げるのは内出屋君のほうなのは疑いないはずなのだ。
そして、この狭さである。
何より気になって仕方ないのは、空気…そして酸素。
そしてその発想から閉所でもう一つの問題点が浮かび、内出屋君は気が気でない。
それは、そう。
つまりそれは。
臭い。
特に何かのはずみで体内から出てくる数々の『なにか』は、この状態で無理やり付き合うにはあまりに苦痛だ。
早く出たい最大の理由はそこだった。
『ネットで前に見たんだけどさぁ、おしっこって細菌が爆発的に増えないように直飲みしないとやばいんだってよ( ..)φ』
「急に何言ってんだお前ッ!!!」
『だって今の切り出し方、喉に入れる方と出す方両方一気に解決しようって言ってるようなもんだろぉ?((+_+))女から言わせたいとか、こぉの変態野郎がよお(;゜Д゜)』
「違います!違います!絶対に!誓って!違いますからね!!」
取り乱す。
そりゃもう取り乱す。
『……弱いなおめーの威勢(=^・・^=)』
「開き直ったら僕の何かが終わる気がしますので」
自分の理性なのか対外的信用なのか、その辺は本人が語るまでは謎である。
『ま、食べるものだけでもあったら早めに隠さず出すんだぞ。(=^・・^=)それと』
「…まだ何かあるんすか」
『死ぬほど喉が渇いたらいえよ、土下座してさぁ(=^・・^=)』
「嫌ですし人間としての恥じらいは捨てないでいただきたい!」
『……なぁに想像してんのかなぁ。( 一一)エロかぁエロ妄想なのかぁ(#^^#)』
「もうかんべんしてくれぇ!」
少なくとも、この狭い空間での上下関係については確定したようだった。




