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第5章:カリキュラム外の実習

#犬神家 #腐った愛の解剖学 #サイコスリラー #医学サスペンス #なろう小説 #創作

「異世界小説の主人公たちは、迷宮を攻略するために仲間を集めるのが常だ。だが犬神家において、僕が海斗を招待したのはもっと機能的な理由からだ。東大の医学生なら誰もが知っている通り、解剖学の学習は、学習机の上に『生きた標本』があるときが最も効率的なのだから」


僕は、自宅の個人図書室の書棚に感嘆している海斗を観察していた。彼は自分の知性が決して破られない盾であるかのように、自信に満ち溢れている。僕からの「脳神経外科の期末試験に向けた合同勉強会」の誘いを、僕が降参し、彼を対等な存在だと認めた合図だと勘違いしているのだ。


海斗は知らない。犬神家において「対等」などという概念は存在しないことを。あるのは、被験体と観測者だけだ。


「素晴らしい屋敷だな、江戸。犬神家がこれほどまでの本物の脳標本をコレクションしているとは思わなかったよ」海斗は不躾な指先で、棚にあるホルマリン漬けの瓶の一つに触れた。


「父が医学の歴史を重んじているからね」僕は答えながら、ミダゾラム――強力な前向性健忘を引き起こすベンゾジアゼピン系鎮静剤――を混入させた紅茶を注いだ。「さあ、飲んでくれ、海斗。脳室系について語り合う長い夜が始まるんだ」


海斗は疑いもせずそれを飲み干した。数分もしないうちに、眼瞼下垂がんけんかすい――まぶたが落ちてくるのが見えた。ペンを握ろうとする彼の手から、運動協調性が失われていく。


「江戸……なんだか……眩暈めまいが……」彼はそう囁くと、チーク材の机に頭を打ちつけた。


僕は笑わなかった。ただ、彼の橈骨とうこつ動脈の脈拍を確認した。安定している。初期段階の手順には十分だ。


僕は彼の体を個人用エレベーターへと引きずっていった。地下室の扉が開くと、そこには古い血痕の飛び散った透明なプラスチックエプロンを身に纏った朱里が立っていた。彼女の手には、頭蓋骨を開く際によく使われるジリ鋸(線状鋸)が握られている。


「江戸くん、今日は随分とうるさいプレゼントを持ってきたのね」朱里は近づき、意識のない海斗の頬をメスの先端で撫でた。「私も、その『解剖』を手伝ってもいいかしら?」


「助手としてだけだ、朱里。吸引サクションが適切に機能しているか確認してくれ。頭皮の筋膜ファシアを切開する際、血で視界が遮られるのは困るからね」僕は臨床的な冷たい口調で指示を出した。


海斗をステンレス製の手術台に横たえる。医療用バリカンで、彼の後頭部オキシピタルの髪を剃り始めた。バリカンの唸るような音は、僕の耳には心地よいBGMのように響いた。


ポビドンヨードのボトルを手に取り、術野の消毒を始める。「知っているかい、海斗」僕は聞こえていない彼の耳元で囁いた。「図書館での君の指摘は一つだけ正しかった。僕は確かに東大のラボから標本を盗んだよ。でも今日は、もっと新鮮な僕だけの標本を作るんだ」


20番のメスを手に取る。淀みのない一動作で、彼の頭皮に湾曲した切開インシジョンを加えた。鮮やかな赤い血が噴き出す――健康な収縮期血圧のリアルな可視化だ。


「見てごらん、朱里」僕は海斗の頭皮を剥がし、その下にある頭蓋骨クラニウムを露出させながら言った。「これこそが真実の解剖学だ。魔法も、転生もない。ただの肉と骨、そして、これから僕がその脳から引きずり出す秘密があるだけだ」


朱里はクスクスと笑った。その笑い声は防音仕様の地下室に反響した。「江戸くん……人を切り刻んでいるときのあなた、本当に素敵よ」


その夜、文京区の地下で、僕は試験のための勉強をしていたのではない。僕は真実の試験を執り行っていたのだ。そして海斗? 彼は、僕が完膚なきまでに解剖し尽くすべき解答用紙だった。


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