第65話
2人でスープを食べ、軽く食休みをした後、ギルドへと報告をするために少しだけ急ぎ足でクラムへと戻る。
「ローレン、アレは何だったの?」
セシリアの言葉に思い当たることがあったローレンはどう話せばいいかを考える。
「以前、クラムがモンスターの襲撃にあったって話をしたよね?」
「えぇ」
「それを率いていた、もしくは扇動していたモンスターを俺が逃したんだ」
「...」
「頭部を吹き飛ばしていたんだが、それでも身体は動いたらしく、目を離した隙に消えちまってた。たぶん、その生き残りの慣れの果てだったんだと思う。確信はないけど」
「...そう」
以後2人は会話することもなく、ギルドへと向かった。
ローレンはギルドの中に入り、受付嬢のジーンのところへと向かう。
「あ、ローレンさん、こんにちは。どうしました?」
「至急、リカルドさんを呼んで欲しい」
「は、はい」
ローレンの真剣な表情を見て、ジーンは何かを察したのか、すぐにカウンター裏へと入りリカルドを呼びに行った。2分程でリカルドとジーンが奥から出てくる。少し寝ぼけた顔をしているリカルドに申し訳なく思うも、ローレンは本題を切り出す。
「リカルドさん、悪いけど奥空いてる?」
「ん?あぁ、まあいいけど。なんかあったのか?」
「とりあえず、奥で話すから」
ローレンはやや強引に、リカルドを説得して奥へと入っていく。セシリアもそれに続く。
3人は部屋に入り、ソファーに腰掛ける。ローレンはすぐに本題を切り出す。
「冒険者の遺体を発見した。詳細な数は不明だが、複数だ」
「っ?!...そうか...身元は分かりそうか?」
ローレンはゆっくりと、俯きながら首を横に振る。セシリアも思い出してしまったのか、口に手を当てて俯いている。
「詳しく話してくれ」
「洞窟内の調査の依頼だ。受けていた奴が未帰還だったんだって?」
「あぁ、それか。確かそこにいるセシリアと一緒にクラムに来た奴らだ」
「...」
セシリアはそれを聞いてさらに気分を悪くしたのか、顔色を悪くしている。
「そうだったのか。とにかく生存者は洞窟内にいなかった」
「そうか...何にやられたかわかるか?」
「...クラム襲撃事件で俺が逃がした奴を覚えてるか?」
「あぁ、変異種のゴブリンか、アンデット化してたみたいだが」
「それが生き残ってあの洞窟に潜んでたみたいだ。まぁ原型も何もないバケモノに成り変わっていたけどな」
「そうか......ローレン、お前が気にすることじゃない。冒険者になった以上は自己責任。お前が逃がしたモンスターがたまたま他の冒険者を殺しただけのことだ」
「...」
リカルドの言うことは正しいと言える。冒険者は文字通りに危険を冒す仕事、命の危険が常に隣り合わせ。
冒険者が逃がしたモンスターが人を襲おうとも、元々そこにいたモンスターが人を襲うのと何ら変わりない話である。もし意図的にモンスターを追い立てて村やら町に向かわせたとなれば話は別だが。
「とりあえず、依頼の方は達成ということにしておこう。洞窟内に他のモンスターはいたのか?」
「いなかったな。だけど、他のモンスターが住み着く可能性は大いにあると思う。ゴブリンやコボルトの住処としては最適な広さだしな」
「わかった。追加で洞窟を塞ぐ依頼を出しておく。今日は2人とも良くやってくれた、帰って休むと良い」
「「...」」
ローレンとセシリアは無言でうなずき、部屋を後にする。
ギルドカウンターでは、いつもと様子が違うローレンをジーンが心配そうに見ているが、それに気が付くといつもと変わらないように振舞う。
「ジーン、この依頼なんだけど、リカルドさんから達成って言われたから、頼む」
ジーンはその依頼書を受け取り内容を見ることで、いつもと様子の違うローレンとその近くで顔色を悪くしているセシリアがそうなっている訳を悟る。
「...はい。報酬はこちらです。ローレンさん、気を落とさないでください、冒険者になったからには命の保証はない、わかっていたはずですから」
「あぁ、けど今回は俺が逃がしたモンスターのせいで何人か死んだんだ。そう簡単には割り切れないっていうか...」
「そうだったんですか...それでもローレンさんが悪いとは私は思いませんよ?あの時ローレンさんが変異種の動きを察していなかったらクラムに侵入されて被害が拡大していた可能性だってあったんですから」
「ありがとう、ジーン。確かにそう思えば、ちょっとは心が軽くなったよ」
ローレンは報酬が入った小袋を受け取ると、セシリアに声を掛けてギルドを出て行った。
「報酬は5:5で」
「うん」
「大丈夫か?」
「大丈夫」
「じゃあ、俺は帰るから」
「うん」
ローレンとセシリアはギルドの前で報酬を分け合い、解散した。セシリアは元パーティーメンバーの無残な姿を見てしまったのだ、しばらくはそっとしておこう、そう思ったローレンは足早に家へと向かった。




