13話:地獄の特訓
朝になった。
朝ごはんを食べるために下へ降りると、ラーゴだけがガーザルさんとシースーさんの朝食の準備を手伝っていた。
「起きたかフユト、降りてきてそうそう悪いがまだ寝ている2人を起こしてきて欲しい。キュウは引っ張ってきていい。」
俺は黙って頷いて再び上に上がる
一旦イオラを起こしにイオラの部屋のドアをコンコンコンと叩き
「イオラー。朝だぞーー!起きてるかーー?」
少し大きい声で聞くと部屋からなにか物音がした。
(キュウの方に行くか。)
もう大丈夫だと思いキュウの部屋の方に行く
「キュウー。朝だぞーー!起きてるかーー?」
ドアをコンコンコンと叩きながらドアに向かって言う
物音無し
仕方がないと思いながら
「ラーゴも言ってたしおじゃましまーす...」
ドアを開けると、なぜか足元に枕が転がっていた。そしてベッドにはキュウは居ない
(い、居ない!?もう起きてたのか?)
(……というかなんで枕が床に?)
少し奥までソロリソロリと進むと、誰も居ない。シーツがグチャグチャになっているだけだ。
俺は驚いて部屋を出て下の階にいるラーゴに向かって
「ラーゴ!キュウ部屋に居ないけどそっちにいるー?」
「いない、どうせ他の部屋に潜り込んだんだろ。」
そんなやり取りを聞いてシースーさんが二階に来て
「フユト、イオラのことは女同士の私に任せて下で朝ごはんの準備を手伝って。」
そう言われ朝ごはんの準備を手伝い終わり
座ってラーゴとガーザルさんと先に食べ始める
「フユト、お前は今日はイオラに追いかけっこが終わったあとひたすら追いかけられては投げ飛ばされる訓練だ。」
「ラーゴ、お前も後で俺と追いかけっこだ。」
ガーザルさんがそう言い
「ガーザルさん、キュウはどうするんですか?」
「キュウも後で俺と追いかけっこだ。」
「フユトもガーザルさんも、キュウのことは気にしなくていいですよ。」
俺の質問にガーザルさんがそう答える。
その後ラーゴが容赦なく言い放った。
そんなことを話しながら、なんとも言えない硬さのパンをかじっていると、シースーさんが二人を連れて降りてきた。
「......眠い。」
「ふぁ〜〜。朝ごはんいい匂い...。」
キュウとイオラがそう言いながら席につき各々水を飲むなりおかずである肉にかじりつく。
「ラーゴ、今思たんだけどキュウって戦えるの?」
そう聞くと優雅に食べていたラーゴが
「一騎打ちなら僕の方が圧勝です。ただ、経験の面では……悔しいですが、あいつの方が上です。ほら」
そう言いラーゴが右の手のひらを見せ、左手で隣で水を飲み終わりボーッとしているキュウの左の手のひらを見せてくる。
たしかに、ラーゴの手のひらにある紋様は、キュウのものより若干薄い。
改めて俺の手のひらを見る。
まだあるかもわからないレベルで薄い。というか、ほとんど見えない。
数分後、皆が朝ごはんを食べ終えると、ガーザルさんとイオラとキュウが片付けをしていた。
俺は洗濯をしに行くシースーさんと洗濯籠を持ってついていきながら質問する
「あのシースーさんってよくサーカス見に行くんですか?」
「ただチラシ見たから見てみたくなっただけよ。しかも三人分も無料で見られるなんて、行かないのもったいないじゃない!」
シースーさんは、まるで遠足を楽しみにする子供のような顔をしていた。
籠を洗濯場所のところに置きガーザルさんのもとへ特訓しに行く
庭に出ると、息を荒くして草の上で寝転がっている二人が見えた。
ラーゴとキュウである。
恐らく追いかけっこが終わったのだろう
俺はラーゴとキュウに手を差し伸べて
「大丈夫か?」
「ご心配なく、ルローナ先生のお祖父ちゃんならそういう感じだろうと思ってたので。」
「ルローナ先生のお祖父ちゃん、やっぱり鬼畜。」
そう言ってラーゴだけが俺の手を取って立ち上がる。
キュウは――そのままだ。
そんな中、イオラはずっとガーザルさんと追いかけっこをしていた。
捕まっては「もう一回!」と立ち上がり、また追いかける。
負けず嫌いなのだろう。
そんな光景が見れたのも束の間、その後ははっきり言って地獄であった。
それから数分後、俺にとっての地獄――イオラとの追いかけっこが始まった。
イオラはガーザルさんに一回も勝てなかった悔しさを俺にぶつけるかのように、俺を捕まえては容赦なく投げ飛ばしてくる。
(受身取ってるけどこれ普通に死ぬのでは....。)
そんなことを考えているとまたまた投げ飛ばされる。
「グハァ....」
「フユト〜!まだまだ終わんないよ!!くっそ〜〜!!あのお爺さんぜっっっったいに次こそは〜〜〜!」
そのまま倒れていようかと思った、その時。
反対方向から戦闘音が聞こえてきた。
ガーザルさん対ラーゴ&キュウの特訓だ。
なんとあのキュウが真面目に何か投げたりして走っていたのである。
(キュウがあそこまで頑張ってるのに俺がこんなんじゃダメだな)
そう思いながら再びイオラに挑んだが惨敗である。
───その後も容赦なく投げ飛ばされ続け夕方になっていた
イオラが気の済むまでフユトを追いかけ回し、投げ飛ばした頃には、フユトの手のひらの紋様も若干見える程度まで濃くなっていた。
フユトが倒れたまま動かなくなるのを、ガーザルとラーゴは静かに紅茶を飲みながら、憐れむような目で見つめていた。




