第7章:家長の検分
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「異世界のキャラクターは魔王を前にして震えるかもしれないが、彼らは犬神貞人に検分される恐怖を知らない。父が地下室へ降りてきたとき、僕は悟った。この家族において、東大の試験結果など何の意味もない。僕がこの家の後継者として、冷徹な決断を下せる人間であることを証明しなければならないのだ」
地下室に止まったエレベーターの音は、重苦しく響いた。扉が開き、犬神貞人が完璧なスーツ姿で現れる。その威圧感は、周囲の空気を一変させた。
朱里は即座に僕の背中から離れ、頭を下げて直立不動になった。彼女の激しい執着心でさえ、父が放つ圧倒的なオーラの前には影を潜めた。
「江戸」
父の声が、無機質な壁に反響した。
「お前が管理しているリソースの報告を見た。一人の検体に対して、少々甘さが出ているのではないか」
彼は部屋の中心へと歩み寄り、鋭い眼光を向けた。僕は呼吸を整え、心の動揺が表に出ないよう神経を研ぎ澄ませた。
「詰めが甘いな」
貞人は冷ややかに評した。
「焦ったのか、江戸? それとも感情に流されて、本質を見失ったか?」
「いえ、すべては計算通りです、父さん」
僕は可能な限り冷静に答えた。
貞人は沈黙し、僕をじっと見つめた。
「知識だけでは、犬神の門をくぐることはできん。この家の一員として生きるなら、後戻りできない覚悟を示す必要がある」
彼は冷酷な提案を突きつけた。それは、僕がこれまで築いてきた人間としての倫理を完全に捨て去ることを求める試練だった。
「今ここで、お前の覚悟を示せ。情に流されず、目的のために非情な選択を遂行してみせろ。それができれば、お前の実力を認め、後の処理はすべて私が引き受けてやろう」
僕は言葉を失った。それは単なる試験ではなく、僕の魂そのものを変質させる要求だった。沈黙の中、父の瞳は答えを強要するようにぎらついた。
部屋の隅から朱里の視線を感じる。僕がこの試練を乗り越え、より高みへ行くことを期待する視線だ。僕は覚悟を決め、父の前に一歩踏み出した。
恐怖と使命感が入り混じる中、僕は自らの良心を封じ込め、犬神としての自分を受け入れようとしていた。
「やれ、江戸。お前の忠誠を証明してみせろ」
貞人が囁いた。
僕は一切の迷いを捨てて行動した。震えも躊躇もない。ただ、静寂の中に僕の決断だけが刻まれた。
貞人は満足げに微笑んだ。
「合格だ、江戸。お前は今、犬神家の最初の関門を突破した」




