プロローグ:2025年の赤い循環
【閲覧注意】
本作には以下の表現が含まれます:
・心理的スリラーおよび緊迫した描写
・複雑な人間関係と執着心
・一部、医療現場を背景とした過激な表現
本作はフィクションであり、実在の人物、団体、事件、および学術的理論とは一切関係ありません。
物語の演出上、道徳的に不適切な行動が描写される場合がありますが、これらを肯定または推奨する意図はございません。
読者の皆様のご判断のもと、読み進めていただくようお願い申し上げます。
#犬神家 #腐った愛の解剖学 #サイコスリラー #医学サスペンス #なろう小説 #創作
文京区、犬神家の屋敷。その地下室の暗闇を、改造された血液透析ユニットのインジケーターが静かな青い光で照らしている。ステンレス製の手術台の上では、僕のスマートフォンが安定した心拍グラフを表示していた。暗号化されたBluetooth接続を介した、僕と彼女の脈動の同期。
2025年。外の世界は人工知能や不老長寿に執着しているが、僕にとって、最も純粋な奇跡とは血に濡れた人間の心臓弁のメカニズムに他ならない。
「江戸くん……私を見て」犬神朱里が囁く。
医療用ポンプの微かな駆動音に混じり、彼女の声が漏れる。朱里は左腕を伸ばして横たわっていた。陶磁器のような白い肌に、胸に貼り付けられた医療センサーのケーブルが鮮やかなコントラストを描いている。彼女に全身麻酔は必要ない。痛みそのものを崇拝するヤンデレである彼女は、僕たち二人の「結合」を毎秒噛み締めるために、覚醒を維持できる程度の微量のフェンタニルしか望まなかった。
僕は11番のメス(スカルペル)を握る。この鋼の刃こそが、世界の嘘を切り裂くための最も正直な道具だ。
「手が冷たいわね、江戸くん」朱里は意味深に微笑んだ。散瞳によって大きく開いた彼女の暗い瞳が、執着に満ちた視線で僕を射抜く。「緊張しているの? ようやく私たちが同じ血を分かち合えるから」
「カテーテルチューブの流量が破綻しないか確認しているだけだよ、朱里」僕は淡々と答えた。その声は、東大の解剖室のように冷え切っている。「圧力が不安定になれば、君は塞栓症を起こす。まだ死なせるわけにはいかない」
僕は自分自身の貴出手皮静脈(バジリカ静脈)に切開を加え、次いで彼女の腕にも刃を立てた。透明なポリマーチューブの中を、濃赤色の血液が流れ始める。僕たちの体の間に作られた閉鎖回路。タブレットのモニター画面上で、二つの心拍グラフが重なり合っていく。
一つの鼓動。一つの流れ。一つの罪。
「さあ」僕は彼女の耳元に顔を寄せた。消毒液の香りと鉄錆のような血の匂いが、僕たちの感覚を鋭く突き刺す。「君の脳を流れる血液の1ミリリットルに至るまで、すべてはかつて僕の心臓にあったものだ。君はもう、他の男のことなど考えられない。僕の血が、君を生かしているのだから」
朱里は激しく震えた。その小さな手が、僕の白衣の裾をくしゃくしゃに握りしめる。「ええ……もっと私をあなたで毒して、江戸くん。あなたの助けなしでは息もできないくらいに」
階上で、屋敷の個人用エレベーターが鳴る音が聞こえた。父、犬神貞人が12時間に及ぶ神経外科手術を終えて東大病院から帰宅したのだろう。彼はここには降りてこない。すべてを分かっているからだ。犬神家において、僕たちが継承するのは資産ではない。医学的な称号という名の装飾を施された狂気だ。
僕はもう一度スマートフォンの画面を見る。深夜2時。
2025年へようこそ。ここでは愛はもはや手紙の形をしていない。それは死に至るほど濃密な、生物学的データの転送だ。
最後までお読みいただき、ありがとうございます。
【犬神家:腐った愛の解剖学】、いよいよ開幕いたしました。
本作は、医学という「生」を扱う学問の裏側に潜む、狂気と愛憎を描いた物語です。江戸と朱里、この歪な二人がどこへ向かうのか。救いなど微塵もない道を、どうぞ最後まで見守っていただければ幸いです。
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次話から、東大の模範生としての江戸の仮面が少しずつ剥がれていきます。
第1話「東大の模範生」でお会いしましょう。
#犬神家 #腐った愛の解剖学 #サイコスリラー #なろう小説




