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第44話 ルイス王子の来訪

「あたしは、納得いかない! なんであたしじゃダメなのよ、シン。約束通り歌姫(ディーバ)になったわ。それもただの歌姫じゃない。三大歌姫にも選ばれたのよ。お金だって、これからいくらでも稼げる。シンはただあたしの側にいて、好きなことだけして暮らせるのよ」


 ローラは、昔からシンに好きだとアタックして、シンのために歌姫になったと言っても良い。

 元々、大商会の息子にして、領主家の長男であるシンではあるが、そのシンに働かなくてもいいから結婚して欲しいとまで言っていたのだ。

 それなのに、突然やって来た人間と付き合い始めたのだから納得がいくはずもない。


「ごめん、ローラ。でも、好きになっちまったのは仕方がないだろう。わかってくれ」


 それはシンなりにローラの気持ちに対しての返事だった。

 マリーは初めてローラと会った時から、シンに対する気持ちを聞かされていた。だからこそ、マリーもローラに対して、ちゃんと自分の気持ちを話さなければならない。

 そう考えたマリーが、きちんと自分の気持ちを口にしようとした瞬間だった。

 部屋のドアが勢いよく開いた。


「マリーは居るか!?」


 入ってきたのはカイエンだった。

 海神祭が終わった後、一度レトリー家にやって来たが、海神祭での出来事がまるで嘘のようにクロエから冷たい態度を取られて、意志消沈して帰っていた。

 そのリベンジに戻ってきたのかと思ったのだが、かなり真剣な顔でマリーを呼んだ。


「カイエン様、私はここに」

「よかった、いてくれたか。マリー、ルイスという男を知っているか?」


 カイエンの言葉にマリーは頭のリストを検索した。インデックスはこの街で出会ったみんな。

 そして、検索に引っかからなかった。


「すみません、カイエン様。その人はどんな人ですか?」

「マリーと同じ人間だ。今朝、船で港に現れたんだ。そして、マリー・アーネットという女性を出せと騒いでいるんだ」

「人間ですか? ルイス……あ、ルイス王子!!」


 人間の知り合いがこの街にいるはずがない。その頭から返事が遅くなったのか、それともルイス王子のことを思い出したくなかったためかはマリーにも分からなかった。

 しかし、マリーはルイス王子がこの地にやって来ていることを知ってしまった。


「知り合いだったのか。では、一緒に港に来てくれ」

「分かりました」


 ルイス王子は何のためにこの地に来たのか、マリーは知りたい。

 しかし、助けにくるのであればアーネット家の者であると思っていた。あの断罪事件を思い出すだけで、今でも気分が悪くなる。

 そんなマリーの様子に気が付いたシンは心配そうに声をかけた。


「大丈夫か? マリー、顔が真っ青だぞ」

「う、うん……」


 マリーはシンが自分の手を握ってくれていることに気が付いた。

 暖かい。

 シンの言葉も、手も、その心もマリーには暖かい。そしてその暖かさが、マリーの心に落ち着きを取り戻した。


「ありがとう、シン。もう大丈夫よ」

「いや、だめだ。マリー、部屋に戻って休むんだ」

「いいえ、ルイス王子は私が行かないと、何をするか分からないわ」


 マリーは自分に気合を入れる。ルイスがここに来た理由はわからない。それはマリーが行かないことには、はっきりしないだろう。

 行くしかない。

 たとえ、足がすくんだとしても。


「だったら、俺も一緒に行く」


 そう言って、シンは震えるマリーを優しく抱きしめた。包み込むように、力づけるように、守るように。


「ありがとう、シン」


~*~*~


 漁船や運搬船がメインの大きくはない港に不似合いな巨大な軍艦。

 それが三隻もいる。

 マリーを乗せてきた船は、ただの長距離輸送船であった。

 この船を見れば、乗ってきたのが本当にルイス王子だと確信する。

 軍艦を見て怯える港の住民をしり目に、マリーはカイエンに尋ねた。


「それで、ルイス王子はどちらに?」

「あの建物に案内している」


 カイエンに案内されたのは港で一番大きな建物である。それは、魚を水揚げして仕分けされる場所である。つまり、魚臭さが抜けず、常に床は水で濡れ、ただただ広いだけの場所である。

 王子であるルイスを待たせておくには不釣り合いな気がしたが、そこに案内されてマリーは納得した。

 十人以上の騎士を従えた王子がそこに居た。これだけの騎士がいたのでは普通の部屋には入らないだろう。

 見覚えのある金髪碧眼の王子は、長い船旅のせいか、すこしやつれて、不機嫌そうな顔をしていた。

 そんな王子の姿を確認したマリーは、人間式のスカートの端をつまみ、軽く膝を折って頭を下げる。


「お久しぶりです。ルイス王子」

「本当に生きていたのだな、マリー・アーネット。さっさと、帰るぞ。ここは魚と獣の臭いがきつくてかなわない」


 その顔同様、不機嫌な声をあげたルイスは立ち上がった。

 それが合図のように騎士たちが、マリーに近寄ろうとする。

 ルイスの説明では訳が分からないマリーは声を上げた。


「ちょっと待ってください。それは私の冤罪が晴れたということでしょうか? アーネット家の復興も……」

「冤罪とはなんだ? 貴様の罪はあの時言ったとおりだ。そこに疑問の余地はない」

「では、なぜ王子がここに? それに帰るということはどういうことですか?」


 マリーはルイスに説明を求めた。

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