第三話
団体客が来た。
騎士、戦士、戦士、魔術師、治療師、召喚士・・・16名。
「良いか、気を付けろ。導き手に会うまで、侵入に悟られてはならない」
「分かっている。・・・まずは赤黒い壁の場所へ転移せねば」
「まずこの道を進みます。大きな物音と、できる限り、周辺への攻撃を控えて」
「大丈夫、絶対、俺たちなら・・・!」
「自動記載地図、機能しません!」
「問題ない、古地図を辿れば良い。彼女は最深部の二層上のはず」
どうぞ、奥へ。そのまま、どうぞ。
***
「っ、彼女、か?」
「・・・違います、戦闘態勢整えて! 来ます!」
「食人鬼が三体! 雑魚!」
「気を抜かないでくださいね」
「攻撃魔法が来ます! 結界展開!」
「面倒くせぇ、行くぞ!」
***
おいで。
おいで。
大きくなって、戻っておいで。
力をつけて、背を伸ばして、技をつけて、感情を豊かにして。
あぁ、見違えるようだ。
・・・なんて、オイシソウ
***
「転移ポイントです、皆さん手を繋いで」
「気を引き締めろ」
「分かってる、一気に最下層付近だろ」
「導き手の彼女に会える可能性が一番高い」
「手筈、間違えんなよ」
「分かってる。今更ミスなんてしない」
「良いわね、ここにいる皆の恩人なのよ、ファイトッ!」
***
こんなに嬉しい事はない。
たった少し、ほんの少し待つだけで。
骨と皮だけだった存在が、丸丸とした旨みをまとって戻ってくる。
おいで。
待っていた。戻ってくるのを、楽しみにしていた。
***
昔。大昔。
一人の戦士を喰った。
喰った仲間を追って、奥まで来た強者だった。
奥まで来れるからにはさぞ有名で有力な者だろう。姿かたちを保って疑似餌とした。
疑似餌は動いた。勝手に動いた。
子どもに会っては、表層部へと、地上へと返す。
喰らう前の個体の意識が残っていたから。
***
ありのままを知るが良い。
この住まいのどこにも、お前たちの仲間など、生きてはいないよ。
あれは、ただの疑似餌。
お前たちを呼び戻すための、意識を残したままの、私の手足。
***
それでは、いただきます。
***
ごちそうさま。おいしかったよ。
おわり