コキャッ
「ピヨ……ピヨピヨ……」
無限に続く……転生ブロイラーループを抜け出す方法はあるのだろうか……。いや、きっとある!!
もう、目が覚めないで欲しいと願っていた。瞼を開けたくもなかった。瞼を開けなくても……周囲が薄暗い部屋なのが分かる……。
低い送風機の唸り音と生暖かいそよ風。ピヨ風。ゴソゴソとピヨピヨでここがどこだが、分かってしまう――!
なにか他に方法はあるはずだ! ここから脱出する方法が!
永遠のブロイラーループ地獄から逃れだす方法が――!
わざとおかしな行動をとってみるか……。他のヒヨコと特別に違う事をして注目され、俺がなんとか人間だったと証明するんだ。ここから逃れる為には、それしか手はない――? いや、鶏には手はない!
飛べない翼があるだけだ――!
自分で自分の羽根をむしり抜く。髪の毛を抜くのに比べると、非常に痛いのだが、ワザと抜いて他のヒヨコと区別してもらうんだ!
そして、わざと腹をつけたままズリズリと歩く。他のヒヨコの周りをズリズリとおかしな姿で走り回る。
わざと、えずいてみせる。
おえー! お、おえー!
すると、おっさんと目が合った――! 俺の奇怪な行動に興味を持ってくれたみたいだ。
ゆっくりと救いの手が差し伸ばされてくる~! き、きた! 今だ!
「ピピピ、ピーピーピー、ピピピ!」
「ピピピ、ピーピーピー、ピピピ!」
俺を助けてくれ!
必死に「SOS」鳴きをし、おっさんの大きな掌に掴まれると、
――一思いに首を、ありえない方向へと曲げ折られた――。
「ピッ――!」
コキャっと鈍い音が頭蓋骨に響きわたり、目の前が一瞬で真っ暗になった。一瞬の出来事に俺は……なにが起こったのかを理解できなかった……。
ゴミ箱へと投げ捨てられた……。
じゃあ食べてやる! 食べまくってやる!
糞が付いて転がっている餌を片っ端から食べると、日に日に他の奴らより俺の体は大きなり、その姿を見て怯える他のヒヨコどもが、餌場から逃げ出していく。
ハッハッハ―! これだ! これなら俺はいつでも大ぶりのトウモロコシを好きなだけ堪能できる!
ザマーミロだ! 食って食って食いまくってやる!
無我夢中で食べると、クチバシ下の胃袋が膨張しているのが分かった……。
寝る間も惜しんで食べ続けた。
喉が渇いたなあ……! 餌場から顔を離し、歩こうとして初めて自分の行動のヤバさを悟る――。
やばい、食い過ぎて太り過ぎた!
腹がつかえて……ま、まさかの……歩けない!
水! 誰か……水を!
「ピーヨ、ピ、ピーヨ!」
焦りで目の前が霞み、動けないところを……あのおっさんが拾いあげてくれた。
ありがとう……。でも、助けてくれる訳では……ないよな……。
コキャ!
「ピッ――!」
体の最後の水分が……瞳から流れ落ち……。ゴミ箱へと投げ捨てられた……。