第103話
朝陽があがってくる頃。冒険者たちはそれぞれが上着に包まって寝ている。念のため、今まで寝ていたセシリアは自分から警戒を買って出た。
他の冒険者たちも熟睡はせず、浅い眠りで済ませている。長年冒険者をしているジャックやリンジーは30分に1度目を覚まし、周囲に目を光らせていた。
日が完全に昇ってくると、気温が上昇し、全員が起きる。
砦は今も鎮火しておらず、下火にはなっているものの、未だに煙は止まっていなかった。
「とりあえず、クイーンオークの討伐部位は確保してある。それ以外のオークもとりあえず確保してある。今回は協力して斃した奴らだから、報酬は山分けでいいか?」
リンジーの言葉に首を横に振る者はおらず、全員の顔を見て了承を得ると森の中へと入って行き、クラムへの帰路についた。
「...あっ!ジャックさん達、無事だったんですね!」
冒険者ギルドへと入って来た一行に、受付嬢のジーンが真っ先に反応する。
それを聞いた冒険者たち、職員たちも一斉に彼らに視線を向けた。
「戻ったか...なぁ、他の奴らは...」
カウンターの奥から出てきたリカルドはリンジーへと尋ねるが、返ってきたのは沈黙のみだった。
「...そうか。それより、詳しい話を聞かせてくれ。俺の部屋じゃ狭いし、バーの席を借りよう」
リカルドがバーのボックス席に座り、マスターへと軽く挨拶する。
マスターは酒を飲まないのに座るんじゃねーと言いたそうな顔をしたが、頷いて了承する。
「それで...まずは巣の規模を教えてくれ」
「巣、というよりも砦だった。オークの砦だ。数は30~40くらいいたようだが、詳しい数はわからない」
「オークの砦...となると上位種が?」
「あぁ、巣別れした直後のクイーンオークだったようだ」
「っ?!クイーンオーク?!...そうか、すまない、危険な依頼を受けさせてしまって...」
「それはギルドの仕事だろう?俺たち冒険者は危険を冒すんだ。それがたまたま強敵だっただけだ」
「クイーンオークの討伐部位は?」
「ここにある」
「クイーンオークってことは魔石は?」
「あぁ、あったぞ」
リンジーはリカルドの言葉に反応し、鞄の中から黄色い石をゴロっとテーブルに置く。
「魔石...初めて見た」
ローレンは初めて見る魔石をまじまじと見つめる。
半透明で黄色、弱くだが光を放っているように感じた。
「どうする?ギルドで売るならそれなりの価値を付けさせてもらうが?」
「そうだな...魔石は貴重な素材。いつまでも持っていると面倒に巻き込まれるか」
リンジーは全員に視線を向け、異論がないことを確認する。
「わかった。ギルドに売ろう。あと、オークの討伐部位も買い取ってくれ」
「もちろんだ。カウンターに持ってきてくれ。鑑定して値段を決めよう」
「あぁ、全員で山分けにするから分けてもらえると助かる」
「わかった」
そのあと、カウンターへと討伐部位と魔石を持っていき、鑑定が始まった。
「魔石の鑑定は少しかかる。その間に討伐部位の方を俺が見ておこう」
リカルドは1度カウンターの奥へと引っ込み、戻ってくると受付嬢がやっているような作業を始める。
「リカルドさん、私がやりましょうか?」
それを見ていたジーンがリカルドに提案するが、彼は首を振って査定を続けた。
「ご苦労だった。依頼は達成だ。ギルドへの大きな貢献として記録しておこう」
リカルドは全員に手渡しで金の入った小袋を手渡す。大きさと重さからして金貨が入っているようだ。
「では、今回の依頼はご苦労だった。みんなゆっくり休んでくれ」
リカルドは言い終えると、カウンターの奥へと消えていった。
「ふぅ、じゃあ今日は解散ね。宿でゆっくりするわー」
「セシリアは宿に泊ってるのか。これから冬になるけど、どうするんだ?」
「そうね...とりあえず、春までは。雪が解けてなくなるまでは居ようと思ってるわ」
「そうか。じゃあ、また依頼を一緒に受けることもあるかもな」
「えぇ」
「じゃ。俺も家に帰るよ」
セシリアとローレンはギルドの前で別れると、それぞれが帰路についた。
「ただいま」
「ローレン、朝帰りとはなかなかやるな」
「あぁ、ちょっと依頼が大変で...」
「オークの巣だろ?もう町では噂になってる。どうだったんだ?」
帰宅するや否や、兄であるレファンドに質問攻めにされるが、それをなんとか回避して自分の部屋に飛び込むと、ローレンはベットで泥のように眠った。
あれ
「お久しぶり」
あぁ、あんたか。今ものすごく眠いんだ。
「まぁ、そう言わずに。聞いているだけでいいですので」
わかった。
「では、この世界の成り立ちについて...」」
えーっと、待ってくれ。それはものすごく気になるんだが、眠くない時にまた来てくれないか?
「実は...あなたの精神に入り込むのが難しくなってましてね、深い眠りについているときくらいしか入り込めないのですよ」
もしくは瀕死の時か。
「ともかく、始めますよ...」
次回は閑話です。




