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場面19 相互検証

予想より早く仕事が落ち着き、続きも無事に書けたので、投稿を再開します。

ただ、投稿間隔はこれまで『2日に1度』でしたが、とりあえず6月中は『3日に1度』にしたいと思います。

ごめんなさい。

「もしもーし?コンテナの中はどうなってたのー。」


 芽衣子が新之助の持つスマホを見ても、地面が映るだけで何も動きはなく、返事も無かった。



「すまんすまん。コンテナの中だけどな。何かの服っぽいのが入っているな。」


 博史がそう言うと、父のスマホにはコンテナの中に有るピンク色の布っぽい物体が遠巻きに映っていた。


「やっぱり!あたしのジャージ!!」


「これ芽衣子のジャージなのか?――って、なんだこれ?中に下着とかも入ってるぞ?あとスマホだな。」


 博史がスマホを片手にコンテナの中に入ったのだろう。新之助のスマホ画面にはジャージとブラがアップで映されていた。

 それを見た誠司はずっと姉のスマホに続けていたコールを終わらせて博史に提案した。


「ヒロ兄。そのメイ姉のジャージとスマホ。そのままそこに置いて、一度コンテナの扉を閉めてくれないか?」


「いいけど、何故だ?」


「ちょっと実験がしたいんだ。」


「よく分からんが分かった。」


 閉めるだけなら片手でも出来ると思い、今度は博史が扉を閉めた。


「閉めたぞ。」


 そう言いながらコンテナの扉をスマホに撮る博史だったが、キャーという芽衣子の絶叫が聞こえた。

 一瞬焦った博史と次朗だったが、芽衣子の絶叫に続いて「あたしのスマホちゃん!」という声が聞こえたので脱力した二人。


 気になった次朗が再度コンテナを開けるが、中にあったジャージとスマホが跡形もなく消えていた。


「博史兄さん。これって一体…。」


 扉を閉めたのは自分ではないが、しかし博史が閉めるのを見ていた次朗は混乱した。特に何か変な動作をしていた訳ではない。しかしコンテナの中身はまるで手品のように消えていた。


 次朗はコンテナを回り込んで反対側を確認するも、特に変わった様子もなかった。他に考えられるとしたらコンテナの下、つまり地中かと考えた所で次朗のスマホが鳴った。


 着信画面には誠司の名前が表示されていたので、次郎は通話ボタンを押した。


「おっすジロー。誠司だけど。」


 言い表せない不安感に包まれつつあった次朗だが、幼馴染の声を聴いて一気に安心した。


「おっす。なんだよセージ。異世界って意味わかんないぞ。」


「俺だって意味わかんないさ。朝起きたら家ごと訳のわからない世界に居たんだ。」


「なんだそりゃ?じゃあなんで普通にスマホで会話出来るんだよ。」


「ああ、それはリングが――ちょっと待っててくれな。親父。ちょっとリングを貸してくれ。いや、どこにも行かないから。」


 当然の疑問を投げる次朗だったが、誠司は会話を中断し、新之助に何かを頼んでいるようだったので待った。その間にコンテナの方を見ると、博史がスマホを肩で耳に固定し、扉の開閉を行っていた。


 コンテナの中では信楽焼のタヌキ像が現れたり消えたりしていた。不思議に思った次朗は博史に話しかけようとしたが、スマホから聞こえる誠司の声に止められた。


「おーい、ジロー。そっちで何か聞こえないか?」


「うん、セージの声は聞こえるぞ?」


「いや、スマホじゃなく。うちの敷地から何か聞こえないか?」


 言われて耳を澄ませる次朗だったが、聞こえるのは季節外れの鈴虫の鳴き声くらいだった。


「鈴虫くらいしか…いや、待てよ?いくらなんでも時期外れ過ぎやしないか?」


「それって鈴虫じゃなくて、鈴の音じゃないか?」


 誠司の言葉を聞いて、再度耳を澄ませた次朗は次朗は長方形状に窪んだ場所――家が建っていた所――の方から音がすると分かった。


 藤田家の跡地に移動して再度耳を澄まそうとする次朗だったが、博史が居なくなっている事に気付いた。


 辺りを見渡すと藤田家の敷地を囲うブロック塀の出入り口から入ってくる博史が見えた。しかも掌を合わせて拝むような格好になっている。



 何をしているのか気になった次朗だったが、再び鈴の音が聞こえた。足元を見ると、小豆サイズの鈴が有った。それはストラップに使われるような細い紐に繋がっていた。


 鈴は地面から生えるように伸びて、小刻みに動いて音を鳴らしていた。


「なんだこれ?鈴が鳴ってる…生ってる?いや、地面から生えてるのとは違う――のか?」


 鈴は地面からではなく、何かのリングから生えていた。


 次朗もスマホを肩で耳に固定すると、リングを手に取った。

 鈴が生えている根本を見たが、黒い膜のようなものが張られているだけだった。


 今度は逆側を確認するが、同じように黒い膜が有るのみだったので、鈴を掴んで引っ張ると、細い紐の終わりが見えた。


「おい!取るなよ!戻せ戻せ!」


 慌てた誠司の声が聞こえた。


「戻す?戻すって…何をどうしたらいいんだ?」


「あー。そうだな、今度はジローの方から鈴をリングに突っ込んでみてくれ。」


 とりあえず次朗は言われた通りにするが、鈴は手品のようにリングを境に消えたので、抜き差しを繰り返した。


「なんだこれ?どこに繋がってるんだ?」


「もしかしてと思ったけど、やっぱりコッチとソッチで繋がってるみたいだな。どうもコイツのおかげで通話も出来るらしい。」


「繋がってる?…あ!なぁ!もしかしてあのコンテナだったら人を消すのも可能じゃないか?!」


 興奮する次朗だったが、誠司は申し訳なさそうに否定した。


「いや、人間はダメらしい。メイ姉が入ったら服だけがそっちに転送された。さっきコンテナにジャージが入ってたろ?」


「ああ、あれってそういう…じゃあ博史兄さんは今何を?」


 先程からコンテナの扉を開閉して、ああでもない、こうでもないとスマホを片手に忙しくしてる博史を見ながら次朗は聞いた。


「あっちもよく分からないから親父とヒロ兄で…まぁ検証作業って所かな。あ、でも終わったみたいだぞ。」


 次朗が博史の方を見ると、手招きしていた。


「じゃあ一旦切るから次朗もヒロ兄の所に行ってくれ。」


 通話が切れたので、次朗はコンテナを使ったマジックショーを行う手品師状態になっている博史の所に移動した。

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